【弁護士解説】Philippine Sustainable Finance Taxonomy Guidelines Version I(フィリピン版サステナブルファイナンスタクソノミーのガイドラインVer1)を紹介

執筆:弁護士 水谷 守国際チーム

第1 はじめに

 近年サステナビリティの観点による経済活動が注目されており、フィリピンでもサステナビリティは推奨されています。そして、サステナブルファイナンスを推進するため、ファイナンスセクターフォーラム(FSF)により作成されたPhilippine Sustainable Finance Taxonomy Guidelines Version I(SFTG)が2024年2月に公表されました。本稿ではSFTGを簡単にご紹介します。

第2 サステナブルファイナンスタクソノミーとは

 そもそもサステナブルファイナンスとはなんでしょうか。ネットなどで調べると様々な説明がされていますが、SFTGによると、「環境、社会、ガバナンスの基準を経営判断に組み込み、経済成長を支援し、さらに顧客と社会の双方に持続的な利益をもたらすと同時に、環境に対する負荷を軽減する金融商品やサービス」(筆者訳)であるとされています(SFTG p8)。

 さらに、「サステナブルファイナンスタクソノミー」もあまり聞きなれない用語だと思います。SFTGは、サステナブルファイナンスタクソノミーとは、「ある経済活動が環境的・社会的に持続可能かどうかを分類するためのツールです。企業や投資家など様々な利用者が、資産、製品、プロジェクト、企業等に対して投資、購入、融資等を行う際に、十分な情報に基づいた意思決定を行うためのガイドとしてこのツールは機能します。」(筆者訳)であるとしています(SFTG p4)。

 簡単にいいますと、ある経済活動が環境や社会にとって良いものであると宣伝しつつ、実際にはそうでない場合があるため(いわゆるグリーンウォッシング、ソーシャルウォッシング)、これを判断するためにタクソノミーは役に立ちます。

 なお、PRI(2023)は、サステナブルファイナンスタクソノミーは一般的に以下の4つの要素を含んでいるとしています。

1.       環境目的: タクソノミーが目指すものを定義(例えば「気候変動の緩和」、「気候変動への適応」、「生物多様性の保全」や「サーキュラーエコノミーへの移行」など)
2.       経済活動のリスト: 適合する経済活動の詳細(タクソノミーの目的にポジティブな貢献をもたらす経済活動のリスト)
3.       パフォーマンス基準: タクソノミーの目的との適合性の判断に用いられる技術的な測定基準
4.       最低限のセーフガード: 他の環境・社会目的に重大な害を与えないこと(Do No Significant Harm, DNSH) の要求など

PRI(2023) p6より抜粋

 「1. 環境目的」に関して、SFTGは「気候変動への緩和」と「気候変動への適応」を挙げています。そして、「2. 経済活動のリスト」に関して、「気候変動への緩和」においてはエネルギー、輸送、廃棄などが挙げられ、「気候変動への適応」においては、特定のセクターへの優先は提案されていないとしつつ、水資源や健康などに関する活動を支援するための資金提供は特に注目できるとしています。

第3 SFTGによる分類

 SFTGは以下の流れで分類を行っていきます。詳細を説明するととても長くなるので、本稿では概略だけ紹介します。

1. その活動は「除外活動」に該当するか?
2. フィリピンの法律に準拠しているか?
3. 1つ以上の環境目標に実質的に貢献しているか?
4. 他の環境目標に対する危害(潜在的なものを含む)を回避しているか?
5. 危害及びその可能性は是正されたか?または要求されている一定の期間内に是正される予定であるか?

SFTG P26より筆者訳

 「除外活動」とは、Republic of Philippines 2021に基づいて評価され(SFTG p26)、例えばギャンブルや化石燃料による発電は「除外活動」に該当します(その他は、Republic of Philippines 2021 p9参照)。
 以上の流れを経た結果、その経済活動は「グリーン」、「アンバー」または「レッド」に分類されます。なお、「レッド」に分類されたとしても、その経済活動が持続不可能(unsustainable)であることまでは意味しないことに留意が必要です(SFTG p28)。

・グリーン:その活動は環境目標に対して実際に貢献しており、さらにDNSH(Do No Significant Harm)やMSS(Minimum Social Safeguards)によるEssential Criteriaに合致している(Essential Criteriaに関する詳細は省きます。)

・アンバー:①その活動は環境目標に対して実際に貢献しているが、他の環境目標に対して重大な危害をもたらす。ただし、その危害は5年以内に修復可能であるか、あるいは修復は10年未満で済むという主張が客観的な検証により支持されている。②DNSHやMSSによるEssential Criteriaに合致している

・レッド:その活動が環境目標に対して寄与するものではないか、Essential Criteriaに合致していない

SFTG P28を参照

第4 おわりに

 以上SFTGを簡単にご紹介しました。興味を持って頂いた方はぜひSFTGの原文をご覧ください。

第5 参考文献

参考文献は全て2024年3月31日に閲覧しました。

Financial Sector Forum “Philippine Sustainable Finance Taxonomy Guidelines Version I”(2024)
https://www.sec.gov.ph/wp-content/uploads/2024/02/2024MC_SEC-MC-No.-5,-S.-of-2024-Guidelines-on-the-Philippine-Sustainable-Finance-Taxonomy.pdf

PRI 『日本におけるサステナブルファイナンス・タク ソノミーの必要性 投資家調査およびステークホルダーへのインタビュー結果』(2023) 
https://www.unpri.org/download?ac=18223

Republic of Philippines ” Sustainable Finance Framework”(2021) https://www.treasury.gov.ph/wp-content/uploads/2022/01/Republic-of-Philippines-Sustainable-Finance-Framework-vF-with-disclaimer.pdf

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