【弁護士解説】フィリピンにおける配置転換・出向・転籍に関する規制の概要

執筆:弁護士 金子 知史、弁護士 水谷 守国際チーム

(1) 異動・配置転換

 フィリピンにおいて、法的には、従業員の異動(Transfer)と配置転換(Reassignment)は同じものとして考えられています。そして、会社による、適法な異動及び配置転換の要件は以下のとおりです。

  • 勤務を中断することなく、階級や給与が同じ別の職位に移ること

  • 正当な事業目的のために行われること。異動が差別等に基づいている場合、または十分な理由なく降格等のために行われる場合は、違法となる

  • 異動が合理的で、従業員にとって不利益でないことを示すこと

(2) 出向

 出向とは、従業員が一時的に別の会社で働くことをいいます。フィリピンにおいては、出向元が出向社員の給与や出向に関連するその他の費用を負担することが一般的です。

 出向では、出向元との契約が継続しつつ、出向先で勤務することになるため、出向元との契約の継続性が問題になることがあります。判例(Intel Technology Philippines, Inc. v. NLRC G.R. No. 200575, 05 February2014.)は、この点について、「出向契約等における会社と従業員の関係の継続、または終了は、以下の基準によって判断」するとして、以下の4つの要素を挙げています。

  • 従業員の選任と採用に対する権限がどちらにあるか

  • 賃金の支払いをどちらが行うか

  • 解雇の権限がどちらにあるか

  • 従業員の行動を管理する会社の権限がどちらにあるか

(3) 人事異動が違法であると判断された場合

 配置転換などの人事異動に関して、裁判所は、その異動が合理的で、従業員にとって不利益ではないことを証明する責任が会社にあると判断しています。仮に会社がこの点を証明できなかった場合、その人事異動は退職強要(Constructive Dismissal)であると裁判所によって判断されます。退職強要(Constructive Dismissal)とは、会社が従業員の労働条件を不利なものなどにして、従業員が退職せざるを得ない状況を作り出すことを指します。

 会社の人事異動が退職強要に該当した場合、解雇された従業員を同等の職位に復職させるか、復職が不可能な場合は代わりに退職金を支払うことを命じられます。それだけではなく、会社は、違法な解雇に対する損害賠償や弁護士費用に対しても支払いを命じられる可能性があります。

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