今こそまとめて知っておきたい、ドローンを取り巻く法的ルール

今こそまとめて知っておきたい、ドローンを取り巻く法的ルール

弁護士 鈴木 景

 

■ はじめに


去る平成27年4月22日、首相官邸に小型のマルチコプターが墜落した事件が起き、社会の耳目を集めました。思えばこの事件を皮切りに、「ドローン」という言葉が世間に浸透し始めたように思います。
あれから3年後の2018年現在、玩具から、撮影機材、果ては輸送機具まで、大小様々なドローンが開発され、私達の生活に身近なものとして浸透しています。

 

ドローンによる空からの撮影に始まり、ドローンで農業を支えるビジネスや、ドローンを利用した配送サービスなど、我々の生活に密接に関わるようになりました。
今後は、ドローンを利用したサービスはますます我々の生活に密着し、それによって私達がドローンを手に取ることもますます増えることが考えられます。
このような状況も踏まえ、今回は、ドローンを使う場合に注意しておきたい規制について解説します。
なお、以下の記事内では、各所にリンクを掲載していますが、これは本記事作成時におけるものであり、必ずしも最新版のものではありません。ご利用いただく際は、この点についてご留意いただき、最新版を確認いただけますようお願いいたします。

 

 

■ 航空法による規制


ドローンについては、航空法が、「無人航空機」として規制しています。具体的には、以下のような規制が課せられています。
ただし、ドローンの重量が200グラム以下の場合には、原則として以下の規制が課せられません。趣味でドローンを飛行させてみたい、という場合には、200グラム以下のドローンを選んで飛行させるのがよいでしょう。

 

1.飛行禁止空域
ドローンを飛行させるにあたり、以下の空域で飛行させることは、原則として禁止されています。どうしても飛行させたいということであれば、国土交通大臣の許可が必要とされています。

①空港周辺

②地表または水面から150メートル以上の高さ

③人家の密集地域

これらについては、具体的にどの範囲までが規制の対象となるのか、国土交通省の以下のサイトで詳細に案内がされています。

http://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr10_000041.html

 

ドローンで空撮をしようとした場合、高いところから撮影しようとするあまり、150メートルを超える位置まで飛行させないよう、留意する必要があります。なお、この高さは、地表または水面からの高さであり、海抜高度ではありませんので、例えば山中で撮影をしようとする場合には、山中の地表から150メートルの範囲で飛行させることができます。

 

また、人家の密集地域での飛行が制限されるため、ドローンでの配達を行おうとする場合、住宅街への配達を行うためには、国土交通大臣の許可を取得したうえで行うことが必要となります。許可を取得せずに行う場合には、配達場所を飛行禁止空域外に設定し、人家密集地域での飛行を避けて配達する必要があります。

 

2.飛行方法の制限

ドローンを飛行させる場合、原則として、以下のルールを守ることが必要です。

①夜間に飛ばさない

②目視外飛行の禁止

③第三者の30m未満の距離に入る飛行の禁止

④イベント会場上空の飛行の禁止

⑤危険物の輸送の禁止

⑥物件落下の禁止

ただし、例外的に国土交通大臣の承認を得た場合にはこれらに該当する飛行方法も可能となります。

 

ここでいう「目視外飛行の禁止」ですが、カメラを通じた視認では足りず、直接肉眼により確認しながら飛行させる必要がある点に注意が必要です。

 

また、農薬をドローンで散布する場合、上記「危険物の輸送の禁止」と「物件落下の禁止」の2つの禁止事項に該当する可能性があります。

そのため、農薬をドローンで散布しようとする場合、国土交通大臣の承認を得ることが必要となりますので、この点には注意が必要です。

 

3.捜索・救助の場合における特例
これらの飛行ルールについては、事故や災害時に、国や地方公共団体から依頼を受けた者が捜索又は救助を行うために行うドローンの飛行には適用されないこととなっています。

ただし、この例外規定が民間企業に適用されるためには、「国や地方公共団体から依頼を受けた」ことが必要です。そのため、民間企業が独自に捜索救助のためにドローンを飛ばす場合には適用されないことに注意が必要です。

また、例外規定が適用される場合でも、安全確保のためのガイドラインが国交省により定められていますので、ガイドラインを確認しながらドローンを飛行させることが必要です。
ガイドラインは、以下から確認できます。

http://www.mlit.go.jp/common/001110204.pdf

 

4.航空法に違反したら
許可や承認なしに、上記の規制に違反した場合など、航空法に違反した場合、50万円以下の罰金が課せられます。
刑事罰が課せられることになりますので、法的なリスクはもちろんのこと、レピュテーショナルリスクも相当に高いものと考えられますので、十分な注意が必要です。

 

5.小括
このように、ドローンの飛行にあたっては、航空法上、種々の規制が課せられています。これらの規制は、一見・一読するだけではわかりにくい点もあると思います。
そこで、国土交通省は、ドローンを飛行させる方向けに、「無人航空機(ドローン、ラジコン機等)の安全な飛行のためのガイドライン」を作成しています。

http://www.mlit.go.jp/common/001202589.pdf

ドローンを飛行させる際は、こちらのガイドラインを確認しながら、くれぐれも安全に配慮して飛行させることが必要ですね。

 

 

■ 航空法以外の規制


以上が、航空法上の規制ですが、ドローンの飛行については、自治体が条例を設けて規制をしていることがあります。
また、「小型無人機等の飛行禁止法」という法令により、国の重要な施設や、外国公館、原子力発電所の付近でのドローンの飛行が規制されています。
(なお、これに違反した場合、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金とされています。)

 

ドローンを飛行させようとする場合、その対象地域が、上記条例や、小型無人機等の飛行禁止法によって飛行が禁止されているエリアかどうか、確認することも忘れないようにしましょう。

 

 

■ 航空法における国土交通大臣の許可と承認


上記のとおり、ドローンを飛行させるにあたっては、原則として、飛行空域の制限と飛行方法の制限を守る必要があります。
しかし、一方で、人家の上空の映像を撮影する、夜景を空から撮影する、イベントの様子を空から撮影する、といった必要もあるでしょう。特に、ドローンによる農薬散布ができれば、農業の場面で、人件費などのコストを大幅に削減することが期待できます。
このような場合には、航空法に基づく国土交通大臣の許可や承認を取得することが必要です。

 

1.申請書
申請書は、空域制限に対する許可・飛行方法に対する承諾、両方に共通です。
以下のHPから取得できます。

http://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr10_000042.html

なお、申請書では、「飛行の日時」を記載する必要があります。この点について、一回の申請について、原則として「3ヶ月以内」を飛行の日時として特定することが可能とされておりますので、許可・承認から3ヶ月以内の期間中に行う飛行については、個別の申請を行うのがよいでしょう。
一方、3ヶ月を超える期間中に反復継続的に行う飛行について許可を取得するのであれば、「包括申請」という方法で、申請を行うのがよいと考えられます。ただし、この場合は、個別に許可・承諾を取得する場合に比べ、ハードルが高いことには注意が必要です。

 

また、申請書には、ドローンを飛行させる方についての、飛行経歴・知識・能力を記載する必要がある(様式3)とともに、別添資料として、無人航空機を飛行させる者の追加基準への適合性に関する資料を提出する必要があります。
この点については、航空局ホームページに掲載されている無人航空機の講習団体及び管理団体の講習を受けた場合、技能証明の写しを提出することで、技能認証の内容に応じて、これらの資料を代替することが可能です。
具体的には、以下に、講習団体・管理団体が紹介されています。

http://www.mlit.go.jp/common/001221588.pdf

 

ドローンを安全に飛行させるためには、ドローンの操縦について講習を受けることが有用ですし、それによって申請が容易になることも期待できますので、上記団体の講習を受講することも一考に値するといえるでしょう。

 

2.無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領
国土交通大臣の許可・承認については、審査要領が記載されています。これは、国土交通大臣が、どのような基準で審査を行うかを示したものですので、許可・承認の申請書を作成するにあたって大いに参考になる資料です。
具体的には、以下を参照いただければと思います。

http://www.mlit.go.jp/common/001220061.pdf

 

許可・承認を取得しようとする場合には、こちらの資料を参照しながら作成されるのがよいでしょう。
なお、本審査基準については、平成29年11月4日に岐阜県大垣市で起きた、飛行中のドローンの落下事故(観客3名に軽傷を負わせる事故)を受け、平成29年1月31日に改定されています(上記リンク先は、改定後のものです)。
このように、事故が発生した場合、審査基準がより厳格に改定されることが見込まれますので、申請の都度、最新の審査基準を確認しながら、申請を行う必要がある点に注意が必要です。

 

3.農薬散布用ドローンを飛行させる場合
農薬散布用のドローンを飛行させる場合、特に留意する必要があるのは、前記「危険物の輸送」と「物件の落下」についてです。以下、それぞれの留意点についてご紹介しましょう。

 

(1)危険物の輸送について

「危険物の輸送」を認めるための条件について、前記審査基準では、以下のように記載されています。

 

危険物の輸送を行う場合は、次に掲げる基準に適合すること。ただし、無人航空機の機能及び性能、無人航空機を飛行させる者の飛行経歴等、安全を確保するために必要な体制等とあわせて総合的に判断し、航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないと認められる場合は、この限りでない。

①機体について、危険物の輸送に適した装備が備えられていること。

②無人航空機を飛行させる者について、意図した飛行経路を維持しながら無人航空機を飛行させることができること。

③安全を確保するために必要な体制について、次に掲げる基準に適合すること。

・真に必要と認められる飛行であること。

・飛行させようとする経路及びその周辺を事前に確認し、適切な飛行経路を特定すること。

・飛行経路全体を見渡せる位置に、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況の 変化等を常に監視できる補助者を配置し、補助者は、無人航空機を飛行させる者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行うこと。

・飛行経路の直下及びその周辺に第三者が立ち入らないように注意喚起を行う補助者の配置等を行うこと。

 

農薬を散布しようとする場合、特に注意が必要なのが補助者の配置です。これは、上記審査基準の記載内容からして、ドローンを操縦する方とは、別の方になるでしょう。
ドローンの飛行状況や天候状況等を適切に確認しながら、操縦者に必要な助言を行うとともに、飛行経路の直下周辺に人が立ち入らないよう、注意喚起を行う必要があります。
飛行する空域の広さなどにもよりますが、場合によっては、複数人、補助者を配置することが必要になる点にも注意が必要です。

 

(2)物件の落下について
「物件の落下」を認めるための条件について、前記審査基準では、以下のように記載されています。

 

物件投下を行う場合は、次に掲げる基準に適合すること。ただし、無人航空機の機能及び性能、無人航空機を飛行させる者の飛行経歴等、安全を確保するために必要な体制等とあわせて総合的に判断し、航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないと認められる場合は、この限りでない。

①機体について、不用意に物件を投下する機構でないこと。

②無人航空機を飛行させる者について、次に掲げる基準に適合すること。

③5回以上の物件投下の実績を有し、物件投下の前後で安定した機体の姿勢制御ができること。

・必要な実績及び能力を有していない場合には、無人航空機を飛行させる者又はその関係者の管理下にあって第三者が立ち入らないよう措置された場所において、物件投下の訓練を実施すること。

・必要な実績及び能力を有していない場合には、無人航空機を飛行させる者又はその関係者の管理下にあって第三者が立ち入らないよう措置された場所において、物件投下の訓練を実施すること。

④安全を確保するために必要な体制について、次に掲げる基準に適合すること。

・物件を投下しようとする場所に、無人航空機の飛行状況及び周囲の気象状況の変化等を常に監視できる補助者を配置し、補助者は、無人航空機を飛行させる者が安全に飛行させることができるよう必要な助言を行うこと。
・物件を投下しようとする場所に、第三者が立ち入らないように注意喚起を行う補助者の配置等を行うこと。

 

農薬散布用のドローンの場合についていえば、物件投下の場面において配置する補助者については、危険物輸送の場面において配置する補助者と兼ねることも、一定の場合には可能と考えます。
物件投下について特に留意すべきは、「5回以上の物件投下の実績を有すること」でしょう。具体的には、これらの実績を有することに加え、実績を示す飛行実績についての申告が必要となる点に注意が必要です。

 

4.申請から許可・承認までのリードタイム
国土交通省によれば、少なくとも、飛行開始予定日から10開庁日前には申請を行って欲しい、とのことですが、現状、審査が大変に混み合っているため、飛行開始予定日から3~4週間程度は余裕をもって申請をしてもらいたい、とのことです。

 

なお、急な空撮の予定など、業務の都合上、飛行経路が決定してから飛行させるまでに手続きを行う期間が確保できない場合には、飛行場所の範囲や条件を記載することで飛行経路を特定せずに申請を行うことも可能とされています(ただし、空港等の周辺、150m以上の高さの空域の飛行を除きます)。

 

5.実際に申請する際には
許可・承認の申請を行う際の具体的な手続き(申請先や申請方法など)については、以下の国土交通省のHPに具体的に記載されています。
また、電子申請を行う際のURLへのリンクも掲載されていますので、こちらのページを参照しながら行うのがよいでしょう。

http://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr10_000042.html

 

 

■ 終わりに


以上、ドローンに関する法令の規制と、許可・承認の申請について、概括しました。
ドローンを使ったオートメーションによって人件費などのコストカット、それに伴う商品の低額化が実現できるだけでなく、地方と都心を結ぶ輸送によって、新たな観光資源の発掘、それによる地方創生にも繋がることが期待できます。
また、交通状況の芳しくない地方への輸送ルートが開発されることにより、そのような地域と都心との情報格差・輸送格差をなくすこともできるかもしれません。
さらには、ドローンタクシーの実現によって、交通渋滞の緩和も期待できるかもしれません。
そのような未来を実現するためには、法令を遵守すると共に、ドローンの飛行の安全性を確保し、事故を未然に防ぐことが、必要不可欠といえます。
そのような中で、本記事が、皆様の法令遵守の一助となれば、大変幸いです。

 

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