【タイ リーガルコラム】タイにおける付属定款の意義と作成時の注意点

【タイ リーガルコラム】タイにおける付属定款の意義と作成時の注意点

弁護士 藤江 大輔/Daisuke Fujie

弁護士 靏 拓剛/Takuma Tsuru

 

 

今回は、定款の役割について取り上げます。定款は会社の運営にあたって極めて重要な役割を果たすため、その内容や取扱いには十分に配慮しなければなりません。

 

二種類の定款

タイで会社を設立する場合、定款を作成しなければならないことは、日本と共通です。
しかしながら、日本で定款といえば一種類しかないのに対し、タイでは、基本定款と付属定款の二種類があります。そして、このうち会社の運営に直結するのが、付属定款です。
まず、基本定款は、会社設立時に作成が義務付けられていますが、会社の名称、本社の住所や事業の目的等といった基本的事項を定めるものであって、会社のルールを定めるものではありません。
他方、付属定款は、法的には作成が義務付けられていないものの、株主総会や取締役会の運営方法、取締役の人数など会社運営に関するルールを定めるものです。それゆえ、タイで会社を設立する場合には、基本定款とともに付属定款を作成しておくケースがほとんどです。
なお、付属定款を作成しない場合、民商法の規定に従って会社を運営することとなりますが、民商法には内容が不明瞭な部分も存在するため、付属定款を作成してルールを明確化しておくことが望ましいです。

 

 

付属定款の重要性

付属定款の作成や作成後の会社の運営に際して、何よりも気をつけておかねばならないのは、付属定款に定められたルールが会社の根本的なルールになる、ということです。
つまり、付属定款に定められたルールは、民商法(強行法規を除く)や、他の会社の諸規則(社内規程)に優先します。したがって、例えば付属定款の内容と取締役会規程の内容が食い違う場合には、取締役会規程ではなく付属定款に沿って取締役会を構成、運営しなければなりません。

 

 

付属定款で定めるか否か検討すべき事項

付属定款で定めるか否か、定めるとしてどのような内容とするかを検討すべき事項としては、例えば、株式の譲渡制限、株主総会における議決権の行使、取締役会の決議事項が挙げられます。
まず、民商法上、株式は譲渡自由とされていますが(1129条1項)、事前に取締役会での承認を得るべきこと等を付属定款に定めることによって、株式の譲渡を制限することができます。
次に、民商法上、株主総会では株主一人一票の挙手による投票が原則とされていますが(1182条)、付属定款の定めにより株式数に応じた投票とすることができます。
また、民商法上、取締役会で決議すべき事項に関する規定がないので、各取締役の独断による業務の遂行を予防するという観点から、取締役会で決議すべき事項を付属定款で定めることも検討すべきです。

 

 

付属定款への十分な配慮の必要性

以上のような付属定款の役割や重要性にもかかわらず、会社を設立する過程では、資金調達など他にも検討し処理しなければならない事項が多いことがあります。
十分な吟味を経ないままに付属定款を作成してしまい、結果として、後々、会社の実態と付属定款の規定が噛み合わない事態に陥ることがあります。

 

なお、タイの商務省は、付属定款の雛形をインターネット上で公開していて、この雛形を利用される企業は少なくありませんが、この雛形には上で述べたような検討事項についての定めはありません。そのため、「雛形を使っておけば」と安直に考えてしまうことには、少なからずリスクがあることを理解していただければと思います。

 

また、日本からタイの会社に赴任してきた役員や従業員が、付属定款の存在や内容について知らないまま、付属定款の規定と合致しない業務の決定や執行に及んだり、付属定款の規定に合致しない内容の社内規程を整備したりして、後日トラブルを招くこともあります。
したがって、タイで会社を設立するときには、どのような内容の付属定款にするか慎重に吟味すべきですし、日本からタイの会社に赴任したときには、まず付属定款の内容を十分に把握し、付属定款の規定に沿って業務を進めるよう注意しなければなりません。

 

 

以上

 

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