
(1) 賃金の現金払いの原則
労働法は、たとえ従業員が現金以外での賃金の支払いを明示的に要求していたとしても、会社による現金以外での賃金の支払いを基本的に禁止しています。例外的に、一定の条件下では小切手等での支払いも認められています。この規定に違反した場合、会社は賃金を支払っていたと認められないことになります。
(2) 賃金の支払い期間
労働法上、会社による賃金の支払いは16日を超えない間隔で支払う必要があります。つまり、会社は月に2回以上賃金を支給する必要があります。不可抗力等の事情により、会社はこの期間に賃金を支払うことができない場合は、そのような事情が解決した後、直ちに賃金を支払う必要があります。
(3) 賃金の控除
労働法は、会社による賃金の控除を基本的に禁止していますが、例外的に以下の場合において会社は賃金の控除を行うことができます。
会社が従業員の同意を得て保険に加入しており、その保険料を補償するために控除する場合。
以下の場合における組合費の控除。会社がチェックオフの権利を認められている場合。チェックオフとは、労働組合との協定に基づき使用者が組合員の賃金から組合費を控除して、それらを一括して組合に引き渡すことをいいます。また、従業員が組合費の控除を書面で同意している場合もこの控除が認められます。
法律や規則により控除が認められている場合。この例としては、withholding taxの控除や相殺が挙げられます。日本では、会社が従業員に債権を有していても賃金を相殺することはできません。他方で、フィリピンの法律では、会社は従業員に対して有する債権を賃金と相殺することができます。
(4) その他の規制
賃金に関する行為で、労働法が明確に認めていないものとしては、例えば以下の行為が挙げられます。
賃金の支払いの全部または一部の差止め
賃金の一部または全部を放棄するよう従業員に迫ること
雇用の約束または雇用維持の対価として、会社等の利益のために賃金を控除すること