【セミナーレポート】生成AIで法務はどう変わる?契約書レビュー・ドラフトの実践プロンプトと弁護士活用のコツ

執筆:弁護士 阿久津 透 ( AI・データ(個人情報等)チーム )





1.はじめに:法務担当者が抱える「生成AI、結局どこまで使える?」という疑問

 「ChatGPTをはじめとする生成AIを導入したものの、結局ちょっとした調べ物や文章の要約にしか使えていない」「法務というミスの許されない領域で、どこまでAIを信用していいかわからない」このような悩みを抱える法務・総務担当者の方は少なくありません。

 2026年1月29日と3月3日に開催された当事務所のセミナー「生成AIで法務はどこまでできるのかー実務担当者のためのプロンプト入門セミナー」では、この課題に焦点を当て解説を行いました。

 本記事では、ただの「壁打ち相手」から抜け出し、生成AIを法務実務の強力なアシスタントへと引き上げるための具体的なプロンプト(指示出し)のコツや、AIを活用した後の弁護士との効果的な連携方法について、セミナーのエッセンスを凝縮してお届けします



2.生成AIの「得意領域」と「人にしかできない領域」

 セミナーの冒頭では、まずAIの得意領域と不得意領域の整理を行いました。法務において生成AIを活用する大前提として、以下を切り分けて考える必要があります。


生成AIの「得意技」

  • 大量の条文や長文の読み込み、要約
  • 自社のひな型と、相手方から提示された契約書の「差分抽出」
  • 一般的なリスク条項の当たり付け(一次レビュー)


生成AIの「不得意技」(人にしかできない領域)

  • 自社の事業戦略や、取引先との交渉力学(パワーバランス)を踏まえた上での「最終的な法的判断」
  • 最新の非公開の実務慣行や、業界特有の暗黙の了解への対応


 AIは優秀なアシスタントですが、判断と責任を負うのはあくまで人間(法務担当者・弁護士)であるという原則を忘れないことが、AI活用の第一歩です


3.プロンプトは「文章」ではなく「設計図」!精度を上げる3つのポイント

 生成AIの出力精度は、入力する「プロンプト」の質に依存します。本セミナーで反響が大きかったのが、プロンプトを単なる文章ではなく、構造化された「設計図」として捉えるノウハウです。


① 役割の指定(ペルソナ)

AIに「あなたは経験10年以上のIT法務に精通した日本の弁護士です」といった役割(ペルソナ)を与えることで、出力される回答の専門性と視点がシャープになります。

参照:Gemini公式アカウント「初心者でも簡単! 生成AIから欲しい回答を引き出すプロンプト術


② 情報の構造化

 プロンプトをベタ打ちの文章で書いても出力はされますが、より精度を高めるためには以下のように「#(ハッシュタグ)」などを用いて、指示を構造化して整理します。

#命令
以下の契約書案をレビューし、リスクを抽出してください。
#前提条件
・当社は甲(委託者)、相手方は乙(受託者)である
・当社は早期のサービスリリースを最優先事項としている


③ 1回で終わらせない(対話によるブラッシュアップ)

 AIの最初の回答が完璧であることは稀です。「もう少し保守的な観点からレビューして」「第〇条について、甲に有利になる修正案を3パターン出して」など、対話を重ねて精度を上げていくプロセスが重要です。



4.実演!法務実務のためのプロンプト活用術

 今回のセミナーでは、実際の画面を共有しながらChatGPTやClaude を使ったハンズオン(実演)を行いました。いずれのテーマにおいても、弁護士は案件対応時にどのように考えているのかという思考過程を示したうえで実演を行っています。


実践1:契約書ドラフト作成(AIの共同研究開発契約書)

 ゼロから契約書のドラフトを作成させる実演では、「条件指定なし」の場合と、「権利帰属や秘密保持に関する詳細な条件を指定」した場合の出力結果を比較しました。

 構造化されたプロンプトを用いることで、実務に耐えうる精度のドラフトがスムーズに生成される過程を確認しました。

 そのうえで、条件を細かく指定しないと抜け漏れのリスクあることや、完成形についてある程度のイメージ・知識がないと出力されたものの良しあしが判断できないリスクがあるといった、リスクの指摘も行いました。


実践2:契約書レビュー(中小企業庁の共同開発契約書モデル)
 レビュー編では、中小企業庁の共同開発契約書ひな型を用いたレビュー実演を行っています。

 単に「レビューして」と入力するだけでなく、「甲は技術力に強みがあり、甲は営業力に強みがある。甲の既存の知的財産をベースに共同開発をする。」といった具体的なビジネスの前提条件をAIに付与したうえで、「甲の立場でレビューして」と指示することで、自社の立場に寄り添った実務的なリスク抽出が行われる過程を実演しました。


実践3:リーガルリサーチと「NotebookLM」の活用

 このパートではAI最大の弱点であるハルシネーション(もっともらしい嘘)を防ぐため、ソース(参照元)を限定する手法を紹介しました。

 参考情報として、アップロードした特定の資料(PDFや社内規程など)のみを学習して回答を生成するGoogleの「NotebookLM」の活用についても紹介しました。



5.AI時代に法務に求められる「言語化力」

 AIを活用して法務業務を効率化した後、最終的なチェックを外部の弁護士に依頼する際のコミュニケーションも、AI時代には変化が求められます。

「NGな依頼」とは?

  • 丸投げ: 「レビューしてください」のみの依頼
  • 背景情報の欠落: 「このAIの出力結果はあっていますか」といった、前提情報や背景事情の共有のない依頼


 実践編で解説したように詳細条件なし/ありで出力結果の精度が大きく変わります。これは上司と部下の関係でも、相談者と弁護士の関係でも同じです。

 レビュー等を依頼された側からすると、契約書のレビューといっても単にリスクを把握したいだけなのか、しっかり修正したうえで相手方に押し戻したいのかによって、対応方針が異なります。

 どのような方針でどのように対応してほしいのかを「言語化」することが効果的に法務業務を進める鍵になります。

 AIを使ったうえで弁護士に相談する際には、例えば「AIを使って一次レビューをした結果、〇〇というリスクが抽出されました。当社の事業戦略としては△△を優先したいのですが、この条文のままで問題ないか、法的見地から最終レビューをお願いします」といったように、AIの成果物+自社の意図(コンテキスト)をセットで共有すると、最も効率的で確実なリーガルチェックに繋がります。



6.まとめ

 今回のセミナーには多くの申し込があり、本セミナー後のアンケートでは以下のような熱量の高いコメントが寄せられました。

  • 具体的な例に即して実践的でした
  • 弁護士としての思考方法も踏まえて、生成AIを契約書作成・審査等で利用する場合の留意事項やポイントの一端を知ることができ、非常に参考となりました。
  • 社内でもソースがない、ただ投げただけ等AIの使用について課題が散見されるので、是非展開したいと思います。
  • 有効なプロンプトの作成においては、まず人がどのような思考で対応しているかまとめるという視点が興味深かったです。ありがとうございました。
  • これまでのドキュメンテーションの苦労が何だったのかと思うくらいのアイオープナーでした。弁護士に相談するべきポイントがより明確になります。


 生成AIは正しく使うことで非常に強力な味方になります。実務での活用に悩まれている方は、ぜひ今回のプロンプトのコツを意識してみてください。




【法務のAI活用・リーガルチェックのご相談はGVA法律事務所へ】

 GVA法律事務所では、生成AIを活用した最新の法務体制の構築支援や、AIが一次チェックした契約書の最終的な法的レビュー・アドバイスを行っております。

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