中国EC事情と法務ポイント

中国EC事情と法務ポイント

中国律師(Not admitted in Japan)李 昱昊

 

 

■ 中国EC市場規模

中国EC(electronic commerce)の市場は年々拡大する傾向にあり、EC小売の市場額は2018年中に1兆ドル(112兆円)に達し、世界EC市場の4割を占めると予測されています。
中国EC市場の特徴としては、携帯端末を用いたネットショッピングが主流となっていることや、中国人消費者の所得増に伴い、従来の価格重視より、品質や正規品に対するニーズに移行してきていることが挙げられます。
本コラムでは、日本企業が中国ECに参入するにあたって留意すべき法的論点をご紹介していこうと思います。

 

 

■ 中国ECの参入方法

日本企業が中国EC市場に参入する方法としては、大きく分けて2つの手法があります。
  ①中国ECモール出店モデル
  ②自社ECサイト構築モデル

 

①の中国ECモール出店モデルのメリットとしては、中国で電子商取引を行うための特殊なライセンス(ICPライセンス)(※1)を取得する必要がないため、進出コストを比較的低額に抑えることができること、また大手ECモールのプラットフォームを利用した集客力という2点にあります。デメリットとしては、大手ECモールの利用によって売上に比例した決済手数料が発生するため利益率が悪くなること、またECモールの規則の突然の変更(中国ECモールのルール変更は日常茶飯時である。)によって商品の販売が不可能になってしまうリスクがあります。
その一方、②の自社ECサイト構築モデルのメリットとしては、自社顧客データベースの構築とマーケティングの施策を行いやすいこと、さらにモールに支払う手数料が発生しないため、相対的に利益率が高くなることがあります。デメリットとしては、電子商取引のためのライセンス取得を含んだ中国法人の整備が必要となるので、多額の初期投資と相対的に長いリードタイムを余儀なくされることがあります。
中国ECへ進出する際に、自社の製品と販売戦略、中国進出実績などの要素を検討した上で、ECモールに出店するか自社サイトを構築するかを決めることが、まず第一歩となります。

 

 

■ ECビジネスのための外資規制緩和

自社ECサイト構築モデルの場合、基本的に中国現地に法人を設立する必要があります。従来から中国における外資企業の設立と変更に関しては、原則として中国主管機関の認可を得なければなりませんでしたが、2016年10月1日より施行された「外商投資企業の設立及び変更における届出管理に関する暫定弁法」 およびその後、数回に渡って改訂・公布された「外商投資産業指導目録」(ネガティブリスト)により、その認可制度は届出制度に改正されました。すなわち、外商投資企業の設立と変更は、政府が規定する外商投資参入特別管理措置の分野(ネガティブリスト)に該当しない限り、従来の審査・認可を経ることなく、指定オンラインシステムによる関連資料の届出のみで行えるようになりました。当該制度の改正は、中国政府による「一帯一路」政策を反映したものであり、外国資本の参入制限を大幅に緩和することによって、「引進来」と「走出去」という中国政府の経済戦略を後押ししようとするものだと考えられます。
そもそも、2015年6月22日に通達として公布された「オンラインデータ処理と取引処理業務(経営類電子商取引)外資系投資規制の通告」により、EC分野における外資100%子会社が全国の範囲内に認められるようになったことからも、外資EC参入に対する中国政府の積極的な姿勢がうかがえます。

 

 

■ 注目される新たな個人情報保護規制

自社ECサイトで取引する場合は、個人情報を含めた顧客データを取得することになります。個人情報等の取得と保存に関して、大きく分けると、サーバーを中国国内に置くか中国域外の日本又は他国に置くかという2つの方向があります。
中国では、個人情報の取得と利用に関する法規制は、まとまった制定法がなく、多数の法規定および行政通達に散在していましたが、中国政府によるネットセキュリティー規制強化の政策から、2017年6月1日より「中国サイバーセキュリティ法」(中华人民共和国网络安全法)が施行され、中国のネットワークの安全、国家の安全、社会の公共利益を保証することを目的とする、インターネットを通じた個人情報と重要データの取得・利用・移転に関する規制が導入されました。
同法第37条は、「重要情報インフラの運営者は、中国国内での運営において収集および発生した個人情報および重要データを、中国国内で保存しなければならない。業務の必要により、国外に提供する必要がある場合は、国家インターネット情報部門が国務院の関係部門と共に制定した規則に従って安全評価を行わなければならない。」と規定しています。したがって、ECサイト運営に伴い中国から取得した個人情報を中国域外のサーバーに保存する場合は、上記規定の個人情報および重要データの国内保存義務に違反する可能性があり、個人情報を中国国内のサーバーに保存する場合も、日本の本社に移転や提供する場合には、中国政府機関による安全評価を受けなければならないことになりかねません。
ただし、「中国サイバーセキュリティ法」に対する具体的な解釈や運用はまだ定められておらず、今後の動向に注目する必要があります。

 

 

■ 越境EC商品に対する税関新制度の難航

BtoCの越境EC取引に関しては、「越境電子商取引小売輸入税収政策に関する通知(財関税[2016]18号)」および「越境電子商取引小売輸入品リスト」の発布により、2016年4月8日から、これまで適用されていた行郵税が廃止され、一般貿易と同様に関税、輸入増値税、消費税が導入されました。そして新制度のもと、輸入許可証や原産地証明等の資質証明の提出が必要となった一部の商品に関しては、その供給ルートが複雑で分散していることから資質証明の提供ができず、通関できない事例が多数発生していました。
この現場での混乱状況を受け、上海市・重慶市など10の試験都市において、「輸入許可証」の提出の猶予が、2017年5月11日まで、2017年末まで、更に2018年末までと三回延長されることになりました。
したがって、越境EC小売輸入商品の初回輸入時の輸入許可証、登録、届出は2018年末までは不要となりますが、2019年以降に向けての対策を講じることが求められます。

 

 

■ EC販売商品の返品に関する規制

2014年3月15日に施行された「新消費者権利保護法」においては、「7日以内の理由なき返品自由」の規定が注目されていました。当該規定は、インターネットショッピング等の活用によって多様化する取引環境における一般消費者の保護強化に寄与することを目的としており、インターネット等を通じて購入した商品に関しては、一部の除外品目を除き(※2)、商品を受け取った後7日以内であれば、理由の如何にかかわらず返品できると定めています。なお、自由返品期間の「7日以内」とは、消費者が商品を受け取った翌日から起算し、最終日の7日目が土日祝日にあたった場合にはその翌日を7日目として計算します。
「新消費者権利保護法」が制定される前に、中国の大手ネットショッピングモールである「天猫(TMALL.COM)」と「京東(JD.COM)」は、7日よりも長い15日以内の理由なき自由返品制度をすでに実施していましたが、同法の改正により、返品対応の対象がすべてのインターネットショッピング事業者へと拡大しました。それゆえ、中国消費者に向けてEC販売事業を経営する上では、返品対応の体制構築が必須となっています。

 

 

 

(※1)「中華人民共和国電信条例」および「インターネット情報サービス管理弁法」の規定により、営利的インターネットプラットフォームを構築・提供する場合に営業許可申請が必要とされています。

(※2)(1)特注品、(2)生鮮食品、(3)オンラインダウンロードコンテンツや開封したCD・DVD・PCソフトなどのデジタルコンテンツ、(4)新聞や定期刊行物の4分類は返品対象外となります。

 

 

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