【弁護士解説】フィリピンにおける配当手続と規制の概要

執筆:弁護士 水谷 守国際チーム

(1) 概要

 フィリピンの会社法では、会社は留保利益(unrestricted retained earnings)から配当を行うことができます。支払額は、原則として株主が保有する発行済株式に基づいて決定されます。

 配当の決定権は基本的に取締役会にあります。例外として、配当を株式で行う場合には、株主総会で発行済株式の3分の2以上の賛成を得る必要があります。さらに、取締役は、実務上、定時株主総会で配当方針や配当の有無を株主に説明し、配当を行わない場合にはその理由を説明することが求められます。

(2) 配当の要件

 配当を行うための基本的な要件をまとめると以下のとおりです。

  • 留保利益があること。

  • 取締役会で配当の決議を行うこと(配当を株式で行う場合、発行済株式の3分の2以上の賛成を得ること。)

  • SEC(証券取引委員会)が出すその他の要件を遵守すること。

      

                                                                                                                         

(3) 株主の配当受領に関する制限

 株主が配当を受け取る権利には制限があります。株式の払い込みが未払いの株主については、配当金は未払いの株式引受金額および関連費用に充当され、残額のみが配当金として支払われます。また、配当を株式で行う場合は、株主が未払いの引受金額を全額支払うまで配当が保留されます。

(4) 配当の義務

 基本的に、配当を行うかは取締役会の裁量に委ねられています。そのため、留保利益があっても配当は会社の義務ではありません。ただし、例外として、保留利益が払込資本金を超える場合で、払込資本金を超える保留利益の保持が許可されない場合は、会社は配当を行う必要があります。

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