【弁護士解説】フィリピンにおける試用期間の概要

執筆:弁護士 金子 知史水谷 守国際チーム

第1 はじめに

 従業員を雇用する際、まずは試用期間で働きぶりを見たうえで本採用を決めるということがあります。しかし、フィリピンの労働法(以下、単に「労働法」といいます。)は試用期間に関する定めを置いており、会社はこれを遵守する必要があります。今回は、試用期間に関する概要を紹介します。

第2 試用期間の概要

 労働法において、「試用期間」とは、会社が試用期間として一定期間を設け、さらに雇用時に従業員に対して本採用における合理的な基準を知らせたうえで、当該期間中に本採用の可否を判断することを指します。

第3 一定期間について

 労働法では、試用期間中の雇用は、原則として従業員の就労開始日から6カ月を超えてはならないとされています。判例(Mariwasa Mfg. v. Leogardo GR No. 74246, 1989-01-26)による例外として、試用期間を延長させて6か月を超えた場合でも、当初の期間内で従業員が本採用の基準を満たしていなかったときに、会社が当該従業員に二度目の機会を与えるために試用期間を延長させるという、会社側の寛大な行為(act of liberality)であった場合は、このような延長は有効であるとされています。

第4 合理的な基準について

 会社は、従業員に対して本採用の基準を雇用時に周知する必要があります。仮に周知していなかった場合には、本採用しなければなりません。当然ではありますが、試用期間の存在とその期間についても周知する必要があります。この要件の例外として、職務の性質が”Self-descriptive”(例:運転手、家政婦)である場合には周知の必要がありません。

第5 試用期間中の解雇

 試用期間で従業員を本採用せずに解雇することもあると思います。会社が試用期間内で従業員を解雇するには、以下の2つの条件のうちどちらかを満たしている必要があります。

  1. 雇用開始時に周知した合理的な基準を満たさなかった場合

  2.  正当な理由がある場合

解雇する際には、適切な手続を経る必要があります。たとえば、「合理的な基準を満たさないこと」を理由に解雇する場合には、会社は解雇する旨の書面を従業員に対して示すだけではなく、どの基準がどのように適用されたかまで示す必要があります。

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