〈2024年度最新〉景品表示法のルールと違反事例は?弁護士がわかりやすく解説

執筆:弁護士 早崎 智久メディカル・ビューティー・ヘルスケアチーム
(※2023年8月1日に公開。2023年10月17日、2024年3月7日、2024年5月31日に記事内容をアップデートいたしました。)

2023年8月1日 公開
2024年5月31日更新

景品表示法(景表法)は広告などのマーケティングに関わるすべての人が知っておかないといけない法律です。まず、景表法ルールの内容と、違反してしまうとどうなるのかを正しく理解しましょう。また、最近の違反事例は、監督官庁(消費者庁)が注視していることがわかるだけでなく、この記事を参考にすると、どこに落とし穴があったのか、どこに注意が必要なのかも理解頂けるでしょう。早速詳しく解説していきます。

1 景品表示法とは

⑴ 景品表示法とは

 景品表示法は、商品やサービスの広告(表示)と景品に関するルールを定めるものです。つまり、事業者のマーケティングやプロモーションを規制する法律です。

医薬品等の広告は薬機法、食品の広告は健康増進法など、特定の商品やサービスには特別なルールもありますが、景品表示法はありとあらゆる商品やサービスに適用される法律です。

この記事では、広告規制(表示規制)の違反事例を解説しますが、まず「不当表示規制」の概要を説明します。

⑵ 不当表示とは

 景品表示法は、「不当表示」として不当な広告を規制しています。そして、不当表示とされるのは以下の3つです。

1 優良誤認表示
2 有利誤認表示
3 その他の不当表示

 順番に見ていきましょう。

⑶ 優良誤認表示

 優良誤認表示とは、商品やサービスに関して、

① 実際のものよりも著しく優良であると示す表示
② 事実に相違して、当該事業者と同種か類似の商品・サービスを供給している他の事業者のものよりも著しく優良であると示す表示

の2つをいいます。

 分かりやすく言えば、①は実際の商品・サービスよりもはるかに良いものだと思わせる表示のこと、②は事実ではないのに、他の会社のものよりもはるかに良いものだと思わせる表示のことです。問題になることが最も多いケースです。

⑷ 有利誤認表示

 「有利誤認表示」とは、商品・サービスの価格その他の取引条件について、

① 実際のものよりも著しく優良であると示す表示
② 事実に相違して、当該事業者と同種か類似の商品・サービスを供給している他の事業者のものよりも、取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示

の2つをいいます。

 優良誤認表示との違いは、優良誤認表示が商品やサービスに関して良いものだと思わせることであるのに対し、有利誤認表示は、価格や取引に関する条件などに関して良いものと思わせることです。①が単体、②が他社のものと比較、という点は、どちらも同じです。

⑸ その他の不当表示

 その他の不当表示とは、

商品・サービスの取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあるとして、内閣総理大臣が指定するもの

があります。これは、告示で指定されたり、公正競争規約で定められます。最近公表されたステルスマーケティング規制は、この指定告示に当たります。

 以上が景品表示法が禁止している表示です。
 ルールはシンプルですが、「どんな場合に「優良誤認表示」になるのか?」、「どんな資料があれば、事実だと証明できるのか」などは、ガイドラインなどを参考にしながら、広告ごとに判断します。「この表現でいいのかわからない」「この資料で証明できるのかわからない」などのご相談は下記ボタンからお気軽にお問い合わせください。

2 表示規制を違反した場合の罰則は?

 景品表示法に違反すると、様々なペナルティが課せられます。
ペナルティを理解することで、万が一指摘を受けた場合でも、最適な対応をすることができます。

 また、ここでは、2023年の法改正の内容も含めて説明しますが、新しい制度である確約手続きを利用することで、ペナルティを回避しながら、再発防止体制を作ることができるようになります。

⑴ 消費者庁の調査の開始

 景品表示法を扱う消費者庁が、景品表示法に違反していると疑うきっかけの多くは、消費者やライバル業者の通報によると言われています。

広告は、たくさんの人に知ってもらおうとお金をかけて実施しますが、違反広告の場合は、同時に、違法なことをしていることを広めていることにもなります。広告のリスクはここにあります。

消費者庁の調査は、様々な方法で行われますが、具体的には、問題となった「表示」に関する商品の購買や、実地調査による客観的資料の収集、事業者に対する報告命令、提出命令、立入検査、質問調査などが行われることになります。

  そして、命令を受けた事業者が従わない場合や、調査を妨害した場合には、1年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられることになります。そのため、調査には、誠実に応じることが絶対に必要です。

⑵ 調査の結果を踏まえた行政の対応パターン

 調査の結果に応じて、消費者は以下のいずれかの対応を行います。

※2023年の法改正により、遅くとも再来年までに確約手続きができるようになります。また、従来は措置命令に従わない場合などに限られていた罰則が、違反行為自体に科せられるようになります。

 ① 違反行為はないが、違反のおそれがある場合
   事業者への行政指導

 ② 違反行為がある場合
   措置命令、課徴金納付命令、罰金、確約手続き

⑶ 行政指導

 行政指導は、違反の疑いはあるものの、違反行為がなかった場合に行われます。行政指導を受けた場合は、それに従って、違反行為をしないような体制を設けることが大切です。

⑷ 措置命令

 調査の結果、不当表示に該当する行為があった場合は、消費者庁は措置命令として、違反行為の差止め、その行為の再発防止のために必要な事項の実施、今後は違反行為をしないことを命じると共に、それらの実施に関連する事項が公表されます。

 この措置命令に従わない者には、2年以下の懲役または300万円以下の罰金が科され、情状により、懲役と罰金が併科される場合もあります。これに加え、事業者にも、3億円以下の罰金が科されます。併せて、措置命令違反の計画を知り、その防止に必要な措置を講ぜず、又はその違反行為を知り、その防止に必要な措置を講じなかった法人の代表者にも、300万円以下の罰金が科されます(景表法第39条)。

⑸ 課徴金納付命令

 優良誤認表示・有利誤認表示を行った場合、課徴金として、課徴金対象期間における売上額の3%を課徴金として納付するべき、課徴金納付命令が出される場合があります(景表法第8条)。

 課徴金対象期間は、原則として、課徴金対象となる不当表示を開始した日から、これをやめた日までですが、課徴金対象行為をやめた後に、当該行為に係る商品または役務の取引をした場合には、当該辞めた日から、一般消費者の誤認の恐れを解消するための措置を講じた日または表示行為終了日から6カ月経過日のいずれか早い日までも、課徴金対象期間に含まれることになります。

 さらに、2023年の法改正により、消費者庁は、事業者が売上額に関する報告をしないときは、売上額を推計できるようになります。つまり、消費者庁は、事業者が報告をしない場合でも課徴金納付命令が出させるようになるので、これまで以上に課徴金の納付命令が出されることが増えることになります。

 これに加え、10年以内に課徴金納付命令を受けたことのある事業者に対しては、課徴金額が1.5倍(つまり4.5%)になります。

 なお、あまり使われていない制度ですが、消費者に返金措置を行うことで課徴金額の減額が認められます。そして2023年の法改正により、電子マネー等による返金も認められることになります。今後は、上記の売上額の推計により課徴金納付命令が出されるケースが増えると思いますので、仮に違反行為をしてしまった場合は、返金措置を行うことで、消費者被害を軽減させつつ、課徴金額を減額するという方法が有効になると考えられます。

⑹ 罰金(直罰)

 これまでは、優良誤認表示や有利誤認表示は、たとえ故意で行った場合も、それ自体は刑事罰の対象ではありませんでした。しかし、2023年の法改正により、故意(表示と実際の内容が異なっていて、それによって消費者が誤認することを知っている場合))に優良誤認表示・有利誤認表示をした場合は、犯罪として、100万円以下の罰金が科せられることになります。

⑺ 確約手続き

 以上の⑸と⑹の法改正は、いずれも事業者にとっては規制が厳しくなるものですが、確約手続きは、事業者が自主的に是正計画を策定して内閣総理大臣の認定を受けることにより、措置命令や課徴金納付命令を回避できる制度です。

 違反行為をした場合は、従来は処分を受けることが前提であり、再発防止策も措置命令の中で命ぜられました。もっとも、これにより打撃を受ける事業者は、次の処分を避けるために改善に取り組むのが一般的でした。

 この新しい制度は、この改善に取り組むことの認定を受けることで、措置命令や課徴金納付命令を回避できる点で画期的な制度であり、今後は有効な活用が重要になります。

 ただ、指摘を受けないように、社内で広告ルールに対応できる体制を整えておくことがもっとも必要なことになります。

 広告については社内に確認する部署などを作り、公開する前にチェックして違法な広告にならないようにすることが重要ですし、広告を作成する前に社内の上長または担当部署宛に相談できるようにしておくことで、後から作り直す無駄な作業を減らすこともできます。

 しかし「社内に広告ルールに詳しい人がいない」のも多く、細かなルールを入れると、広告ルールは複雑ですし、新たなルールも生まれています。現在の社員や新入社員向けに社内セミナーを実施していくことも重要になります。

「改善に取り組むために何から着手すれば良いか分からない」「現状の表記をリーガルチェックしておきたい」「社員向けのセミナーを実施したい」などのご相談は、下記ボタンからお気軽に声掛け下さい。

3 景品表示法の違反事例

 ここからは、2023年度の違反事例を解説していきます。
 事例で問題となった表示やその原因などを理解することは、同様の違反を犯さないためにも重要です。

※定期的に事例を追加していきます。

⑴ 大幸薬品株式会社に対する課徴金納付命令事案

 ① 事案の概要

公表年月日

2023年4月11日

処分

課徴金納付命令
6億0744万円

事業者

製薬メーカー

商品/サービス

ウィルスの除菌製品(雑貨)

広告の種類

パッケージ、自社ウェブサイト、 テレビ広告、動画広告

広告の期間

2018年9月13日~2022年4月21日

違反行為

優良誤認表示

資料提出

あり→合理的根拠と認められず。

 ② 表示内容と適用法令

 2023年度の1号案件となったのは、従前から大きく話題になった案件で、既に別のタイプの製品では2022年度に措置命令が出ていました。事業者は、戦前に創業した歴史のある大企業で、これまで大きな不祥事を起こしたことのない企業です。

 問題となった表示は、本製品から発生する二酸化塩素の作用によって、室内空間に浮遊するウイルスや菌が除去/除菌される効果がある、とするもので、製品の性能に関する表示です。

 本製品は雑貨に分類されるので、問題になる法令は景品表示法の優良誤認表示であり、表示と実際の性能の間に「著しい」違いがあるかどうかが問題になります。

 結果、本製品に関する資料は、実験で用いた空間では効果があったものの、一般的な室内ではそのような効果が認められなかったものです。

 ③ コメント

 本件のポイントは、広告の内容を事実だと証明するのが難しい点です。

 本件のように、実験をした時の環境と、製品が実際に使われる環境の違いが問題になったケースは過去にもありますが、実験という特殊な環境での性能結果が、その製品が実際に使用される場面でも同じ性能になるのか、より慎重な検証が必要です。

 また、本件の製品は、販売期間が長く、たくさん売れた製品だっただけに、課徴金の額も大変高額になりました。本件は、株主代表訴訟が提起されるなど、事業者や役員にも大きな影響を与えています。

・製品の効果・性能を裏付ける資料(エビデンス)では、実験という特殊な環境での効果と、実際に製品が使用される場面での効果が同じであることの裏付けが重要
たくさん売れた製品のときは、課徴金額も高額になる

⑵ 株式会社ゼンワールドに対する措置命令事案

① 事案の概要

公表年月日

2023年4月27日

処分

措置命令

事業者

建材メーカー

商品/サービス

空気清浄剤(雑貨)/同製品の塗布

広告の種類

自社ウェブサイト、動画広告、プラットフォーム上の自社店舗サイト

広告の期間

2022年6月20日~

違反行為

優良誤認表示

資料提出

あり→合理的根拠と認められず。

 ② 表示内容と適用法令

 2023年度の2号案件は、1号案件と同様に、空気の清浄に関するもので、製品及びその塗布(サービス)が対象になりました。

 同社の製品は、光触媒を利用したもので、ホルムアルデヒドの低減に効果があるとされ、同製品を使用した居室については国土交通大臣の認定を受けているようです。

 問題となった表示は、ホルムアルデヒドに限らず、花粉、ダニの死骸や糞、PM2.5、ウイルス、一般皮膚炎及び喘息の原因物質などの様々な空気中の物質を分解除去し、室内の空気を浄化する効果」とするもので、製品の性能に関する表示です。

 本製品は雑貨に分類されるので、問題になる法令は景品表示法の優良誤認表示であり、表示と実際の性能の間に「著しい」違いがあるかどうかが問題になります。
 結果、本製品に関する資料では、そのような効果が認められなかったものです。

 ③ コメント

 この製品は、おそらく、ホルムアルデヒドに関しては効果が認められているように思います。

 しかし、十分な検証もなく、ホルムアルデヒド以外の他の物質にまで、同じような効果があると広告した点は問題です。コロナ禍のなかで、ウイルスや除菌への社会の関心が高まっていた中で行われた点も影響しています。

 また、処分の直前のタイミングで表示されたものが含まれており、指摘を受けているにもかかわらず、新たに同様の表示をしてしまったことも問題です。

 課徴金納付命令は出ていませんが、課徴金は表示期間の長さで金額が増えるので、調査を受けた時点で、すぐに表示を取りやめましょう。

 また、本件では、この事業者が出店していた大手プラットフォームにも今後の防止への協力が求められています。Webマーケティングではプラットフォームを利用しているケースが多く、広告を行った事業者だけでなく、プラットフォームの側でも、違反表示が無いように対策が求められることが増えると思われます。

 なお、執筆時点では、同社の製品を紹介する複数の他社サイトに同様の違法な記載が残っています。消費者庁は事業者だけに指摘しますので、他社サイトは対象外ですが、事業者の取引先が引き続き違法な表示を継続すると、この取引先にもリスクになります。違反広告は、消費者だけでなく、広い範囲に影響します。

製品の効果の範囲を、他のものまで広げない
・広告を掲載するプラットフォームにも違反表示をさせない努力が求められる
・販売代理店がある場合は、代理店の表示も正しく修正する必要がある

⑶ 大木製薬株式会社に対する課徴金納付命令事案

① 事案の概要

公表年月日

2023年5月17日

処分

課徴金納付命令
4655万円

事業者

製薬メーカー

商品/サービス

除菌製品(雑貨)

広告の種類

パッケージ、自社ウェブサイト、動画広告、プラットフォーム上の自社店舗サイト

広告の期間

2020年9月1日~2021年10月31日

違反行為

優良誤認表示

資料提出

あり→合理的根拠と認められず。

 ② 表示内容と適用法令

 2023年度の3号案件も、1号案件、2号案件と同様に、空気の清浄に関するもので、社会の関心の高い製品に対して消費者庁が行った処分です。

 二酸化塩素の作用で身の回りの空間のウイルスや菌の除去の効果があるとする表示が問題になったもので、1号案件と共通するところが多い案件です。

 本製品も雑貨に分類されるので、問題になる法令は景品表示法の優良誤認表示であり、表示と実際の性能の間に「著しい」違いがあるかどうかが問題になります。

 結果、本製品に関する資料では、そのような効果が認められなかったものです。

 ③ コメント

 ⑴の案件は大きな話題になりましたが、この製品は、⑴と表示された内容が共通しているので、類似製品として調査対象になったように思われます。よく話題になっている他社製品と類似の製品が別の会社から販売されますが、先行製品の表示に問題があると、類似製品もその機会に監視対象になります。

 そして、消費者庁が、そのタイミングで類似製品に対しても相次いで処分を行うことはこれまでにも見られます。公平な対応ですが、事業者は、他社製品と同じような広告を安易にせずに、自社製品の効果にエビデンスがあるのかどうかを冷静に判断しましょう。

類似製品を販売する場合は、自社製品のエビデンスもしっかりと確認する

⑷ 株式会社W-ENDLESSに対する課徴金納付命令事案

① 事案の概要

公表年月日

2023年5月19日

処分

課徴金納付命令
530万円

事業者

インターネット広告業者

商品/サービス

執筆者

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