マレーシア腐敗行為防止法に基づく企業の責任

マレーシア腐敗行為防止法に基づく企業の責任

マレーシア弁護士有資格者(Not admitted in Japan)サイフル アジズ 、弁護士 鈴木 景

 

■はじめに

マレーシアにおける腐敗対策の法的枠組みは、2009年腐敗防止委員会法(MACCA)に準拠しています。MACCAは、他の領域におけるほとんどの腐敗行為防止法と同様に、民間部門の贈収賄と公務員の贈賄とを区別していません。
MACCAは、マレーシアで事業を展開する日本企業にも適用の可能性のある法律ですので、十分に注意が必要です。

 

 

■MACCAの原則

MACCAの下では、「腐敗行為」を行うことが固く禁じられています。
この「腐敗行為」には、贈賄など、個人の主要な業務に関連する行為を行うこと、または行わないことに対する報酬として、金銭やサービス等を提供する行為に加え、詐欺や、権力の濫用、マネーロンダリングなどが含まれるとされています。
「腐敗行為」を行った場合、20年以下の懲役、及び、贈収賄の金額の5倍若しくは10,000リンギットのいずれか高い方の罰金が課されることになります。

 

また、前記「贈賄」には、財産である金銭、寄付、贈与、融資、手数料、報酬、貴重な担保、財産または財産上の利益、オフィス、品位、雇用、雇用契約またはサービス、融資の支払い、免除、免責または清算、あらゆる種類の貴重な対価、あらゆる種類の金銭または価値のある物を要求する権利の放棄、あらゆる種類の他のサービスまたは優遇、ならびに当該満足の申し出、保証または約束が含まれるとされています。
したがって、金銭のみならず、債務の放棄や雇用といった一定の便益の提供も、MACCAの下では贈賄に該当し、「腐敗行為」として、刑罰の対象となりうる点に注意が必要です。

 

 

■MACCAにおける企業の責任

a)法律の改正

これまで、MACCAでは、個人が責任の主体とされてきましたが、平成30年のMACCAの改正により、従業員が行った腐敗行為について、企業に対する刑罰が制定されました(公布はされていますが、本執筆時点ではまだ施行されておりません)。
これにより、企業は、従業員の腐敗行為について、刑事上の責任を負う可能性があります。
例えば、企業の取締役や、支配人、役員、パートナー、会社を管理する者などが腐敗行為を行った場合、その企業自体も、MACCAにおける刑罰の対象となります。
これに対し、企業側は、従業員等が腐敗行為を行うことを防止するための適切な手続を整備していたことをもって、抗弁とすることができるとされています(この点についてのガイドラインが作成される予定ではありますが、本執筆時点では、まだガイドラインは作成されておりません)。

 

b)日本企業への影響

改正MACCAの下では、社員による腐敗行為について、会社の承認、権限、または会社の知らないところで行われたものであると主張することによって、会社が責任を免れることは困難です。
これらの状況を踏まえると、マレーシアに拠点を構える企業としては、企業自体に刑罰が課せられる状況に向かうことを想定し、従業員が腐敗行為を行わないよう、自社ルールの策定と運用を、これまで以上に厳格に行っていくことが必要となります。
具体的には、腐敗行為を防止し、発見し、これに対応するための内部統制システム、
例えば、内部通報の促進、リスク管理、ガバナンス、および会社の役員の監督手法などを整備することが望ましいと考えます。
また、これらに加えて、従業員への十分な研修といった、従業員の腐敗防止に対する意識の向上に資する取り組みを行うことも必要です。
加えて、特にマレーシアに子会社を設立した日系企業の場合、日本の本社においても、子会社コントロールの観点から、腐敗行為防止について、オーナーシップをもって取り組むことが重要と考えます。

 

 

■おわりに

このように、マレーシアでの腐敗行為について、法人の責任が定められる大きな改正がされました。この流れは、OECD贈賄防止条約に基づく国際的な義務に沿ったものであり、国際的な潮流に沿う対応であると思います。が、一方でこれにより企業が負担する責任は、以前よりも大きなものとなります。
施行までの猶予期間を利用して、今一度内部統制システムを検証いただくとよいかと考えます。

 

 

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