
執筆:外国弁護士(マレーシア)(Not admitted in Japan)サイフル アジズ、弁護士 鈴木景(国際チーム)
■はじめに
オフショア企業とは、事業の大半を行っていない地域に登録された企業をいいます。
オフショア企業を登録することにより、プライバシーや財務の観点でのメリットや、税制上の優遇措置を受けることができます。加えて、財務諸表や監査の負担を軽減することもできます。
今回は、マレーシアにおけるオフショア企業としての登録について、ラブアン連邦地域と関連してご紹介します。
■ラブアン地域における法制度
マレーシア政府は、1989年、ラブアンを「国際オフショア金融センター」とすることを決定しました。
ラブアンに関する法令として、Labuan Companies Act 1990(LCA)や、Labuan Business Activity Tax Act 1990(LBAT)が制定され、これらの法令によって、ラブアンに登録したオフショア企業の設立、活動及び課税等について具体的に定められています。
そして、これらの法律は、Labuan Financial Services Authority(LFSA)が、管轄しています。
LCAでは、ラブアン企業に関する設立等に加え、ラブアンにおける外国企業の設立、登録および管理について規定されており、以下のような事業活動について、その円滑化を図っています。
(i) 銀行、保険、取引、管理、ライセンスおよび出荷業務などのラブアンでの取引的活動
(ii) ラブアン事業体が自らのために行う証券、株式、ローン、預金およびその他の資産への投資目的での保有に関連する活動等、ラブアンでの非取引的活動
LCAの下では、外資企業が、ラブアンに登録した企業について100%の支配権を保有することが認められています。
LBAでは、ラブアンに登録した企業の事業活動は、特定の目的を除き、
(i) ラブアン域内で、または
(ii) ラブアンから、あるいは
(iii) ラブアンを経由し、
マレーシアの非居住者もしくは他のラブアンに登録した事業体と、外貨(マレーシア・リンギット以外)で行われなければならないとされています。
LCA第7条4項でも、ラブアン企業は、
(i) 管理費および法定経費の支払い
(ii) 国内企業への投資の保有
(iii) 国内企業の負債の保有
という三つの目的を除き、マレーシア・リンギットで取引することは許可されないと規定しています。もっとも、ラブアンに登録した企業がLFSAに通知することにより、マレーシア居住者との取引を許可されることもあり得ます。
その他、ラブアンに登録した企業の株式は、マレーシア・リンギット以外の通貨で表示することができることにも明確に留意する必要があります。
■ラブアンにおける企業の設立
ラブアンに設立された企業には、
(i) LCAに基づいて設立された企業
(ii) LCAに基づき、マレーシア国外で設立された海外におけるラブアンに登録した企業としての外国企業
の2種類があります。
これらの登録は、ラブアンの信託会社が行う必要があります。
LCAでは、外国企業の設立場所をラブアンに移転することも認められており、移転登記の時点で、外国企業はラブアンに設立され、住所を有しているとみなされることとなります。
ラブアンに登録した企業は、クアラルンプールとイスカンダール・マレーシアに営業所を設置することが認められています。但し、営業所の役割は顧客とのミーティングの円滑化と、潜在顧客との接点の確立に限られている点に注意が必要です。
帳簿および記録(取引活動を含む)の管理を、営業所を通じて、営業所から、または営業所内で行うことは禁止されています。
■ラブアンにおける税制について
LBTAは、貿易活動(輸出入を含む)を行う企業に対して、監査済みの純利益の3%または固定税RM20,000の、2種類の固定税率を定めています。
投資保有目的のみのラブアン登録企業であれば、税金はかからないほか、監査報告書も提出する必要はありません。
ラブアンの税制特有の特徴としては、
(i) 税務申告義務の軽減
(ii) 所得の二重課税がないこと
(iii) 永久免税
(iv) マレーシア二重課税協定(DTA)の下で優遇を受けることができること
(v) LFSAで認められている免税の利益を享受しつつ、国内企業に投資することができること
が挙げられます。
■おわりに
今回は、マレーシアのタックスヘイブンであるラブアンについてご紹介しました。
税制優遇など外資企業にとってもメリットの大きい地域ですので、東南アジア進出を検討されている方は、注目してみてもよいかもしれません。
末尾にラブアンでの会社設立の条件について、簡単にまとめました。
こちらは本稿執筆当時の情報を元に作成したものであり、また、日本語に翻訳をした情報になりますので、あくまで参考情報としてご利用いただくにとどめ、実際に設立される際は、弊所含めた専門家にご相談いただきますようお願いいたします。
<ラブアンへの会社設立>

詳細および参考文献については、
https://www.labuanibfc.com/
のラブアン・フィナンシャル・サービス・オーソリティの公式ウェブサイトをご覧ください。