フィリピン改正会社法における一人会社(OPC)規制の概要

フィリピン改正会社法における一人会社(OPC)規制の概要

今般、フィリピンにおいて共和国法11232(以下「改正会社法」といいます。)が施行され、会社法が大きく改正されました。改正会社法においては、これまで禁止されていた一人会社(以下「OPC」といいます。)の設立が許容されており、フィリピンにおいて法人をより簡易に設立することができるようになりました。

 

OPCに関しては、原則として自然人のみが設立可能とされている(第116条)等、一定の制限がありますので注意が必要です。

 

本稿では、OPCに関する改正会社法の概要を以下に掲載いたします。

 

会社法(1980年)

改正会社法

発起人の数及び資格(第10条)

・フィリピンの居住者が過半数を占める5人以上15人以下の、法律上成年である自然人

 

・株式会社の各発起人は、当該会社の株式資本の少なくとも1株を所有するか又は当該株式の引受人でなければならない。

 

 

(発起人の数及び資格)(第10条)

・個人、組合、団体又は法人は、単独で又は他者と共同で(共同の場合発起人の数は15を超えてはならない。)設立することが可能。

 

・自然人である発起人は、法律上の成年でなければならない。

 

・株式会社の各発起人は、当該会社の株式資本の少なくとも1株を所有するか又は当該株式の引受人でなければならない。

 

取締役の数(第14条) 

・5名以上15名以下

 

・取締役の過半数はフィリピン居住者(第23条)

取締役の数(第13条)

15名以内

 

(以下新設)

OPCの設立(第116条)

・自然人、信託財産(trust)又は財団のみがOPCを設立することができる。

 

(参考) SEC MEMORANDUM CIRCULAR NO.7 Series of 2019GUIDELINES ON THE ESTABLISHMENT OF A ONE PERSON CORPORATION(OPC)”(以下「SECガイドライン」という。)第1条によると、「Trustとは、Trusteeによって管理される対象を指し、Trust Entityでない。」とされているため、ここでは、trustを「信託財産」とした。

 

・銀行、ノンバンクフィナンシャル会社、準銀行、プリニード、信託、保険、公開会社、上場会社、国有企業(特別な法律によって設立されたものではないもの)(non-chartered government-owned and -controlled corporations)はOPCを設立できない。

 

・専門職としてライセンスを受けている自然人は、特別法の定めがない限り、当該専門職を行う目的でOPCを設立することができない。

OPCの最低資本金(第117条)

特別の法律に別段の定めがある場合を除き、OPCに関し最低資本金に関する規制はない。

OPCの定款(第118条)

OPCを設立する場合、以下各号要件に従い、会社法第14条に規定する定款を提出しなければならない。

(a)単独株主が信託財産又は財団である場合、受託者、管理者、執行者、後見人その他信託上の義務を遂行する者の名称、国籍及び住所並びに当該信託財産又は財団を代表する権限を証する証拠

(b)被指名人及び代理被指名人の氏名、国籍及び住所並びに権限の範囲及び制限

※会社法14条に定款のフォーム有

OPCの会社細則(Bylaws)(第119条)

OPCは、会社細則(Bylaws)を提出する必要はない。

OPCの商号表示(第120条)

OPCは、その名称の下又は末尾に「OPC」の文字を表示しなければならない。

OPCの代表取締役(第121条)

OPCの単独株主は、当該法人の唯一の取締役及び社長とする。

OPCの財務役、秘書役等(第122条)

・認証された定款の発行から15日以内に、OPCは、財務役、秘書役その他必要とされる役職にあたる者を選任し、SECに選任から5日以内に通知しなければならない。

 

・単独株主は、秘書役に就任することができない。

 

・単独株主が財務役を兼任する場合、要求される金額の保証金(金額は下表)をSECに支払わなければならない。ただし、当該財務役兼任単独株主は、書面において、財務役として受取り、又は支出し、投資するOPCの資金を、SECに認証された定款に従い、忠実に管理することを引き受けなければならない。

 

・当該保証金は、要求される都度又は2年毎に更新されなければならない。

 

(参照)保証金金額表(SECガイドライン第10条)

ACSAuthorized Capital Stock(授権資本金)

OPCの秘書役の特別の職務(第123条)

OPCが定める業務のほか、業務執行者は、次に掲げる業務を行う義務を負う。

(a)会社の議事録又は記録を管理すること

(b)単独株主の死亡又は無能力(incapacity)に関して、被指名人又は代理被指名人に通知すること。なお、当該通知は、当該事情が発生してから5日以内にされなければならない。

(c)当該事情の発生から5日以内に、単独株主の死亡につきSECに通知し、また当該通知にすべての知れたる法定相続人の名前、住所及び連絡先の詳細を記載すること

(d)被指名人、代理被指名人及び知れたる法定相続人を招集し、また、新取締役の選任、定款の変更及びその他の付随的又は派生的事項につき法定相続人に通知すること

被指名人及び代理被指名人(第124条)

・単独株主は、被指名人及び代理被指名人を任命する。

 

・代理被指名人は、単独株主が死亡又は無能力(incapacity)となった場合、単独株主に代わって取締役となり、会社の業務を管理する。

 

・定款には、被指名人及び被指名人の氏名、住所、連絡先、OPCの業務の執行に関する権限の範囲及び制限を記載しなければならない。

 

・設立の申請書には、被指名人及び代理被指名人の書面による同意書を添付しなければならない。当該同意は、単独株主の死亡又は無能力(incapacity)の状況が生じるより前にいつでも書面において撤回することができる。

被指名人及び代理被指名人の期間(第125条)

・単独株主の無能力(incapacity)が一時的なものであるときは、被指名人は、当該株主が自己の決定によりその任務を引き受ける能力を回復するまで、その取締役となり、OPCの業務を管理する。

 

・単独株主が死亡し又は永久的に無能力(incapacity)となった場合、被指名人は、当該株主の法定相続人が合法的に決定され、その相続人が、相続人の中の一人を単独株主に指名するか、又は財団が単独株主となることに合意するまで、OPCの業務を運営する。

 

・被指名人が無能力(inabilityincapacity)、死亡又は会社の取締役若しくは経営者としての職務を遂行することを拒否した場合、被指名人に適用されるのと同一の期間及び条件に基づいてのみ、代理被指名人が取締役をつとめ、OPCを管理する。

被指名人及び代理被指名人の変更(第126条)

単独株主は、新しい被指名人の氏名及び書面によるそれに対応する旨の同意書をSECに提出することにより、いつでも被指名人及び代理被指名人を変更することができる。この場合においては定款の変更を要しない。

議事録(第127条)

OPCは、議事録を備置き、当該議事録には、OPCがとったすべての行為、決定及び決議が記載されなければならない。

会議に代わる記録(第128条)

何らかの事項に関して決議が必要な場合、単独株主が署名の上、日付を記載した決議書を作成し、OPCの議事録に記録すれば足りるものとする。議事録への記録日は、会社法に基づくすべての目的事項に関し会議がされた日とみなす。

報告(第129条)

・OPCは、SECが定める期間内に、次に掲げる書類を提出しなければならない。

(a)独立した公認会計士の監査を受けた年次財務諸表

ただし、会社の総資産又は総負債が60万ペソ未満である場合には、当該財務諸表は、財務役及び社長の宣誓に基づき証明される。

(b)監査した者が報告書において行ったあらゆる条件、留保又は不利な発言若しくは免責に関する社長の説明又はコメントを記載した報告書

(c)OPCと単独株主との間で締結されたすべての自己取引及び関連当事者間の取引の開示

(d)SECが要求するその他の報告書

 

・OPCの事業年度は、定款に定められた年度又はかかる定めがない場合には暦年とする。

 

・SECは、会社が5年以内に3回、連続又は断続的に本条に定める報告をしなかった場合、会社を報告遅滞と判断することができる。

単独株主の責任(第130条)

・有限責任を主張する単独株主は、会社に適切な資金が提供されたことを証明する責任を負う。

 

・単独株主が、OPCの財産と株主の個人財産とが独立していることを証明できない場合には、当該株主は、OPCの負債及び責任を、各自、又はOPCと連帯して負う。

 

・法人格否認の原理はOPCにも適用される。

普通法人からOPCへの組織変更(第131条)

単独の株主が普通株式会社のすべての株式を取得した場合、SECが要求する書類の提出を条件として、OPCへの組織変更を申請することができる。当該組織変更の申請が承認された場合、SECは、組織変更を反映する修正定款の提出証明書を発行するものとする。普通株式会社から組織変更されたOPCは、当該株式会社の普通株式会社を承継し、組織変更日に普通株式会社のすべての未払債務に対して法的責任を負うものとする。

OPCから普通株式会社への組織変更(132条)

・組織変更の事実及び当該組織変更に至った状況をSECに適切に通知し、かつ、他のすべての会社法上の要件及び適用可能な規則を遵守したことを条件に、OPCは普通株式会社に変更することができる。当該通知は、普通株式会社への組織変更に至った状況の発生から60日以内にSECに提出しなければならない。すべての要件が遵守されている場合、SECは組織変更を反映する改正された定款の提出に関する証明書を発行するものとする。

 

・単独株主が死亡した場合、被指名人又は代理被指名人は、相続人の宣誓供述書又は単独相続人による宣誓の受領又は単独株主の相続人を示すその他の法的文書の受領から7日以内に、株式を、正式に指定された適法な相続人又は財団に移転し、その旨SECに通知するものとする。当該株式の移転から60日以内に、法定相続人は、OPCの解散又は普通株式会社に組織変更する旨決定することをSECに通知するものとする。

 

・OPCから組織変更された普通の株式会社は、OPCを承継し、組織変更日現在のOPCが有する全ての未払債務に対し法的責任を負うものとする。

外国人(SECガイドライン15条)

外国籍の自然人はOPCを設立することができるが、外資規制を遵守しなければならない。

 

 

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