
1 はじめに
GVA法律事務所では、メディカル、美容、ヘルスケア領域に関して専門チームを設け、各分野について多様なサポートをさせていただいております。
本稿では、ペット関連商品と薬機法の関係性についてご紹介いたします。
2 薬機法上の規制について
薬機法は、「医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保険衛生上の危害の発生及び拡大の防止のために必要な規制を行う」ことを主な目的としております。
そして、これらは人間のみを対象にした法律ではなく、以下のとおり獣医師や動物を対象とした規定もあります。
(医薬品等関連事業者等の責務)
第一条の四
医薬品等の製造販売、製造、販売、貸与若しくは修理を業として行う者、第四条第一項の許可を受けた者又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設(獣医法第二条第二項に規定する診療施設をいい、往診のみによって獣医師に飼育動物の診療業務を行わせる者の住所を含む。)の開設者は、その相互間の情報交換を行うことその他の必要な措置を講ずることにより、医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保並びにこれらの使用による保健衛生上の危害の発生及び拡大の防止に努めなければならない。
(医薬関係者の責務)
第一条の五
1 医師、歯科医師、薬剤師、獣医師その他の医薬関係者は、医薬品等の有効性及び安全性その他これらの適正な使用に関する知識と理解を深めるとともに、これらの使用の対象者(動物への使用にあっては、その所有者又は管理者。)及びこれらを購入し、又は譲り受けようとする者に対し、これらの適正な使用に関する事項に関する正確かつ適切な情報の提供に努めなければならない。
(定義)
第二条
1 この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。
二 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であって、機械器具等(機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプログラム及びこれを記録した記録媒体をいう。)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)
三 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)
2 この法律で「医薬部外品」とは、次に掲げる物であって人体に対する作用が緩和なものをいう。
一 次のイからハまでに掲げる目的のために使用される物(これらの使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であって機械器具等でないもの
イ 吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止
ロ あせも、ただれ等の防止
ハ 脱毛の防止、育毛又は除毛
二 人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物(この使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であって機械器具等でないもの
三 前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物(前二号に掲げる物を除く。)のうち、厚生労働大臣が指定するもの
4 この法律で「医療機器」とは、人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であって、政令で定めるものをいう。
9 この法律で「再生医療等製品」とは、次に掲げる物(医薬部外品及び化粧品を除く。)であって、政令で定めるものをいう。
一 次に掲げる医療又は獣医療に使用されることが目的とされている物のうち、人又は動物の細胞に培養その他の加工を施したもの
イ 人又は動物の身体の構造又は機能の再建、修復又は形成
ロ 人又は動物の疾病の治療又は予防
二 人又は動物の疾病の治療に使用されることが目的とされている物のうち、人又は動物の細胞に導入され、これらの体内で発言する遺伝子を含有させたもの
それでは、どのようなペット関連商品が薬機法の規制を受けるのでしょうか?
3 動物用医薬品、動物用医薬部外品及び動物用医療機器(以下「動物用医薬品等」といいます。)の該当性
(1) 専ら動物に経口的に給与する物及び専ら動物の被毛、皮膚、爪、口腔等に外用的に使用する物(いずれも、機械器具、歯科材料、医療用品及び衛星用品を除く。)が、「医薬品」(薬機法第2条第1項第2号、第3号)又は「医薬部外品」(同条第2項)であって専ら動物のために使用されることが目的とされるもの(以下「動物用医薬品等」という。)に該当するかどうかについては、その物の成分(原材料)、形状(剤型、容器、包装、意匠等)及びその物に表示された使用目的・効能効果・用法用量、販売方法、その際の演術・宣伝などを総合して、その物が通常人の理解において同条第1項第2号若しくは第3号又は第2項に掲げる目的を有していると認められる物かどうかによって判断すべきとされています。
(2) 具体的な判断基準について
① 物の成分が医薬品的成分に該当するかどうか
② 物の形状が医薬品的な形状に該当するかどうか
③ 物の表示が医薬品的な効能効果を標ぼうしているかどうか
④ 物の表示された用法用量が医薬品的な用法用量に該当するかどうか
上記①~④までのいずれかに該当する場合は、動物用医薬品等と判断され、薬機法の規制を受けることになります。
各判断基準の具体的な内容については、「動物用医薬品等の範囲に関する基準について」(平成26年11月25日付け26消安第4121号農林水産省消費・安全局長通知)をご覧ください。
(3) 動物用医薬品等に関する規制について
動物用医薬品等に該当した場合、動物用医薬品等の製造や製造販売をしようとする事業者は、製造や販売にあたって薬機法上の許可が必要になります(薬機法第12条、第13条、第23条の2、第23条の2の3)。
また、動物用医薬品等は、販売にあたって、容器等への記載事項(薬機法第50条、第59条、第63条)等が法定されており、このような規制も遵守する必要があります。
さらに、商品の広告をする際にも、薬機法の規制を受けることとなります(薬機法第66条、第68条)。特に広告規制については、商品の販売にあたり避けては通れないものである一方で、予定している表現が薬機法に違反しないものであるかどうかは、判断が難しいため、注意が必要です。
4 具体的なペット関連商品の注意点
次に、動物用医薬品等に該当しない一般的なペット関連商品の広告について、どのような点に注意する必要があるのかご説明いたします。
(1) ペットフード・ペット用サプリメント
ペットフードやペット用サプリメントに関する表示が、医薬品的な効能効果の表示であると判断されないようにするための主な留意点としては、以下の6つが挙げられます。
① 主に、動物の疾病の治療に使用されることが目的と判断される表示をしないこと
② 主に、動物の疾病の予防に使用されることが目的と判断される表示をしないこと
③ 主に、動物の身体の構造に影響を及ぼすことが目的と判断される表示をしないこと
④ 主に、動物の身体の機能に影響を及ぼすことが目的と判断される表示をしないこと
⑤ 医薬品であることを暗示させる表示をしないこと
⑥ 新聞、雑誌等の記事、獣医師、学者等の談話、学説、経験談等を引用又は掲載することにより医薬品であることを暗示させる表示をしないこと
具体的には、以下の8つの表現を使用する場合は、特に注意が必要となります。
① 「栄養補給」
② 「食事療法」に関する表現
③ 糞や尿の臭いに関する表現
④ 「免疫」等の表現
⑤ 「毛玉」に関する表現
⑥ 歯垢・歯石に関する表現
⑦ アレルギーに関する表現
⑧ 「サポート」という表現
なお、「健康な皮膚と輝く毛並みを約束します。」、「糸球体機能をサポートする〇〇を配合」、「バランスのとれた栄養で赤血球の生成をサポート」、「免疫力を高める。」、「歯周病予防のために独特な形状をしています。」、「肝機能をサポート」等の表現は、実際に医薬品的効能・効果を謳ったものとして禁止されている表現となります。
上記のほか、ペットフードやペット用サプリメント等に関する表示については、「ペットフード等における医薬品的な表示について」(平成25年9月11日付け25消安第2679号農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長通知)に詳細が記載されていますので、ご覧ください。
(2) ペット用シャンプー・ペット用雑貨
ペット用シャンプー・ペット用雑貨の場合、明確に注意が必要として具体例が挙げられている表現はありませんが、動物用医薬品等に該当するものであるという誤認を与えないよう、動物用医薬品等としての効能・効果を標ぼうすることのないように注意が必要です。具体的には、上記⑴に記載のペットフードやペット用サプリメントの内容と同様の観点で整理されるものと考えられます。
5 おわりに
主に人間に適用されることが多いと認識されている薬機法ですが、動物も対象となることについて、簡単にご説明させていただきました。
ペット関連商品を提供されている事業者のみなさまにおかれましては、薬機法の規制を確認することが重要となります。特に、商品の広告表現については、薬機法を遵守しているものなのかどうか判断が難しい場面もあるかと思いますので、注意が必要です。GVA法律事務所では、動物関連のご相談にも対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
監修
弁護士 早崎 智久
(スタートアップの創業時からIPO以降までの全般のサポート、大手企業の新規事業のアドバイスまでの幅広い分野で、これまでに多数の対応経験。 特に、GVA法律事務所において、医療・美容・ヘルスケアチームのリーダーとして、レギュレーションを踏まえた新規ビジネスのデザイン、景表法・薬機法・健康増進法などの各種広告規制への対応、医療情報に関する体制の整備などが専門。)