
執筆:リーガルアシスタント 神谷枝梨奈 (メタバース / エンターテインメントチーム)
1.はじめに
近年、SNSの発展により、発信者は急増し、誰でも自分自身の考えや価値観、情報や日常の出来事などを発信することが可能となりました。それにより、インフルエンサーと呼ばれる個人の活動者も現れ、SNSを活用した新たなビジネスモデルも多く生まれています。今後も、SNSを主軸としたインフルエンサーの活躍の場は拡大・発展していくと思われますが、インフルエンサーとして本格的に活動していくためには、投稿に関する正しい知識や専門家による法的サポートが不可欠となります。
本記事では、SNSの現状とインフルエンサーが抱える法的課題点などについて、幅広く触れてご説明いたします。
2.インフルエンサーとは
「インフルエンサー」とは影響を与えるという意味の“influence”が語源で、「影響者」と翻訳されます。SNSの文脈で使われる場合は、確固たる定義は存在しないですが、おおむね以下の要素を有するような場合に使われていることが多いと思われます。本記事においてもその意味で使用します。
(インフルエンサーの要素) |
なお、上記の要素以外に、自身のPR活動を行いつつSNSを用いて収益を上げ、個人事業主として役割を果たしている場合も、インフルエンサーとして呼称されることもあります。
3. インフルエンサーのSNSの使い分け
昨今、多くのSNS・プラットフォームが発展していますが、インフルエンサーが活用している主流のSNSは以下の通りです。
(1)Instagram
写真やショート動画などを共有するプラットフォームです。視覚的要素に特化したSNSであるため、美容、ファッション、旅行等、個人のライフスタイルなどの情報発信に適しています。個人での自由な発信が増えた今、インフルエンサーが初期に参入するSNSはInstagramが多いとされています。また、企業や個人が自分のブランドやサービスを広めるのに多く利用されるようになっています。
(2)TikTok
短い動画の作成・共有ができるアプリです。ダンスや音楽、エンタメ性が強いショート動画の投稿が多いことが特徴です。「おすすめ」といった拡散機能があるため多くの流行が生み出されています。最近ではPRのために企業の参入も増えています。
(3)YouTube
短編長編に関わらず、動画を中心とした様々なコンテンツに向いているプラットフォームです。動画の視聴回数に応じた広告収入を得ることができ、収益化が可能なため、インフルエンサーやクリエイターの活動の場としても重要な役割を果たしています。
4.インフルエンサーの発信スタイル
数年ほど前までは、インフルエンサーによる発信のスタイルは、自身は出さずに情報のみを発信する「まとめアカウント」のようなものが主流でした。自身を発信する場合、「写真だけで人気を呼ぶ」スタイルが主流で、このスタイルを実践できるのは芸能人や著名人に制限される傾向が強く、一般人が同じように注目されるのは難しいと考えられていました。
しかし、現在はSNSでの「ファン化」が重要視されており、情報を伝えるだけではフォロワーの関心を集めにくいのが現状です。そのため、多くのインフルエンサーは自身の経験や考えを基に「人としての魅力」を発信するスタイルに変わりつつあります。また、ステルスマーケティング(ステマ)の増加などにより、フォロワーも情報の真偽に敏感になっているため、フォロワーにとってインフルエンサーの「人柄」や「属人性」が感じられる(どんな人が発信しているかが感じられる)ことが信頼につながり、この信頼によって初めて発信内容が受け入れられるという場面が増えています。
このような変化により、現在は「人を感じさせる発信」が多くみられるようになっています。しかし、同時に「人」に対する誹謗中傷を受けやすくなるなど、発信者の悩みやトラブルも増えています。
5.インフルエンサーのマネタイズ方法
インフルエンサーとして発信活動をしていくと、収益を上げることも可能となります。インフルエンサーの主なマネタイズの方法は次の通りです。SNSの発展とともに様々な方法がありますので、本稿執筆時点での一例としてご紹介します。
(1)PR・企業タイアップ
企業がインフルエンサーに対して自社の製品やサービスを紹介するよう依頼し、報酬を支払う方法です。Instagram等での「タイアップ投稿」はこれにあたります。
(2)アフィリエイト
インフルエンサーが紹介する所定のリンクを経由してフォロワーが商品やサービスを購入した場合、インフルエンサーに一定の報酬が支払われる仕組みです。インフルエンサーは、フォロワーのニーズにあった商品やサービスをSNSを用いて紹介することで、売上に繋げることができます。
(3)自社商品の販売や商品プロデュース
自身のブランドやコンテンツを制作し、フォロワーへ向けて販売する方法です。有形商品・無形商品ともにありますが、マネタイズの方法として、最も自身のSNSの影響力や「ファン化」による効果を発揮できる方法かと思われます。
6.インフルエンサーが抱える法的問題点
ここまで、インフルエンサーの現状について紹介してきましたが、SNSにおける活動が活発になってきたと同時に、発信者は法的問題点を抱えることが増えました。
発信活動のフェーズによって問題点は異なってきます。以下の表に、インフルエンサーが抱える主な法的課題をまとめました。継続的な発信活動を行うには、これらの問題を理解し、対応していくことがポイントになります。
発信活動のフェーズ | 法的課題の例 |
---|---|
フェーズ1: | ・知的財産権(特に著作権) |
フェーズ2: | ・誹謗中傷対策 |
フェーズ3: | ・広告規制 |
フェーズ4: | ・会社設立 |
7.おわりに
SNSの発展に伴い、どなたでも自分自身が培ってきた経験や想い、知識、好きなことを自由に発信し、活動の幅を広げられる時代となり、このようなSNS業界の動向は大変魅力的だと思います。だからこそ、発信者が困ったとき、問題に直面したときはすぐそばに信頼して相談できる専門家の存在がいると安心して活動に注力できるのではないでしょうか。
弊所では、インフルエンサーに関する法務に豊富な知見及び対応実績を持つ弁護士チームを組成し、インフルエンサーがInstagram、TikTok、YouTube、X(旧Twitter)といった各種SNS等での活動において直面する法務課題の解決をサポートしています。お気軽にお問い合わせください。
監修
弁護士 箕輪 洵
(スタートアップ企業を中心に、上場企業から中小企業まで企業法務を幅広く対応。知的財産法を得意とし、特にメタバース法務、エンターテインメント法務に注力。)

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