【弁護士解説】「〇〇をやってみた」で逮捕!?企画段階で確認しておきたい、刑法・軽犯罪法に抵触する可能性

執筆:弁護士 林越 栄莉 メタバース / エンターテインメントチーム



はじめに

 YouTubeやTikTokといったSNSの世界では、日々「〇〇をやってみた」等の刺激的な企画が投稿され人気を集めています。 しかし、視聴者の注目を集めるために過激さを追求した結果、炎上するにとどまらず、警察の捜査対象となり、実際に逮捕・起訴されるケースも生じています。

 法律上の視点から見ると、クリエイティブな「演出」であったとしても、それが「犯罪行為」に該当する場合は実際に存在します。

 「知らなかった」「悪ふざけだった」「そんなつもりはなかった」という法律の不知は、許されません。本記事では、企画段階でクリエイターが必ずチェックすべき刑法・軽犯罪法のポイントを解説します。



1. その企画、誰かの業務を妨害していませんか?-業務妨害罪について

 有名店に突撃したり、ドッキリを仕掛ける企画は人気がありますが、ある企画を遂行した結果、第三者であるお店や企業の業務を妨害してしまうことがあります。

 この場合、実際に行われた行為にもよりますが、例えば、

  • ドッキリ企画でお弁当屋さんに1000個お弁当を注文したが、実際には購入する意図はなかった場合には「偽計業務妨害罪」
  • 有名店に事前のアポなく突撃し、店員にしつこくインタビューを行った場合には「威力業務妨害罪」

 上記のような刑法上の業務妨害罪(刑法第233条、第234条)に該当する可能性があります。

 刑法上、業務妨害罪に該当する「業務を妨害」する手段として、①「虚偽の風説を流布」すること、②「偽計を用い」ること、③「威力を用い」ることの3つが原則として想定されています。

  1. 「虚偽の風説を流布」することとは、客観的真実に反する噂・情報を不特定または多数の人に伝播させることをいいます。例えば、ミシンの販売修理業者が商売仇の甲社のミシン販売を妨害するため、架空人である商事会社の名義を用いて甲会社の販売する銘柄のミシンを、実際の販売価格よりも安価に販売するかのように偽って新聞広告をした行為について、裁判例上、虚偽風説流布業務妨害罪の成立が認められています。
  2. 「偽計を用い」ることとは、人を欺罔し、あるいは人の錯誤または不知を用いて人の業務を妨害することをいいます。例えば、中華そば店に多数回の無言電話をかける行為や、新聞社の経営者が、他紙の購読者を奪うため、自己の経営する新聞紙をその他紙に似せて改名し、題字その他の体裁も他紙に酷似させて発行した行為について、裁判例上、偽計業務妨害罪の成立が認められています。
  3. 「威力を用い」ることとは、人の意思を制圧するに足りる勢力を示すことをいいます。この「威力」とは比較的広い概念ですので、例えば、飲食店で蛇をまきちらす行為、弁護士から重要な書類が入ったカバンを奪い取り自宅に隠した行為などについて、裁判例上、威力業務妨害罪の成立が認められています。


 上記の業務妨害罪が成立する場合、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

 計画中の企画が第三者の業務を妨害することにならないように、

  • 店舗訪問を行い、店舗内に「店内撮影禁止」と書かれていないか確認する
  • 店舗の公式HPやSNSをチェックし、取材時の事前相談や事前受付、店内撮影可否についての対応について記載がないか、確認する
  • 店舗に事前に連絡し、取材許可を得る(アポ取り)
  • 取材前に、NG行為、NG質問を聞いておく
  • 取材許可を得た場合にも、最小限の人数・器具で、店舗が比較的空いている時間帯に訪問する

等の礼節を持った行動を行うようにしましょう。



2. その建物、本当に入って大丈夫ですか?―建造物侵入罪について

 歴史的建造物、廃墟、深夜の学校など、刺激的な建造物に「行ってみた」企画は視聴者の目を引く企画の1つです。他人が住んでいる家にこっそり入ることは住居侵入罪に該当しアウト、と認識している人が多いと思いますが、誰も住んでいない建物であれば自由に出入りしても違法ではないというわけではありません。

 本来は立ち入りに許可が必要であるにもかかわらず、事前に管理者の許可を得ずに立ち入ることは、建造物侵入罪(刑法第130条)に該当する可能性があります。

 

 建造物侵入罪は、①人の看守する建造物に、②正当な理由がないのに侵入することで成立します。

  1. 「人の看守する」とは、他人が事実上管理・支配していることをいいます。具体的には、管理人や看視者を置く、鍵をかけている等、何らかの設備がある場合が該当します。「建造物」とは、住居・邸宅以外の建物を指し、学校や工場、倉庫、寺社仏閣など様々な建物を指します。
  2. 「侵入」とは、その建造物を看守する者の意思に反する立ち入りをいいます。「正当な理由がない」とは、例えば、警察官による捜索令状に基づく立ち入りのように、法令行為に基づく理由がある場合などには、当該侵入について正当な理由があるとして、当該侵入の違法性が阻却される場合があります。


 上記のとおり、人が住んでいない建物だから許可を取らずに入っても大丈夫、というわけではなく、「人の看守する」建造物であると言える場合には、許可なく立ち入ることは「侵入」に該当することになります。

 建造物侵入罪が成立する場合、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処せられる可能性があります。建物の見た目だけで判断せず、建物の管理者などが書いた看板や貼り紙がないか探す、行政機関の管理下の建物ではないか問い合わせするなどして、事前に許可取りをする必要性を十分に確認しましょう。



3. 見落としがち!その行為、アウトではありませんか?-軽犯罪法違反

 犯罪行為を取り締まる法律は刑法以外にもありますが、その中でも、クリエイターが特に知っておきたい法律として軽犯罪法があります。

 軽犯罪法は、国民の日常生活における卑近な道徳律に違背する比較的軽微な犯罪について取り締まる法律であり、クリエイターがチャレンジしたい「攻めた」企画が違法ではないか?を検討する際に確認したい法律の1つです。軽犯罪法は合計33の罪を規定しており、中には、刑法に規定されている罪の軽微なものを取り締まるものもあります。

 ここでは、特にクリエイターに気を付けていただきたい3つの類型を紹介します。

  1. 【粗野乱暴の罪】
    軽犯罪法第1条第5号は、「公共の会堂、劇場、飲食店、ダンスホールその他公共の娯楽場において、入場者に対して、又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、飛行機その他公共の乗物の中で乗客に対して著しく粗野又は乱暴な言動で迷惑をかけた者」には拘留または科料を科す旨を規定しています(「粗野乱暴の罪」)。「迷惑をかけた」とは、人を困らせ、不快に思わせたことを指すとされていますので、企画が公共の娯楽場や乗り物内での迷惑行為に該当しないか、十分に確認しましょう。
  2. 【静音妨害の罪】
    軽犯罪法第1条第14号は、「公務員の制止をきかずに、人声、楽器、ラジオなどの音を異常に大きく出して静穏を害し近隣に迷惑をかけた者」には拘留または科料を科す旨を規定しています(「静音妨害の罪」)。「音」には、条文上の例示以外に、カラオケや自動車等の警笛、犬のほえる声などが含まれ、「異常に大きく」とは社会通念上相当とされる以上の音量を、「静穏を害し」とは周囲の静けさを乱すことをいうとされていますので、例えば深夜に大きな音を出す企画などは当該行為に該当する可能性があることを認識しておきましょう。
  3. 【追随等の罪】
    軽犯罪法第1条第28号は、「他人の進路に立ちふさがって、若しくはその身辺に群がって立ち退こうとせず、又は不安若しくは迷惑を覚えさせるような仕方で他人につきまとった者」には拘留または科料を科す旨を規定しています(「追随等の罪」)。この罪は、他人の進路に立ちふさがったり立ち退こうとしないことにより行動の制限をしたり、不安や迷惑を感じさせるような方法で執拗に付きまとうなど、当事者が対応に困るような行動を取り締まっていますので、特定の人をターゲットとして過度に話を聞こうとする行為などは当該行為に該当する可能性があることを認識しておきましょう。



4. まとめ

 クリエイターにとっては、視聴回数や「バズ」を追求する姿勢を持つことは当然のことですが、法的リスクを軽視することは、自身の社会的信用だけでなく、取引先からの多額の賠償金や刑事罰を招くことにもつながりかねません。

 斬新な企画を世に出す前に、まずは一歩立ち止まり、「これは違法性のある行為ではないか」を自問自答してください。

 違法性について不安が残る場合や、専門家の意見が知りたい場合は、一人で悩まずに、ぜひ弁護士への相談を検討してください。


GVA法律事務所のメタバース・エンターテインメントチームは、インフルエンサーや動画クリエイター、VTuber/Vライバーのトラブル解決実績を豊富に有する弁護士で構成されています(女性弁護士も在籍)。
各種企画のリーガルチェックから、実際にトラブル化した場合まで幅広く対応しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください



監修
弁護士 箕輪 洵
(スタートアップ企業を中心に、上場企業から中小企業まで企業法務を幅広く対応。知的財産法を得意とし、特にメタバース法務、エンターテインメント法務に注力。)

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