
Interview

フィンテック
スタートアップの実情を踏まえた丁寧な対応が日本初の貸金分野の金融サービス仲介業登録につながりました

住宅ローン診断カンパニー株式会社
代表
前田 一人 様
GVA法律事務所では、株式会社ONEフィナンシャルサービスの金融サービス仲介業の登録サポートを行い、2024年5月14日に登録が完了しました。同社の代表取締役の前田一人様に、これから展開するビジネスや、登録までを振り返っていただき、これまでの苦労について、インタビューさせていただきました。
「金融サービス仲介業」について
1つのライセンスで「銀行・証券・保険・貸金」すべての分野の金融サービスをワンストップで仲介可能とする新たな業種であり、金融サービス仲介業を創設することを目的に2020年6月に金融商品販売法が「金融サービスの提供に関する法律」(金融サービス提供法)に改正され、2021年11月に施行されました。
金融機関への所属制をとらないことにより、より利用者視点に立った金融サービス提供の可能性が広がり、金融サービス仲介業により、利用者・金融サービス仲介業者・金融機関での「三方良し」となるサービスの提供が期待されます。
(一般社団法人日本金融サービス仲介業協会より)

金融サービス仲介業を登録しようと思ったきっかけについて教えてください
金融サービス仲介業に関しては、国会審議が入る前から見ていて、法案が衆議院を通過したとなったら、間をあけずに相談したいと思い連絡させていただきました。
このスピード感には理由があります。私たち(※1)は、貸金業法に基づく住宅ローンの仲介をやっていますが、これだと住宅会社からしか手数料を受け取ることができず、金融機関から手数料を受け取ることができません。
金融サービス仲介業を登録した目的としては、私たちが借入希望者を集めるなか、それを金融機関に送客し、融資がつけば実行額の何パーセントかを当社がいただくという金融ビジネスを行うことにあります。このようなビジネスをやりたかったので、ずっと金融サービス仲介業を追いかけてきました。しかし、登録は大変だったので、途中で心が折れました。
諸外国の住宅ローンのスタートアップは、基本的には金融機関から手数料を取るので、そのようなやり方をしないとビジネスが大きくならないのはなんとなく理解していました。日本だけ、先進国の中で、こういった金融機関から手数料を受け取れる法律がなかったので、それが法律になるというのは自分としては相当なチャンスだと思いました。だからこそ、金融サービス仲介業を取りたいと思い前から注目していました。
貴社の金融サービス仲介業のビジネスについて、ご説明いただけますでしょうか
まず、私たちが住宅会社を経由して、住宅ローンを借りたい方をとらえます。次に、我々には、顧客がどの金融機関で借入ができるか診断する能力がありますので、提携した金融機関に送客します。そこで、審査の申込みしてもらい、審査を通り、融資の実行ができればそこで手数料の支払いを受けることができます。
金融機関から融資実行手数料をいただくモデルで数十億円の売上を確保できるとみていますので、そうすると胸を張ってIPOっていうことも仕掛けていけるだろうし、金融サービス仲介業で提携金融機関が数行できて、実際に手数料を収受できたらもう勝ちだと思います。金融サービス仲介業で金融機関をとらえられたら、もう私の仕事は半分くらい終わったかなって感じがしますね。
そのくらいインパクトのある形ではあると思います。どう実効性のあるものにしていくかっていうのは私たちの仕事になりますけれども。

今後のサービス展開をお聞かせください
私たちのサービスで住宅ローン1day診断というものがあります。住宅会社がAさんという見込客にローンをつけたい、ローンがつくかどうか調べてほしいという依頼を受けて診断をする借入診断サービスです。
これは、独自に調べてきた各金融機関の審査基準・個人信用情報とCIC(※2)上の情報を直接確認して、疑似的に銀行の審査をやっているものです。面倒な書面の収集と提出や来店の手続きもいらず、Webフォームに所定の項目を入力するだけで申し込みができます。
最短当日にどの金融機関でいくらのローンを組めるかが分かるサービスで、おかげさまで利用企業数は伸びています。が、人が診断しているため、即時性が低いところがあります。
利用企業数が伸びているため、借入相談の案件がおのずと増えています。結果的に、私たちが金融サービス提供法に基づくローン仲介を多く取り扱えるようになります。最終的には、金融機関側から提携してほしいと言われるっていう世界観をつくりたいと考えています。
業登録を行う中で苦労したことは何ですか?
社内規程等の作成等にあたり、金融庁の求めているものを理解し適切に回答するのが難しかった点です。監督省庁としてもあまり経験がない登録申請だったということでやり取りは多くなってしまいましたが、監督省庁の皆さんとも協力しながらつくることができたと思っています。
次に、システム面です。オペレーションをまわすためのシステム要件を整えることについて、非常に苦労が伴いました。セキュリティレベルは高いものが求められており、オペレーションもかなり細部にわたって定義しなければならなかったため、まだ金融サービス仲介業をやっていないなかで、想定で定めていくという作業には苦労しました。
弊所にご依頼いただいた理由は何ですか?
日頃から長年お世話になっていて、非常にいい印象を持っていました。今後もお付き合いしていきたいという想定があったので、そこだけ切り出して別の事務所に依頼するのではなく、相談をした結果、受けられますという回答をいただいたので、依頼しました。
また、原田先生も資金決済法をはじめとしたフィンテックの知見があり、他の金融ライセンスの登録サポートもしているとのことでしたので、できたばかりの金融サービス仲介業は初めてかもしれないけど、やっていただけるんじゃないかと思いました。
そして、スタートアップを専門にしていることも依頼した理由の一つです。スタートアップ独特のテンポ感、要求レベルやクライアント等についての理解度が高く、大手事務所にはないスタートアップに対しての肌の馴染み感があるので、依頼したいと思いました。
今回の業登録について弊所にご依頼していただいてよかったと思う点についてお聞かせください
金融庁からの指摘事項に丁寧に向き合ってくれましたし、私としては心地良いスケジュール感で進んでいたと思います。また、端的な文章で何が必要か不要かってことも明確にして連絡をしてくれたので、こちらも飲み込みやすかったです。
最後に一言お願いいたします
今回、すべてのお金を借りる方々がより最適な借り方をできる世界をつくりたいと思い、金融サービス提供法に則り金融サービス仲介業の預金等媒介業務、それと貸金業貸付媒介業務の第1号を登録しました。これを実行できるように、今後もGVAさんの協力を得て、私たちの事業ミッションである「すべての人に最適なお金の選択を」の実現をなしていきたいと思います。

※1
株式会社ONEフィナンシャルサービスは、住宅ローン診断カンパニー株式会社と株式会社AJテクノロジーズが出資した会社であり、いずれも住宅ローンサービスを提供している。
※2
割賦販売法および貸金業法の両業法に基づく指定信用情報機関。

住宅ローン診断カンパニー株式会社
住宅ローン診断カンパニーでは現在、全国の住宅会社様が抱える住宅ローン知識や提案に対する課題の解決をお手伝いしています。
住宅ローン提案には専門知識が求められます。そのため、住宅会社様では住宅ローン提案の体制が整っていないことが少なくありません。
私たちは住宅ローン提案を支援することで、住宅会社様の契約率を向上し、またお客様には適切な住宅ローンの選択肢を提供しております。
サービスを通じて、最適な住宅ローンの選択を広めることを目標に事業に取り組んでいます。
担当チーム:フィンテックチーム