【弁護士解説】フィリピンのボーナスについて解説

執筆:弁護士 水谷 守国際チーム

第1 会社は原則としてボーナスを支給する義務を負わない

 フィリピンにおいて、ボーナスの支給に関するルールはありません。そのため、ボーナスを支給するかどうか、支給する条件、金額については会社が決定することができます。したがって、会社は原則としてボーナスを支給する義務を負いません。

第2 会社がボーナスを支払う必要がある場合

 上記の通り、会社は基本的にボーナスを支払う必要がありませんが、例外的に、たとえば判例は以下の場合にはボーナスを支払わなければならないと判示しています。

1. ボーナスが従業員の賃金の一部である場合

 ボーナスが従業員の賃金等の一部である場合には、会社はこれを支払う義務があります。そして、ボーナスが賃金等の一部であるかについて、判例は、その支払いの状況と条件によって異なると判示しています。

 さらに、判例は、ボーナスが賃金等の一部となる場合について、たとえば、会社が事業の成功や生産量の増加など条件を課すことなく支給することを認めた報酬である場合は、このような報酬は賃金等の一部であるとしています。他方で、これらの条件が達成された場合にのみ支払われる場合には、それは賃金等の一部とみなされない、つまりボーナスに該当するとしています。

2. ボーナスが会社と従業員を代表する労働組合との間の団体協約(Collective Bargaining Agreement)に組み込まれている場合。

 団体協約は会社と労働組合の間の契約上の取り決めです。ボーナスが団体協約に組み込まれている場合、これは会社が遵守しなければならない契約上の義務となります。

3. ボーナスが会社の慣行として定着したとき。

 会社の慣行として定着している場合、ボーナスは従業員への福利厚生となります。そして。そして、福利厚生を減らすには労働法の条件を遵守する必要があるため、ボーナスが福利厚生となった場合には労働法に従って支給する必要が生じます。

 そして、以下の場合においてボーナスは慣行であると認められます。

①長期間にわたって支給されていること。たとえば判例は2年間を「長期間」であると判断しています。

②会社によって継続的(consistently)かつ意図的(deliberately)に与えられていること。なお、ボーナスの提供がいかなる法律や規制によっても義務付けられていないことを会社が認識していることを示す必要があります。

執筆者

顧問契約やその他各種法律相談については、こちらからお気軽にお問合せください。

※営業を目的としたお問い合わせはご遠慮願います。

GVA法律事務所の最新情報をメールで受け取る(無料)