【人材採用と雇用契約締結の注意点】
求職者は基本的に複数の企業に応募しているので、選考プロセスが遅れると、よほど志望度が高くない限り良い人材は他社にとられてしまいます。求める人材を採用できない背景には、現地のHRが書類選考に時間をかけすぎることにあります。HR独自の基準で求職者を選別したり、同ポジションの求職者の中で比較するために3~4人の応募があるまで選考プロセスを進めない等が考えられます。選考プロセスに明確な締切日と判断基準を設け、進捗をモニタリングすることが重要です。
ここで、私が重要と判断する項目は以下です。
- 過去1社の勤務期間が2年以上を超えているか(日系企業の経験があるかも考慮)
- 大学等の学歴(大学ランキングなど参照)
- 長子かどうか(フィリピンでは末っ子は相当に甘やかされることが多い)
- ハーフの場合、教育環境や考え方が日本とフィリピンでどちらによっているか
上記の1,2に関してはHRも判断が可能ですのでスピード感をもって次の選考プロセスに進むとよいかと思います。また、求める人材層によって活用する求人媒体を使い分けると効果的です。
【各求人媒体(例)の特徴】
コスト | 人材層 | メリット・デメリット | |
人材紹介会社 | 高 | マネージャー層/専門職 | サポート充実/料金高 |
Job StreetやFaceBook等 | 低 | 一般職/新卒/専門職 | 応募多/選考工数多 |
リファラル | 無料 | どちらも | 信頼感/縁故注意 |
【採用時の注意点】
候補者が前職で問題を起こしたり、懲戒解雇となっていないかチェックすることを推奨します。例えば、経理ポジションで採用した人材が前職で会社で懲戒解雇となった事実を雇用直後に知って採用取り消しができるかという相談がありましたが、採用取り消しはできません。このような事態を避けるため、重要な項目となる事柄について、虚偽が発覚すれば解雇要因となる旨の誓約書に直前の企業から懲戒解雇されてないか等をチェック項目を設けるとよいでしょう。
【試用期間について】
最初に試用期間で雇う場合は、試用期間の期限(最大6か月)と正規雇用になるための基準を明示しなければなりません。これらの明示なくしては、その雇用は自動的に正規雇用とみなされ、基本的に能力不足を理由に雇用関係を解消することができません。単に試用期間の期限を定めるだけでは十分ではありません。正規雇用のための能力基準や達成目標を明示し、そのうえで月単位でアセスメントを行わなければなりません。 関連の判例(G.R No218282 Sep 9 ,2020)では、正規雇用の基準が曖昧だったために試用期間とはみなされず、正規雇用であるとみなされた事例があります。この事例では、解雇通知には、「会社の、彼のポジションに必要と設定した基準に満たなかったため彼に正社員の地位を付与することはできない。」とあったが、オファーレターには「〇〇従業員として、最高品質のサービスを提供し、常に会社の利益を追求することが求められる。」としかなかったために、そもそも試用期間雇用という雇用形態に疑義が生じてしまったのです。試用期間雇用をすぎると、能力不足のために解雇することが難しくなります。最初の雇用契約書では定量的な基準を明示し、定期的な評価を確実に行うことが重要です。