公共サービス法の改正(共和国法第11659号)について

執筆:弁護士 金子 知史、外国弁護士(フィリピン)Vann Allen P. dela Cruz国際チーム

1.改正の背景

  • この改正は、外国投資を促進することによる経済の活性化、競争健全化、および公共サービスの品質向上を目的としたものです。

  • 旧法下においては、「公共事業 public utility」と「公共サービス public service」は定義が曖昧と主張されてきました。フィリピン共和国対マニラ・エレクトリック・カンパニー事件(G.R. No.141314, April 9, 2003)では、最高裁が 「公共事業とは公共サービスに従事することである」と判示しました。フィリピンの憲法は「公共事業」に40%の出資上限を課しているため、公共事業と公共サービスの定義が漠然としていることが健全な競争や外国からの投資を阻害していると問題にされてきました。

  • 本改正によって公共事業と公共サービスが区別されることで、一部の産業分野(電気通信、鉄道、地下鉄、航空など)が憲法の定める外資規制から解放され、結果としてそれらの分野での外国人による完全所有が可能になります。言い換えると、憲法は「公共事業」のみを外資規制としているため、国内で行われる公共サービスに対する外国人の所有が最大100%まで認められることになります。

  • 改正法では、公共事業に該当する業種がリストアップされています。このリストに含まれていない業種については、原則として100%までの外国人所有が認められます。

  • 公共サービスに属すると認められる事業であっても、重要インフラに該当する場合には外国人による完全所有が認められない可能性があります。

2.改正の主な内容

  1. 大統領は、公共サービスへの投資について、国家安全保障を目的とした中止ないし禁止の勧告を出すことができ、勧告から60日以内に実際に中止ないし禁止とする権限を持っています。

  2. 「公共事業」とみなされるもののリストが以下のとおり提供されています。これらの事業は継続して外資企業は40%までのみ出資が許容されます。

     a. 電気の配給

     b. 送電

     c. 石油および石油製品パイプライン

     d. 上水道システム、下水道システム

     e. 海港

     f. 公共事業用車両

  3. 外国人投資家や外国人所有が認められている分野の一つである電気通信事業への投資は、サイバーセキュリティとISOの監査を受ける必要があります。

  4. 電気通信、鉄道、地下鉄、航空会社についても100%外資による所有が認められることになりました。

  5. また、この法律には相互主義条項があり、当該外国がフィリピン国民にもこれを認めない限り、外国人が重要インフラを運営する企業の資本の50%以上を所有することを禁じています。

3.施行日について

この法律は、官報または一般に発行される新聞に掲載されてから15日後に発効すると規定しています(第35条)。この法律は、2022年3月23日に官報のウェブサイトにアップロードされたため、2022年4月7日から施行されます。

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