Web3

スタートアップに寄り添い、ブロックチェーンの先進的なサービスにも仕組みを理解して対応してくれました

Astar Network

Founder

渡辺 創太 様

まず初めに現在の事業内容や今後の事業展開をご紹介ください。

日本発のパブリックブロックチェーン「Astar Network」を開発しています。「Astar Network」は、Polkadot(※1)(ポルカドット)上でスマートコントラクト機能を提供する基盤となるものです。今後マルチチェーンという様々なチェーン同士が繋がる世界観が出てくるので、その際に、様々なマルチチェーンアプリケーションを作るスマートコントラクトのプラットフォームになるようなレイヤー1のブロックチェーンを作っています。

「Web3/3.0」という言葉を最近よく耳にしますが、多義的で定義が定まっていない概念と理解しています。「WEB3.0を実現する」をビジョンとして掲げられている貴社としては、「Web3/3.0」の最も重要な特徴はどのような点だとお考えでしょうか。

検証可能性とオーナーシップが重要な特徴であると考えています。

検証可能性について、インターネットとインタラクションする際に、データが何に使用されているか、誰がどのようなデータを持っているか等の情報が本当に正しいのか検証することができます。「Web3/3.0」の世界では、このような検証が企業などの特定のプレイヤーだけでなく誰でも行うことができます。

オーナーシップとは、データが誰に帰属するかという問題です。「Web3/3.0」以前の世界では、データが一部の大企業に帰属し、一部の大企業がデータから享受する利益を独占していました。「Web3/3.0」の世界では、一部の大企業に独占されていたデータが個人に帰属することになります。個人にデータが帰属することにより、一部の大企業が独占していた利益が個人に還元され、より人間が中心となるWebが構築されると考えています。Twitterなどにより情報が民主化されたことにより世の中が大きく変化したのと同様にデータの民主化により世の中が大きく変化すると予想しています。企業が出発点となると結局は現状のように一部の企業にデータが集約するのではないかという疑問があるかもしれません。ただ、情報の開示とパーミッションレスによりこの疑問は解消されると考えています。「Astar Network」はプロトコルなど自分達のプロダクトをオープンソース的に公開しており、誰でも利用することが可能ですし、弊社が消滅しても「Astar Network」は存続し続けるため、今後もデータの民主化の流れは存続していきます。

「Web3/3.0」を日本で実現するにあたって、一番の課題はどのようなところにあるとお考えでしょうか。

日本の場合、税制が一番の課題と考えています。法人が暗号資産を保有する際の期末課税が非常に厳しく、また、個人に課税される場合の最高税率は55%であり、世界的に見てもあり得ない状況となっているため、これを変えていく必要があります。さらに、投資事業有限責任組合契約に関する法律(LPS法)による規制が厳しく、海外に比べてWeb3/3.0スタートアップに投資しにくい状況となっています。

また、税制だけでなく、法律面においてグレーゾーンが多く、ビジネスを展開しづらい点も課題となっています。トークンビジネスの先進国であるシンガポールでは、法律が明確であり、ユースケースの蓄積によりどのようなビジネスモデルであれば法規制の対象になるのかという点がある程度明確になっています。

海外で当たり前にできることが日本で当たり前にできないのは企業にとっては大きな障壁になります。「Web3/3.0」ビジネスは日本経済だけで完結するものではないので、グローバルな視点から法規制や税制を考えていく必要があると思います。

弊所にご依頼いただいた法律業務の中で、弊所の対応について何か印象に残っているものはありますでしょうか。

GVA法律事務所はスタートアップに寄り添ってくれる事務所であるという印象です。それだけでなく、先進的なサービスにも対応してくれていました。特に印象的なのは、当時ロックドロップ(※2)を行おうとした際に、ロックドロップの仕組みをきちんと理解してくれ、適切なリーガルアドバイスをしてもらいました。また、金融庁からサービスに関する法的な確認をする書面が送られてきた際には、既存の法律やその解釈と照らし合わせてスピード感を持って対応してくれました。

Web3/3.0が実現する世界は、ボーダレスで特定の国の法規制には馴染まない世界であると感じています。一方で、メタバース空間であれ、DAO組織であれ、人が集まる場である以上、トラブルの予防や解決のために、一定のルールは必要であり、将来的に法律家や法律事務所の役割は、このような特定の国家を離れた世界におけるルールメイキングのサポートやトラブルの仲裁などになっていくのではないかと感じています。Web3/3.0をビジネスの側で推進していく貴社の視点からWeb3/3.0の世界の法律家・法律事務所に期待することについてお聞かせください。

「Web3/3.0」の分野は、法制度が整備されるスピードと比べて、技術開発のスピードが極めて速い分野になります。また、技術開発のスピードだけでなく、新たなサービスが次々とローンチされている分野になります。そのため、法律家や法律事務所も日々新たな技術やサービスに関する情報をキャッチアップする必要があると思います。ビジネスサイドからすれば、新たな技術やサービスを一から逐一説明するのには労力や時間的コストがかかるので、その説明をしなくてもそれらを理解してくれ、その上でリーガルアドバイスをしてくれる法律家や法律事務所にはかなりの価値を感じます。GVA法律事務所はそのような法律事務所であると思います。

今後日本からWeb3/3.0分野での新事業を立ち上げる起業家へ「ここだけは気をつけておけ」という注意点について何かメッセージをお願い致します。

「Web3/3.0」の分野は、他の分野と比べてボーダーレスな分野であり、世界と戦っていかなければなりません。そのため、「Day 1」からグローバルな観点からプロダクトを作成していく必要があると思います。

(2022年7月22日インタビュー実施)


(※1)Web3の実現のために異なるブロックチェーンをつなぎ合わせて相互運用を目指すプロジェクト

(※2)イーサリアムやビットコインをスマートコントラクト上に一定期間ロックすることで、その所有者に新しいネットワークのトークンを配布すること

Astar Network

Astar Networkは、日本発のパブリックブロックチェーンで、
EVM/WASM双方に対応したPolkadot(ポルカドット)のスマートコントラクトハブです。
Web3時代のインフラを目指しています。
2021年12月には、世界で3番目にPolkadotのパラチェーンと接続を完了させ、本格的に稼働を開始しました。


担当チーム:Web3チーム