【弁護士がわかりやすく解説】動画クリエイター・VTuber・インフルエンサー必見!業務委託契約の「競業避止義務」とは?

執筆:弁護士 林越 栄莉 メタバース / エンターテインメントチーム


近年、YouTubeやTikTok、InstagramなどのSNSプラットフォームで活躍する動画クリエイターやインフルエンサー、そしてVTuber等の方々が、企業からサービスや商品の広告や宣伝を業務委託されるケースが急増しています。

しかし、契約書を交わす際、内容を十分に理解しないまま署名・捺印してしまうと、後々、自らの「自由な活動」を大きく制限されるリスクが顕在化する可能性があります。


その代表例が「競業避止義務(きょうぎょうひしぎむ)」です。


本記事では、動画クリエイターやインフルエンサー、VTuberといったクリエイター活動を行う皆様が知っておくべき競業避止義務について、基本からトラブルを未然に防ぐための対応策まで、弁護士の視点でわかりやすく解説します。



1.業務委託契約書に含まれる「競業避止義務」規定とは?押さえておくべき3つのポイント

「競業避止義務」という言葉は、日常生活ではあまり聞き慣れないかもしれません。
競業避止義務とは、簡単に言うと、「契約相手とライバル関係になるような仕事を、一定期間禁止する」という契約書内での決まりです。


ポイント1業務委託契約書に競業避止義務規定が含まれていること


一般的に、競業避止義務は従業員が企業を退職する際の問題として語られることが多いですが、近年、クリエイターが当事者となる業務委託契約書にも、この規定を多く見かけるようになりました。


競業避止義務の規定とは、例えば、以下のような条文です。

「乙(受託者)は、本契約期間中および本契約終了後〇年間、甲(委託者)の事前の書面による承諾なく、甲の事業と競合する事業を営む第三者から、広告、宣伝、その他これらに類する業務の委託を受けてはならない。」


業務委託契約書にこのような規定(条文)がある場合、受託者であるクリエイターは、委託者である取引先企業と同種の事業を行う事業者等から広告宣伝等の業務委託を受けることを制限されることになります。


また、契約書によっては、クリエイターが競業避止義務に違反した場合には、クリエイター側に高額な違約金を支払うよう規定しているケースも散見されます。このように、競業避止義務規定は、クリエイターにとって自らの活動を大きく左右しうる規定といえます。



ポイント2:競業避止義務規定が含まれている理由


取引先企業(委託者)はなぜ、クリエイターに対してこのような厳しい競業避止義務を課そうとするのでしょうか。

クリエイターが自社商品の広告宣伝を発信した直後に、競合企業の類似商品の広告宣伝も行ってしまうと、消費者は広告に対してネガティブなイメージ(「本当に良いのはどちらかわからない」「商品が良かったからではなく、広告宣伝案件だから紹介したのかな」等)と感じてしまう場合があります。

これでは広告の説得力や信憑性が大きく落ち、企業のブランドイメージにも傷がつきかねないことから、「この期間、このジャンルのプロモーションは自社だけ」と限定することで、クリエイターの発信に強い説得力を持たせるねらいがあると考えられます。

このように、競業避止義務規定は、基本的には「委託者(企業側)」の利益を守るためのものとして設定されているため、現在の裁判実務においても、一定程度の競業避止義務は認められる傾向にあります。



ポイント3競業避止義務が規定されている場合に取り得る手段


上記のとおり、競業避止義務規定は委託者の利益を保護する働きがあることから、一定程度認められているのが実情です。

しかしながら、取引先企業との契約終了後もクリエイター活動が制限されると、クリエイターは受任できる案件数が減少する可能性があります。また、「どの範囲が競合か」がわからない等、契約書上の文言が広くあいまいな場合、クリエイターは、「いつ取引先企業から訴えられるかわからない」という紛争リスク、不安を常に抱えて活動することになりかねません。


以上を踏まえて、ここでは、取引先企業の契約書に競業避止義務が規定されている場合に取り得る手段について検討します。


①競業避止義務の「範囲」と「期間」を確認し、限定する交渉を行う

もっとも重要なことは、契約締結前の交渉です。

まずは、委託者に競業避止義務の範囲と期間を確認し、自分の活動が制限される範囲と期間をできるだけ正確に把握しましょう。
確認の結果、自分の活動が制限される範囲と期間がかなり広く、受け入れが難しい場合には、契約書の文言修正について依頼・交渉を行うことが考えられます。


文言の修正は、一般的には以下について行われることが多くなっています。

期間の短縮例えば「終了後2年間」を「半年間」や「1年間」にする。
対象業務の特定「一切の動画制作」ではなく、「〇〇(特定のジャンル)に関する動画制作」など、ピンポイントな業務に限定する。


②交渉に関する制限はない

リーガルチェックのご依頼の際、「委託者が契約書の内容について交渉はできないと言っている」とのご相談をお受けすることがありますが、法律上、このような交渉に関する制限はありません。

交渉が難しい場合は、弁護士へ依頼し、交渉をサポートしてもらうことも可能です。


弁護士に依頼した場合、

  • その規定が法的根拠を持って有効と言えるレベルなのか
  • 将来の活動において、どの程度のリスクがあるのか
  • 代わりにどのような修正案を提示すべきか

これらをプロの視点で判断しますので、自分一人で悩むよりも、有利な条件・内容で契約締結できるケースもあります。


③契約を終了する段階で、競業避止義務規定に気づいたとき

すでに契約書を締結してしまっている状況のため、競業避止義務規定が有効に課されている可能性が高いといえます。


もっとも、この段階においても、競業避止義務規定の緩和について委託者と交渉すること自体は可能です。

自分で交渉することももちろん可能ですが、今後の生活のためには競業を行わざるを得ない等の事情がある場合には、より確実な解決を目指し、弁護士を代理人として企業と交渉していくことも視野に入れましょう。



2.まとめ

動画クリエイター、インフルエンサー、VTuberなどの活動は、クリエイターの才能と努力の賜物です。その大切な実績が、一枚の契約書の、一つの条文によって制限されることも事実として生じています。

競業避止義務は、正しく設定されれば企業の利益を守る手段になりますが、過度に規制されればクリエイターの活動の幅を狭めることにもなり得ます。

契約書の中に「競業」や「禁止」といった文字を見つけたら、まずは立ち止まり、その内容を精査することが重要です。


もし、今手元にある契約書の内容に不安を感じているのであれば、法律の専門家である弁護士にぜひ相談してください。
あなたの自由な表現活動を守るために、適切なアドバイスとサポートをいたします。


GVA法律事務所のメタバース・エンターテインメントチームは、インフルエンサーや動画クリエイター、VTuber/Vライバーのトラブル解決実績を豊富に有する弁護士で構成されています(女性弁護士も在籍)。


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