本コラムは、一般社団法人宇宙美容機構の機関紙「MIRROR」(7月8日付発行)寄稿した内容となります。
宇宙に関するビジネスが活発化するにつれ、宇宙に関わる法律が注目されるようになってきました。
本稿では、宇宙法の概要や、日本における国内宇宙法と宇宙ビジネスの関わりについて解説します。
1. 宇宙法とは
宇宙ビジネスに関連する法律として、「宇宙法」を思い浮かべる方も多いかもしれませんが、現状では「宇宙法」という名称の法律はなく、「宇宙法」とは、宇宙活動に関連する法律の総称となります。
宇宙法は、国家間の活動を規律する条約等の国際法と、各国が制定した、民間の活動を規律する国内法に大別されます。

2. 宇宙ビジネスと日本の「宇宙法」
現在、日本において制定されている「宇宙法」として、「宇宙基本法」、「衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律(衛星リモセン法)」、「人口衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(宇宙活動法)」、「宇宙資源の探査及び開発に関する事業活動の促進に関する法律(宇宙資源法)」の4つが挙げられます。
(1)宇宙基本法
宇宙基本法は、①宇宙開発利用に関する基本理念、②基本的施策、③宇宙開発利用の司令塔、④体制の見直しに係る検討等を骨子とする「宇宙法」です。
この宇宙基本法に基づいて、以下の衛星リモセン法、宇宙活動法、宇宙資源法が制定されました。
(2)衛星リモセン法
衛星リモセン法は、衛星に搭載したセンサーを用いて得られた観測データの適正な取扱いの確保を目的とする法律で、2017年11月に施行されました。
この法律では、①衛星リモートセンシング装置の使用許可制度、②衛生リモートセンシング記録の提供制限等同記録保持者の義務、③衛星リモートセンシング記録を取扱う者の認定等、装置の使用、データの取得、提供、取扱いを段階ごとに規制を定めております。
衛星リモセン法がかかわるビジネスとしては、農業、気象予報、災害情報等を含めた、衛星リモートセンシング記録を取扱う地球観測ビジネスが挙げられます。
これらのビジネスで使用する全てのリモセン装置が、規制の対象となるわけではなく、取得した情報を画像データにしたときに、一定の基準に達する高分解能のリモセン装置が規制対象となります。
(3)宇宙活動法
宇宙活動法は、ロケットや人工衛星の打上げ等の許可や打上げ事故に伴う賠償に関する法律で、2018年11月に施行されました。
この法律では、主に①ロケット等の打上げの許可制度、②人工衛生管理の許可制度、③第三者損害賠償に関して定められており、宇宙ビジネスを行う上で重要な役割を果たしています。
宇宙活動法が関わるビジネスとしては、ロケットや人工衛星の打上げや、打上げ後の人工衛星の管理等が挙げられます。これらのビジネスには高度な技術と多大な資金が必要であり、リスクが大きいことから、適切な許認可制度が必要とされています。
(4)宇宙資源法
宇宙資源法は、民間事業者が、月や他の天体で採掘した水や鉱物等の宇宙資源の所有権を認める法律で、2021年12月に施行されました。
この法律では、宇宙資源の探査及び開発の許可取得者が許可を受けた計画に従って宇宙資源を採掘等したときに、その宇宙資源の所有権を取得することが明記されています。
月の宇宙資源活用を行う日本のベンチャー企業である株式会社ispaceは、日本で初めて宇宙資源法に基づく許可を取得しましたが、この許可により、同社が契約を締結していたNASAとの月資源の商取引が可能となりました。
3 おわりに
宇宙ビジネスを展開するためには、上記の国内宇宙法を理解することが欠かせませんが、現行宇宙法でも解決ができていない論点が多数存在します。
宇宙ビジネスに関するご相談事がございましたら、いつでも弊所にお問い合わせください。
一般社団法人宇宙美容機構の機関紙「MIRROR」(7月8日付発行)
