【弁護士解説】NFT連載記事「弁護士がNFTを発行して分かったこと」 第4回 OpenSeaでのNFT販売と法律

執筆:弁護士 吉岡 拓磨Web3チーム

NFT連載記事「弁護士がNFTを発行して分かったこと」
第1回 NFTと法律』はこちらから
第2回 法律事務所が何をNFTにするかはこちらから
第3回 国内NFTプラットフォームにおける販売方法の検討はこちらから

1.OpenSea利用規約における購入条件

(1) NFTプラットフォームの購入条件を確認する必要性

 第3回記事でお伝えしたとおり、NFTを販売するということは、データが記録されたトークンを移転するという合意にすぎません。そのため、NFTの移転により、コンテンツの所有権や著作権等の権利が必ずしも移転するわけではありません。そのため、OpenSeaのようなプラットフォームを利用してNFTを販売する場合、当該プラットフォームの利用規約が所有権や知的財産権の取扱いについてどのような条件を設定しているか、当事者間で個別の合意を設定できるかという点を確認する必要があります。
 以下、法務記事NFTの販売に利用したOpenSeaの利用規約における購入条件に関する規定を解説していきます。

(2) OpenSea利用規約における購入条件

 OpenSea利用規約( https://opensea.io/tos )「5. Third-Party Content and Services」は、NFTの購入条件について、以下のとおり規定しています。

NFTs may be subject to terms directly between buyers and sellers with respect to the use of the NFT content and benefits associated with a given NFT (“Purchase Terms”).
(NFTは、NFTコンテンツの使用および所定のNFTに関連する特典に関して、販売者と購入者との間で直接締結される条件(以下「購入条件」といいます)に従うことがあります。)

For example, when you click to get more details about any of the NFTs visible on OpenSea, you may notice a third party link to the creator’s website.
Such website may include Purchase Terms governing the use of the NFT that you will be required to comply with.
(例えば、お客様がOpenSeaで取引がされるNFTの詳細を確認するためにクリックすると、作成者のウェブサイトへとつながる第三者によるリンクが表示される場合があります。このようなウェブサイトには、お客様が遵守する必要のある、NFTの使用を規定する購入条件が含まれている場合があります。)

OpenSea is not a party to any such Purchase Terms, which are solely between the buyer and the seller.
(OpenSeaは、かかる購入条件の当事者ではなく、購入者と販売者の間でのみ成立するものです。)

The buyer and seller are entirely responsible for communicating, promulgating, agreeing to, and enforcing Purchase Terms.
(購入条件の伝達、公布、同意、執行については、販売者と購入者が全責任を負います。)

You are solely responsible for reviewing such Purchase Terms.
(お客様は、かかる購入条件を確認する責任を負うものとします。)

 上記のOpenSea利用規約によりますと、NFTコンテンツの使用および所定のNFTに関連する特典に関する購入条件は、販売者と購入者との間で決定し、NFTの購入者は販売者の購入条件を確認する必要があります。NFTの販売契約及び購入条件について、OpenSeaはその当事者にはなりません。
 したがって、OpenSea上でNFTを発行する際には、販売者はNFTの権利内容や購入条件をあらかじめ定めておき、その購入条件にしたがって販売する必要があります。

2.OpenSeaでの購入条件の設定方法

 では、実際に販売者が購入条件を定めた場合、購入者が購入条件を確認できるようにするため、OpenSea上でどのようにして設定しておくべきなのでしょうか?
 OpenSea利用規約では、設定方法の一例として、OpenSea上のNFT概要欄に発行者(販売者)のウェブサイトのリンクを表示することが挙げられています。リンク先には、販売者が発行するNFTの権利内容や販売条件が定められており、その内容が販売者と購入者との間の購入条件となります。
 また、この他にも、OpenSea上では、NFT概要欄に購入条件を記載している例もあり、このような方法でも購入条件を設定することができます。
 法務記事NFTの場合、以下で解説する法務記事NFT利用規約を作成し、OpenSea上では、法務記事NFTサービスページのリンクを表示しています。法務記事NFTの購入者は、OpenSeaから法務記事NFTサービスページに表示されている法務記事NFT利用規約を確認し、当該利用規約が法務記事NFTの購入条件となります。

3.法務記事NFT利用規約の概説

(1) 法務記事NFTの権利内容(第5条第1項及び第3項)

 GVA法律事務所(以下「弊所」といいます。)は、法務記事NFTを保有する者に対して、弊所が執筆した法務記事「NFT(Non-Fungible Token)に関する法規制」(以下「本記事」といいます。)の複製(著作権法第21条)及び公衆送信(同法第23条)を許諾します。法務記事NFT保有者は、本記事を自らのHP等で公開することができます。
 本記事及び法務記事NFTの著作権は弊所に帰属しており、法務記事NFTを保有したとしても、本記事の著作権は移転しないよう設計しています。なお、弊所から法務記事NFTの保有者に対して行う本記事の利用許諾は、独占的なものとし、弊所は本記事を別途公開等はしないことで、法務記事NFTの保有価値を高めています。

(2) 二次流通の際の権利関係(第6条)

 保有者は第三者に対して、販売代金を任意に決定した上、法務記事NFTを譲渡することができます。この際、保有者は当該第三者に法務記事NFT利用規約を承諾させる必要があり、弊所にロイヤルティが分配されるよう設計しています。なお、独占的なライセンスという設計上、保有者の再許諾(サブライセンス)の権利は認めない形としています。

(3) 返品・交換等(第7条)
 NFTは不可逆性を有するブロックチェーンを使用したものなので、法務記事NFTの返品・交換等はできない旨を規定しています。

4.その他法務記事NFTの公開に必要だったこと

法務記事NFT利用規約の作成以外にも、OpenSeaを利用して法務記事NFTを発行する際に以下の準備が必要となりました。
(1) 暗号資産取引所でのアカウント作成
(2) 代用のイーサリアムを購入
(3) MetaMaskの作成
(4) 購入したイーサリアムをMetaMaskへ送金
(5) OpenSeaでのアカウント作成
 弁護士法人という特殊な法人形態での法人アカウント作成を受け付けてくれる暗号資産取引所があるのかは不安でしたが、最終的にCoincheckさんで開設をすることができました。

5.おわりに

 以上、4回の連載記事という形で法務記事NFT公開に至るまでの検討内容等を概説させていただきました。この連載記事がNFT販売を検討中のクリエイターや事業者の皆様にとって少しでもNFT販売の法律関係について考えていただくきっかけになれば幸いです。
 弊所Web3チームでは、NFTビジネスをはじめWeb3ビジネスにチャレンジする事業者の方を法務の面からサポートさせていただいております。OpenSeaやその他のプラットフォームでのNFT販売規約作成のご依頼、その他販売方法に関する法律問題についてのご相談は、弊所Web3チームまでお気軽にご連絡ください

NFT連載記事「弁護士がNFTを発行して分かったこと」
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監修
弁護士 熊谷 直弥
(2012年の弁護士登録以来、一貫して企業法務を扱う。中小企業から上場企業まで広く担当し、契約法務、人事労務、紛争、渉外法務、商標等で研鑽を積む。2019年GVA法律事務所入所後、スタートアップ企業の法務支援に注力し、IPOやその先の成長までの伴走を複数経験。顧問先スタートアップSaaS企業の監査役を務める。 所内のWEB3.0チームのリーダーとして、NFT関連ビジネスや暗号資産、STO、その他トークンビジネス等の研究及び実務を対応。NFT書籍の監修の他セミナー等でのNFTに関する情報発信も多数。)

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