
(1) フィリピンにおける懲戒処分の概要
フィリピンでは、日本と同様に従業員に対して懲戒処分を行うことができます。処分の内容は基本的に会社の裁量に任されており、訓告、減給、降格、解雇など日本と類似の処分を下すことができます。
会社は就業規則などで懲戒処分について定めることができますが、処分の内容は合理的である必要があります。不合理に重い罰則は無効とされる可能性があります。特に解雇に関しては、適用条件や手続が労働法によって規定されており、会社はこれらの規定を遵守する必要があります。
従業員が会社からの懲戒に対して納得ができない場合、労働関係委員会(National Labor Relations Commission)などに対して異議を申し立てることができます。
(2) 懲戒に関する判例
懲戒に関する判例を紹介します。最高裁で問題になるケースの多くは、不適切な行為を行った従業員に対する解雇に関するものです。
・Perez v. Philippine Telegraph and Telephone Company, G.R. No. 152048, April 7, 2009
フィリピン法上、従業員は解雇される際に聴聞と弁明の機会を与えられる必要があります。この点について、判例は、解雇手続において必ずしも正式な聴聞会を実施する必要はないことを判示しています。従業員に対して聴聞および弁明の機会を提供することが必要ですが、これには正式な聴聞会を通じて行う場合だけではなく、解雇に関する通知後に書面で説明を提出する方法も認められています。
他方で、判例は、例えば以下の場合において正式な聴聞会が例外的に必要とされる場合があることも認めています。
従業員が書面で要求した場合
根拠に関して争いがある場合
会社の規則や慣行で義務付けられている場合
その他の状況で正当化される場合
・Malcaba, et al, v. ProHealth Pharma Philippines, Inc., G.R. No. 209085, June 06, 2018
この判例は、解雇が最後の手段であるべきであることから、会社は解雇を行う際は状況を十分に把握して評価したうえで、解雇の理由が事実かつ重大なものであることを確認する必要があることを判示しています。