2019年注目の法改正

2019年注目の法改正

弁護士 神田 詠守

 

 

2019年以降に施行される法改正等を中心に、今後、対応が必要になる可能性が高い法改正等の概要について紹介します。

 

1.働き方改革関連法案

「働き方改革」を推進するため、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が2018年に成立し、労働基準法、労働安全衛生法、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法等で、以下の項目を中心に改正が行われています。
企業としては、これらの改正を踏まえた就業規則等各種規程の改定、36協定等の巻き直し、新たな勤務形態の制定、社内制度の整備を行う必要がある場合があります。

改正項目

施行日

時間外労働時間の上限規制の導入

2019年4月1日(原則)
2020年4月1日(中小企業)

一定日数の年次有給取得の義務化

2019年4月1日

労働時間の状況の把握の実効性確保

2019年4月1日

中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し

2023年4月1日

脱時間給制度(高度プロフェッショナル制度)の導入

2019年4月1日

労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

2020年4月1日(原則)
2021年4月1日(中小企業)

 

2.税制適格SOの対象者拡大

2019年度の税制改正の一環として、ストックオプションに関する税制の改正が行われることとなりました。なお、適用時期は現状未定です。
もっとも、今回のストックオプション税制のうち見直しの対象としては、現在の税制適格ストックオプションの要件のうち、以下のような見直しが中心となりそうです。

現在の要件

見直しの方向性

①付与対象者の範囲が自社及び子会社の取締役、執行役、使用人に限定

対象者の範囲の拡張

②権利の行使合計額は「年間1200万円を超えない」こと

権利の行使合計額の上限を引き上げ

③「付与決議の日後2年を経過した日~10年を経過する日まで」の間に権利行使すること

左記の期間の見直し

今回の改正により、十分な資金がないベンチャー企業や中小企業にとって、外部の専門家等からの助言やサポートの対価として、ストックオプションが活用しやすい制度になることが期待されます。

 

 

3.著作権法改正

2019年1月1日を施行日(以下の②については、公布日である2018年5月25日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日)として、以下の4項目について著作権法の一部が改正されました。

 

①デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備

②教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備

③障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限規定の整備

④アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等

 

※著作権法の改正内容の詳細については、弊所弁護士恩田俊明執筆の記事
『著作物・著作権をめぐるルール改正の解説(前編)』をご参照頂ければと思います。

 

 

4.消費者契約法改正

消費者契約法は、昨今の消費者と事業者の交渉力等の格差や消費者被害の事例を踏まえ、2018年に改正が行われました。改正法の施行日は2019年6月15日となっています。

 

今回の改正の内容としては、取り消しうる不当な勧誘行為の追加等(いわゆるデート商法や霊感商法、加齢等による判断力の低下を利用した不当な勧誘手段等の明文化)、無効となる不当な契約条項の追加等(無効となる条項として、消費者の後見等を理由とする解除条項や事業者が自分の責任を自ら決める条項の追加)、事業者の努力義務の明示等(消費者への情報提供義務等)があります。

 

消費者契約法の適用のある事業者としては、消費者向けの利用規約の見直し等の対応が必要となります。

 

 

5.不正競争防止法改正

昨今のデータビジネスの発展に伴うデータ保護の要請を背景に、2018年に不正競争防止法の一部が改正されました。改正法の施行日は2019年7月1日です。

 

これまでは、ビジネス上価値のあるデータであっても、特許法や著作権法の保護対象とはならないケースも多く、また、これが不正競争防止法の「営業秘密」にも該当しない場合、その流通を食い止めることは困難な場合がありました。そこで、不正競争防止法の改正が行われ、同法の保護対象として「限定提供データ」という概念を導入し、一定の価値あるデータの不正取得行為等に対する差止請求権、損害賠償請求権による対応等が新たに規定されました。

 

今回の改正により、同法により保護されるデータの不正利用等について、法律に則り対応が可能となるため、データビジネス等の益々の発展が期待されます。