中国EC法解説 中国越境ECに対する影響及びその留意点について

中国EC法解説 中国越境ECに対する影響及びその留意点について

中国弁護士(Not admitted in Japan)李 昱昊

 

■1.はじめに

中国のインターネットユーザー数が2018年6月時点で8億人を超えるといわれ(※1)、 中国のEC(Electronic Commerce、電子商取引)市場も2017年度の総取引額29兆1,600億人民元(約467兆円)までに達し、巨大な規模に成長を遂げてきています(※2)。

 

その一方、急激なECの増大は数々の問題を生んでいます。 例えば、ECによる偽物品の販売の増加、個人バイヤーの脱税営業、ECプラットフォーム事業者と出店者の法的関係性が不明確なこと及び急増する一般消費者のクレームなどの例が挙げられます。

 

このような背景の中で、中国全人代常務委員会は、2013年12月に中国EC法(※3)の立法作業に着手し、数年間にわたって検討を続けた結果、2018年8月31日に開催された全国人民代表大会で同法が可決され、2019年1月1日に施行されました。

 

同法は、ECに特化した法律として初めて立法されたものであり、近年においてECに関して顕著化した諸問題に対応する基本ルールを網羅的に制定するような基本法的な構成となっています。今年1月からの同法施行後、4月からは徐々に法律を遵守しない企業の取り締まりが強化されている傾向が見られます。

 

本稿において、中国EC法(以下においては、「本法」といいます。)にて制定されたルールの概要を紹介するとともに、本法の施行により、中国に対する越境ECビジネス、及び中国でECビジネスを展開する企業に対してどのような影響を与えるかを分析していきたいと思います。

 

 

■2.適用範囲

本法第2条の定めによると、中華人民共和国国内における電子商取引活動は、本法が適用されます。また、「電子商取引」の定義については、「インターネット等の情報ネットワークを通じて商品販売やサービス提供を行う経営活動を指す」(法第2条を参照)と規定されています(※4)。この定義には明確に記載されていませんが、中国国内において「電子商取引」を行っているのはもちろんのこと、中国国外で中国国内の消費者に向けて「電子商取引」を行っている事業者にも適用される可能性があると思われます。

 

本法は、「インターネット等の情報ネットワークを通じて、商品販売又はサービス提供等の経営活動に従事する自然人、法人及び非法人組織」(法第9条を参照)を「EC経営者」と総称して本法規定の適用対象としており、さらに、「EC経営者」を以下のように分類して、ルールを定める構図になっています。

  1.ECプラットフォーム経営者

  2.ECプラットフォームに出店する経営者

  3.自社または個人サイト等で商品販売を行う者

 

つまり、Alibaba(阿里巴巴)やJD.com(京東)といった有名な大手ECプラットフォームや、プラットフォームに出店しているEC事業者、またはWeChat(微信)のようなSNSにおいてEC販売を行っている者等が、法人か個人かにかかわらず、また、規模の如何にかかわらず、全て上記の分類に当てはめられ規制対象となります。

 

日本企業でこの法律が適用されるのは、中国のECプラットフォームに出店している事業者及び中国現地でEC事業を運営している事業者が多いと思われます。

 

 

■3.EC経営者の主要な義務

本法は、上記分類のもと、「EC経営者」に対する規制について、二段階で定める構成をとっています。すなわち、第一段階として、全てのEC経営者が共通に遵守しなければならない項目について第10条から26条で定め、第二段階として、ECプラットフォーム経営者に課している特別の義務について第27条から46条において規定しています。

 

この理由について、立法担当者は、中国のEC産業における関係者のうち、消費者が一番弱い立場にあり、その次がEC事業者(※5)であり、ECプラットフォーム事業者(※6)が最も強い立場にあるといった背景があります。本法において、EC事業者に対して一般的な義務を課す一方、ECプラットフォーム事業者による責任と義務を特に強化することによって、上記関係者間でのバランスを取ることにあると説明しています(※7)。

 

以下において、EC経営者とECプラットフォーム経営者に対する規定項目の概要をまとめておきます。

 

EC経営者に関する項目(参考条文番号順で列挙します。)

 

 

条文番号

規定内容の概要

第10条

市場主体登記義務及び市場主体登記義務の除外規定。

第11条

法に従って納税する義務及び税収優遇を受ける権利。
税務登記申請義務及び納税申告義務。

第12条

経営活動従事にあたっての行政許可取得義務。

第13条

商品・サービスに関する人身・財産安全保障及び環境保護の要求適合義務。
取引禁止商品・サービスに対する販売・提供禁止義務。

第14条

発票・電子発票等の書面による購入証明書・サービス伝票の発行義務。

第15条

ホームページに営業許可証情報・経営業務に関連する行政許可情報又は情報のリンク標識を継続公示する義務。
公示情報の更新義務。

第16条

電子商取引中止の場合の30 日前からの関連情報公示義務。

第17条

商品・サービス情報のすべてを、虚偽なく、確実に、適時に開示する義務並びに消費者の知る権利及び選択権の保障義務。
架空取引、ユーザー評価捏造等の方法による虚偽・誤解を招く商業宣伝の禁止義務。

第18条

消費者の特徴によって消費者に商品又はサービスの検索結果を提供する場合、当該特徴に応じていない選択の同時提供義務。

第19条

抱き合わせ販売にあたっての消費者喚起義務及びデフォルト選択禁止の義務。

第20条

合意した方法・期限による商品・サービスの交付義務及び商品輸送リスク・責任の負担義務。

第21条

保証金返還方法・手続の明示義務及び保証金返還についての不合理条件設定禁止義務。

第22条

市場支配的地位の濫用禁止、競争排除・制限禁止義務。

第23条

ユーザー個人情報の収集・使用にあたっての個人情報保護関連法規遵守義務。

第24条

ユーザー情報の閲覧・訂正・削除及びユーザー登録抹消の方法・手続きを明示する義務並びにユーザー情報の閲覧、訂正、削除及びユーザー登録抹消に対する不合理条件設定禁止義務。

第25条

関連電子商取引データ情報の関係当局に対する提供義務。

第26条

越境ECを行う場合、輸出入監督管理の法律、行政法規及び関連規定の遵守義務。

ECプラットフォーム経営者に関する項目(参考条文番号順で列挙します。)

条文番号

規定内容の概要

第27条

出店申請するEC経営者に対する身分情報・行政許可情報等の情報提出の要求義務。
当該情報の審査・登記・定期的審査・更新義務。

第28条

市場監督管理当局にプラットフォーム内経営者の身分情報を送付する義務。
市場主体登記をしていない経営者に対する注意喚起義務。
税務当局にプラットフォーム内経営者の身分情報と納税に関する情報を送付する義務。
市場主体登記を必要としないEC経営者に対して税務登記を行うよう注意する義務。

第29条

無許可・違法・禁止の商品・サービスを発見した場合、法に従い必要な処置措置を講じ、関係主管当局に報告する義務。

第30条

ネットワークの安全・安定稼働の保障義務、ネットワーク上違法・犯罪行為の予防義務及び電子商取引の安全を保障する義務。
ネットワークセキュリティ事件緊急対策制定義務並びにネットワークセキュリティ事件発生時の緊急対策実施義務及び関係主管部門への報告義務。

第31条

プラットフォームに掲載された商品・サービスの情報・取引情報の記録・保存の義務及びその情報の完全性・機密性・有用性を確保する義務。

第32条

プラットフォームにおける出店と閉店、商品・サービスの品質保障、消費者権益保護、個人情報保護等における権利と義務を明確にするように、公開・公平・公正の原則に従い、プラットフォーム利用契約・取引ルール(以下、合わせて「利用ルール」といいます。)を制定する義務。

第33条

ホームページの目立つ位置に、利用ルール又はそのリンク標識を継続公示する義務。

第34条

利用ルールを改正する際に、ホームページの目立つ位置で意見公募を実施し、各方に意見を適時かつ十分に表明できるよう確保する義務。
プラットフォーム内経営者が改正内容を受け入れずに退店を要求した場合において、その退店の阻止の禁止。

第35条

取引・取引価格等について不合理制限・不合理条件付加の禁止義務。
プラットフォーム内経営者に対する不合理な費用の徴収禁止義務。

第36条

プラットフォーム内経営者の法律、法規違反行為に対して制限措置を講じる場合、直ちに公示する義務。

第37条

プラットフォーム内で直接販売を展開する場合、直接販売業務とプラットフォーム内経営者が展開する業務を区分表示し、消費者を誤認させない義務。

第38条

プラットフォーム内経営者の商品・サービスが人身、財産安全保障の要求に適合しないこと又は消費者の合法的権益の侵害行為があることを知り又は知るべきであったにもかかわらず、必要な措置を講じていなかった場合、当該プラットフォーム内経営者と連帯責任を負う。
消費者の生命健康に関わる商品・サービスについて、プラットフォーム内経営者の資格審査義務・消費者安全保障義務を怠って消費者に損害を与えた場合、相応する法的責任を負う。

第39条

信用評価制度の構築・健全化義務、信用評価の公示義務、商品・サービスに対する評価手段の提供義務。
商品・サービスに対する評価の削除禁止義務。

第40条

商品・サービスの価格、販売数、信用等に基づき、多様な検索結果を表示する義務。
検索連動型広告の商品・サービスについては、「広告」と明記する義務。

第41条から第45条

筆者注:後述するように、第41条から第45条においては、知的財産権保護に関するECプラットフォーム経営者の義務及び知的財産権侵害事件の処理方法を定めています。

 

 

■4.中国越境ECビジネス及び関連企業に対する影響

【1】越境代理購入に対する影響

EC法が成立した際に、中国国内で一番話題になっていたのは、本法の成立による越境代理購入への影響だといえます。中国の越境代理購入(中国語の略称では「代購」といいます。)は、消費者本人が欲しい商品を海外で代理購入することを業者もしくは個人に依頼して、それに対して商品代金及び代理購入手数料を支払うのが一般的なビジネスモデルとなっています。最初は零細のビジネスでしかありませんでしたが、2008年に起きた中国国産の毒粉ミルク事件の影響で、幼児のいる家庭での代理購入による海外産粉ミルクの購入増加を機に、代理購入ビジネスが一気に成長してきました。EC法が成立した際に、中国国内で一番話題になっていたのは、本法の成立による越境代理購入への影響だといえます。中国の越境代理購入(中国語の略称では「代購」といいます。)は、消費者本人が欲しい商品を海外で代理購入することを業者もしくは個人に依頼して、それに対して商品代金及び代理購入手数料を支払うのが一般的なビジネスモデルとなっています。最初は零細のビジネスでしかありませんでしたが、2008年に起きた中国国産の毒粉ミルク事件の影響で、幼児のいる家庭での代理購入による海外産粉ミルクの購入増加を機に、代理購入ビジネスが一気に成長してきました。EC法が成立した際に、中国国内で一番話題になっていたのは、本法の成立による越境代理購入への影響だといえます。中国の越境代理購入(中国語の略称では「代購」といいます。)は、消費者本人が欲しい商品を海外で代理購入することを業者もしくは個人に依頼して、それに対して商品代金及び代理購入手数料を支払うのが一般的なビジネスモデルとなっています。最初は零細のビジネスでしかありませんでしたが、2008年に起きた中国国産の毒粉ミルク事件の影響で、幼児のいる家庭での代理購入による海外産粉ミルクの購入増加を機に、代理購入ビジネスが一気に成長してきました。

 

さらに、越境代理購入は、実体店舗や営業許可取得、輸出入登録手続きなどを経なくても、「微信」等のSNSを利用するだけで販売することができ、参入ハードルが非常に低いものでした。そのため、随意に代理購入を行うマイクロバイヤーから年商数百万人民元の大型代理購入バイヤーまで積極的に参入し、越境代理購入ビジネスの規模が数年の間でますます巨大化してきました。

 

しかし、この状況はEC法の成立により一変しました。前述のように、本法は、個人・法人・非法人組織にかかわらず、EC営業者に対して登記の義務を定めています(法第9条を参照)。つまり、代理購入バイヤーは、登記や営業許可取得、納税等の関連義務を果たさなければならず、これらの義務を果たさずに代理購入業を行うことが違法となることが明確になりました。本法の成立とほぼ同時期に、中国の空港で税関が代理購入への荷物検査を厳格化する動きがあったということが報じられ、その中には、上海浦東空港であらゆる旅行者の荷物を開き検査に行列ができて、大量に持ち込まれた粉ミルク、コスメ、電気製品などの商品が罰金対象物品として厳格に取り締まりを受ける光景が報道されていました。

 

今までのように簡単に販売することが困難になったため、越境代理購入ビジネスが完全に消える可能性があるほど、大きな打撃を受けたことが中国メディアで報じられています。実際にEC法が施行された今年1月に入ってから、大阪市内の百貨店の免税品販売が急激に減少し、ある店舗では1月の販売額が前年同期比で2~3割減少したと日経新聞が報道しています。このように、同法は日本のインバウンド市場にも影響を及ぼしています(※8)。

 

【2】ECプラットフォーム上の偽物への対処

中国 EC プラットフォームにおける日本企業製品を含めた模倣品の売買は、深刻な問題となっています。自社製品の偽物を中国のEC プラットフォームに発見した際に、販売者に直接権利を主張しても、販売者が応じてくれなければ実効性が乏しいです。一方、EC プラットフォーム経営者は、直接偽物を販売していないとはいえ、ECプラットフォームの運営において多大な影響力を持つため、ECプラットフォームにおける模倣品の大量販売に関して管理責任があると考えられています。

 

EC法では、こういったEC産業の構造の特徴を踏まえて、知的財産権保護に関して、ECプラットフォーム事業者に対し、より重い義務を課すと同時に、知的財産権侵害の申出があった際の処理方法を定めています。

 

この規定は、知的財産権が侵害される日系企業の立場から見れば、訴訟等の法的手段に先立つ権利保全手段としても利用できる一方、ECプラットフォーム経営者自体に対する権利の主張及び損害の賠償請求の手段としても考えられます。

 

本法は、知的財産権者からECプラットフォーム経営者に対して権利侵害の申し出があった場合の処理手順を定めています。例えば、知的財産権利者が、知的財産権が侵害されたと判断した場合、ECプラットフォーム経営者に対して必要措置を講じるよう通知する権利を有します。 また、ECプラットフォーム経営者が、当該通知を受け取った後、必要な措置を講じ、プラットフォーム内のEC経営者に通知を転送する義務があります。さらに、ECプラットフォーム経営者は、その義務を怠った場合、拡大した損害に対し権利侵害の疑いのあるEC経営者と連帯責任を負うこととなっています。(法第41条から第45条を参照)

 

また、本法は、知的財産権者からの申し出がなくても、ECプラットフォーム経営者に対して一般的な知的財産権侵害防止義務を課しています。つまり、ECプラットフォーム経営者は、プラットフォーム内のEC経営者が知的財産権を侵害していることを知り又は知るべきであった場合、リンク削除、遮蔽、切断、取引・サービス終了等の必要な措置を講じなければならないと定められています。さらに、ECプラットフォーム経営者は、必要な措置を講じていなかった場合は、侵害者と連帯して責任を負うとされています。(法第45条を参照)

 

本法の罰則においては、上記義務を怠ったECプラットフォーム経営者に対し、多額の過料を科す規定をも設けています。ECプラットフォーム経営者は、知的財産権の侵害行為に対して必要な措置を講じなかった場合、知的財産に関連する行政部門から期限付きの是正命令を受け、期限内に改善できないときには、5万人民元から50万人民元まで(約75万円から750万円)(情状が著しく重い場合には50万人民元から200万人民元まで)(約750万円から3000万円)の過料が科されるとされています。(法第84条を参照)

 

【3】個人情報の取り扱い

個人情報の取り扱いに関して、本法においては、EC経営者におけるユーザー情報の閲覧・訂正・削除及びユーザー登録抹消の方法・手続きを明示する義務並びにユーザー情報の閲覧・訂正・削除及びユーザー登録抹消に対する不合理条件設定禁止義務、及び関係当局の要求に応じてEC経営者における関連電子商取引データ情報の提供する義務などが明文で規定されています。(法第24条、第25条を参照)。

 

以前、EC分野においては、個人情報の取り扱いに関する法律の規定が整備されていませんでした。2017年6月1日から施行された「中国サイバーセキュリティ法」においては、個人情報保護に関して基本的な規定が設けられるようになりました。同法第43条においては、 個人は、一定の場合、ネットワーク運営者に当該個人の個人情報の削除、訂正を要求できる権利を定めています。(中国サイバーセキュリティ法における個人情報に関する詳細の解説は拙作「「中国サイバーセキュリティ法」要点解説(3)」(※9)をご参考ください)。

 

それに対して、本法においては、ECビジネスの特徴を鑑み、EC経営者に対して、個人情報及びユーザー情報の取り扱いに関する義務が強化されたといえます。さらに、EC事業者が上記義務に違反した場合、市場監督管理当局から期限を定めた是正命令を命じられ、また、1万人民元以下の過料が科される可能性があります(法第76条1項を参照)。

 

【4】その他の留意点

以下では、EC法の規定に合わせて、中国ECプラットフォームに出店している日本企業が留意すべきいくつかの点をまとめて説明します。

 

(1)情報開示義務

EC経営者はそのホームページの目立つ位置に、営業許可証情報、経営業務に関連する行政許可情報等の状況に該当する情報、又は上記情報のリンク標識を継続的に公示しなければならず、また、自ら電子商取引を止めようとする場合、30 日前からホームページの目立つ位置に関連情報を継続的に公示しなければならない(法第15条、第16条を参照)。

 

EC経営者が上記義務に違反した場合、市場監督管理当局から期限を定めた是正命令を命じられ、1万人民元以下の過料が科される可能性があります(法第76条1項を参照)。

 

(2)虚偽宣伝の禁止

本法は、EC経営者は、商品又はサービス情報を全面的、切実、確実かつ適時に開示し、消費者の知る権利と選択権を保障しなければならないと義務付け、EC経営者は架空の取引、ユーザー評価の捏造等の方法によって虚偽又は誤解を招く商業宣伝をすることによって、消費者を欺瞞し、誤解させてはならないと定めています(法第17条を参照)。さらに、第85条の規定において、EC経営者は、虚偽又は誤解を招く商業宣伝等によって不正競争行為を実施した場合、関連法律の規定に従い処罰されると定めています。

 

そもそも、架空の口コミや虚偽のユーザー評価、虚偽宣伝等の行為に関しては、その具体的な態様に応じて、中国の「不正競争防止法」、「消費者権益保護法」または「広告法」においてはすでに関連の禁止規定が設けられていますが、EC法において当該禁止規定を明文に定めることはEC商取引に関する上記の違法行為への規制をさらに強化する意図があると思われます。

 

(3)抱き合わせ販売の禁止

本法は、EC経営者は商品又はサービスを抱き合わせ販売するにあたって、目立つ方法で消費者に注意しなければならず、商品又はサービスの抱き合わせ販売をデフォルト選択としてはならないと規定しています(法第19条を参照)。

 

EC経営者が上記に違反した場合、市場監督管理当局から期限を定めた是正命令を命じられ、違法所得を没収され、さらに、5万人民元から20万人民元(約75万円から300万円)まで(情状が著しく重い場合には20万人民元から50万人民元まで)(約300万円から750万円まで)の過料が科される可能性があります(法第77条を参照)。

 

中国では、抱き合わせ販売の問題が従来から存在しており、近年のEC商取引においては、特に旅行商品において顕著化しています。例えば、旅行商品の予約サイトで、宿泊プランや航空券を予約する際に、高額の食事・送迎・保険などのプランがデフォルト選択として設定されて、その料金も加算され、消費者が知らぬ間に当初予約した料金より相当高い料金を請求されるケースがしばしばありました。それを受けて、デフォルト設定としての抱き合わせ販売を厳しく禁止する上記規定が設けられたと考えられます。

 

 

■5.終わりに

今年から中国EC法が施行された後、上記の点を含めて、中国主管当局による検査および取締りが強化されつつあり、ECプラットフォームにおいても、違法行為を発見した場合の対処が厳格化しています。中国においてEC商取引を行っている、または行おうとしている日系企業は、中国EC法の動向を十分留意し、EC法に対応できる体制の確認と管理の徹底を改めてすることが望まれます。

 

 

(※1)
「中国のインターネット利用者が初めて8億人を突破」(https://www.jetro.go.jp/biznews/2018/09/ee0f32ef741539d9.html)をご参照。

(※2)
中国電子商務協会(EC協会)が発表した「中国EC発展報告2017~2018」(《中国电子商务发展报告2017-2018》)をご参照。

(※3)
中国語の正式名称は「中華人民共和国電子商務法」(中华人民共和国电子商务法)であり,「中国電子商取引法」と訳すこともあります。

(※4)
ただし、「金融類製品とサービス、情報ネットワークを利用してニュース情報、音声・映像番組、出版及び文化製品等のコンテンツを提供するサービス」は、除外されています。

(※5)
筆者注:本法における「EC経営者」に該当します。

(※6)
筆者注:本法における「ECプラットフォーム経営者」に該当します。

(※7)
全人代財経委員会副主任尹中卿氏による記者会見の内容(全国人大常委会办公厅2018年8月31日新闻发布会实录)を参照(http://finance.sina.com.cn/roll/2018-08-31/doc-ihinpmnq8481557.shtml)

(※8)
「1月の関西百貨店、減収広がる免税品おちこむ」をご参照。(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40787940R00C19A2LKA000/)

(※9)
「中国サイバーセキュリティ法」要点解説(3)(https://gvalaw.jp/8224)

 

 

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