タイの最新労働者保護法(B.E.2560)

タイの最新労働者保護法(B.E.2560)

弁護士 藤江 大輔/Daisuke Fujie

 

■ 労働者保護法の改正


タイにおいて、企業が必ず直面する問題の1つが、労働者保護法に関する問題です。
タイと日本とでは、従業員の仕事に関するスタンスや文化が大きく異なるため、その点に苦労するケースは多いですが、それだけでなく、労務に関する法律も異なります。

 

そして、2017年は労働者保護法改正が大きく行われた年でもあるので、今回はその改正ポイントについて解説したいと思います。

 

 

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■ 改正労働者保護法のポイント


改正労働者保護法(B.E.2560、第6号)は、就業規則に関する改正が2017年4月4日より施行され、その他の改正は同年9月1日より施行されています。

 

就業規則に関する改正(第108条・第110条)
タイでは、就業規則に関して日本と同様の法規制が敷かれており、10名以上の従業員を雇用する場合に、就業規則を策定しなければならず、これを労働局に届け出る必要がありました。
今回の改正では、この届出義務が改正され、労働局への届出義務はなくなりました

 

この改正は企業にとっては、就業規則に関する事務コストを削減するものですが、一方で注意しておくべき点もあります。

 

というのも、改正前は、就業規則を提出する時に、労働局の一応の審査が入っており、不適切な内容が含まれている場合は、規則の変更が指導されていました。この審査は、企業にとって煩雑である一方、法的に認められないような就業規則を事前に察知できるという意味で、一定の品質担保機能があったように思われます。

 

しかし、改正後は就業規則の提出が不要となるため、労働局による審査が及ばなくなり、企業が策定した就業規則内に、労働保護法上認められない内容が含まれてしまう可能性があります。

 

この点は、紛争防止の観点から留意しておくべき点と言えるでしょう。

 

更に、就業規則の周知方法についても改正がなされました。
就業規則は、従業員が見やすい場所に掲示されている必要がありますが、今回の改正により、電子媒体による掲示が可能となりました

 

企業としては、就業規則のデータに従業員がいつでもアクセスできる状態にしておくことで、就業規則の周知を行うことが可能となります。
私としては、この部分の改正が運用面において及ぼす影響は少なくないと考えています。

 

定年退職に関する改正(第118/1条)
タイでは、雇用契約や就業規則で定年退職が定められている場合、退職時の取扱いとしては解雇と同様のものとされ、従業員は、法律上定められた解雇補償金を受領することができます。

 

今回の改正では、雇用契約や就業規則で定年退職が定められていない場合の取扱いについて、明示されるに至っています。

 

まず、就業規則や労働契約等で退職年齢が定められていない場合は、定年は60歳とすることが明文化されました。もちろん、雇用契約や就業規則に定めがある場合は、それを優先します。

 

ただし、雇用契約や就業規則で定年が60歳以上に設定されている場合については注意が必要です。
今回の改正では、定年が60歳以上に設定されている場合であっても、60歳を超えた従業員が定年前に退職する場合には、法定の解雇補償金を支払わなければならないとされました。

 

つまり、企業側がどう制度設計したとしても、60歳を超えた従業員が退職する場合には、解雇補償金を支払う必要があるということになりました。

 

最低賃金に関する改正(第87条)
その他、今回の改正で、中央労働委員会に対して、特定の事業や特定の種類の労働者(高齢者、若年者又は障害者等)に応じて異なる金額を設定することができる権限が付与されました。
企業としては、個別の業種や労働者の特性に応じた最低賃金を確認しておく必要があります。

 

 

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■ 更なる改正が継続中


これに留まらず、現在、本改正に加えて、更に労働者保護法の改正が検討されています。

 

例えば、有給休暇に関しては、従業員に対して年間3日以上のBusiness Leaveを付与することが義務付けられること、出産休暇に関連して、産前の定期検診が出産休暇の対象になることなどが検討されています。

 

解雇補償金に関しては、20年以上の勤務経験のある従業員に対して400日分の解雇補償金の支払い(現行では10年以上の勤務経験のある従業員に対する300日分の解雇補償金が最高)が規定される方向で協議が進められています。

 

上記の点は、今後の重要な法改正事項となりますので、在タイ企業としては、今後改正法が施行される前に十分な備えをしておく必要があります。

 

 

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