医療法等改正の概要-地域の実情に応じた医療提供体制の確保

医療法等改正の概要-地域の実情に応じた医療提供体制の確保

執筆:弁護士 早崎智久弁護士 吉岡拓磨

 

 

1.はじめに

 日本の医療の課題として、各地域の実情に応じた医療をいかに提供していくかということが挙げられます。このような課題を抱えるなかで、新型コロナウイルスの感染拡大という事態が発生し、各地域における医療提供体制も深刻な事態に見舞われております。
 そこで、今回の医療法改正においても、これらへの対策のために、以下の事項が明確にされました。つまり、現在の事態に対応すると共に、将来的にも、地域医療の安定的な提供がなされることを企図した改正となっております。
 具体的には、以下の2つが定められました。

①新興感染症等の感染拡大時における医療提供体制の確保に関する事項の医療計画への位置付け(令和6年4月1日施行)

②外来医療機関の機能の明確化・連携(令和4年4月1日施行)

 

 また、医療法の改正と併せて、「地域における医療及び介護の総合的な確保の促進に関する法律(以下「医療・介護総合確保推進法」といいます。)」も改正され、

③地域医療構想の実現に向けた医療機関の取組の支援(令和3年4月1日施行)が行われます。

 

 以下では、それぞれの大枠を解説いたします。

 

 

2.新興感染症等の感染拡大時における医療提供体制の確保に関する事項の医療計画への位置付け

 

(1)改正の背景

 現在、新型コロナウイルス感染症の対応に関して、受入医療機関における病床や感染防護具が逼迫する問題が生じ、一般の医療体制にも大きな影響が生じております。そのため、新興感染症等の感染拡大時に、機動的に対策を講じられるよう、基本的な事項について、平時からの備えとしてあらかじめ地域の行政・医療関係者の間で議論・準備を行う必要性が認識されるようになりました。

 

(2)改正の概要

 これまで、都道府県が医療計画において定めなければならない事項としては、①救急医療、②災害時における医療、③へき地の医療、④周産期医療、⑤小児医療(小児救急医療を含む)の5事業に関する事項が挙げられていました(改正前医療法第30条の4第2項5号)。
 この点、新興感染症については、発生時期や感染力等について、あらかじめ詳細に予測をしておくことは困難ですが、このようにあらかじめ詳細に予測するのが難しいというのは、上記②の「災害時における医療」と共通しています。
 そこで、あらかじめ、きちんと対応できる体制を整えておくためにも、今回の改正において、上記の5つに加え、新興感染症に対する事前の対策が追加されました。法令では、「そのまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症がまん延し、又はそのおそれがあるときにおける医療」(改正医療法第30条の4第2項5号ハ)として明記されており、「国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある感染症」に限定しておりますが、新型コロナウイルスのような未曾有のものに限らず、過去に流行が問題になったSARS、MERSといったものも該当すると考えられます。

 

 今後、厚生労働省において、計画の記載内容(施策・取組や数値目標など)について詳細な検討を行い、「基本方針」(大臣告示)や「医療計画作成指針」(局長通知)等の見直しを行った上で、各都道府県で計画策定作業を実施するとされていますが、具体的な記載項目は(図表1)のとおりです。

 

(図表1)

 

このように、主に都道府県が対応する事項とはなりますが、医療機関や企業等の協力がなければ実現できないものであり、今後の協力の要請などが予測されます。

 

 

3.外来医療機関の機能の明確化・連携

(1)改正の背景

  これまで、患者が医療機関を選択しようとしても、医療機関の外来機能に関する情報を十分に得ることができず、また、患者側においても、いわゆる「大病院志向」があるなかで、一部の大病院などの医療機関に外来患者が集中することが常態化しておりました。
 この結果、患者にとっては、待ち時間が長時間となり、一方の、医療機関にとっても勤務医の外来負担が大きくなる等の問題が生じ、双方にとって改善が求められる事態となっておりました。さらに、人口減少や高齢化、外来医療の高度化等が進むなかで、大病院ではない診療所等が「かかりつけ医」となる機能を強化するとともに、大病院の外来機能の明確化や各医療機関相互の連携を進めていく必要性がありました。

 

(2)改正の概要

 今回の改正は、上記の課題に対して、長期的に取り組むべき課題であることを前提にしています。まず、地域の医療機関の外来機能の明確化・連携に向けて、データに基づく議論を地域で進めるため、

① 医療機関が都道府県に外来医療の実施状況を報告しなければならないこと(改正医療法第30条の18の2)

② ①の外来機能報告を踏まえ、都道府県が医療関係者と「地域の協議の場」において、外来機能の明確化・連携に向けて必要な協議を行うこと(改正医療法第30条の18の4第1項柱書)

が規定されました。
 そして、上記の①、②において、協議促進や患者の分かりやすさの観点から、「医療資源を重点的に活用する外来(仮称)」を地域で基幹的に担う医療機関(紹介患者への外来を基本とする医療機関)を明確化しました(同項2号)。この①における具体的な報告事項や「医療資源を重点的に活用する外来(仮称)」を地域で基幹的に担う医療機関の基準は、今後さらに検討されることになります。
 なお、①の報告義務を怠った場合又は虚偽の報告をした場合には、是正命令の対象となり(同条第2項)、是正命令に違反した場合は、30万円以下の過料を課される場合があります(改正医療法第92条)。

 

 このように、医療機関においては、外来医療の実施状況の報告義務や、都道府県との「地域の協議の場」における協議を行うことが求められています。医療改革が、喫緊の課題であり、国としても本腰を入れて取り組むという姿勢が明確になったといえます。

 

 

4.地域医療構想の実現に向けた医療機関の取組の支援

(1)地域医療構想とは

 今後の人口減少・高齢化に伴う医療ニーズの質・量の変化や、労働力人口の減少を見据えた上で、質の高い医療を効率的に提供できる体制を構築するためには、多数の医療機関の機能分化や連携を進めていく必要があります。
 こうした観点から、目指すべき医療提供体制として「地域医療構想」が掲げられ、これを実現させるための施策が採られます。そこでは、各地域における2025年の医療需要と病床の必要量について、医療機能(高度急性期・急性期・回復期・慢性期)ごとに推計する必要があります。

 

(2)地域医療構想実現のプロセス

 地域医療構想実現のプロセスは、以下の3つに整理されています。

  STEP1:地域における役割分担の明確化と将来の方向性の共有を「地域医療構想調整会議」で協議

  STEP2「地域医療介護総合確保基金」により支援

  STEP3 都道府県知事による適切な役割の発揮

  今回の医療・介護総合確保推進法の改正は、STEP2のプロセスを進めるために行われたものです。

 

(3)改正の概要

 今回の改正では、令和2年度限りとして措置された「病床機能再編支援事業」について、消費税財源を活用した地域医療介護総合確保基金の中に位置付け、全額国負担の事業として、令和3年度以降も実施されることになりました(改正医療・介護総合確保推進法第6条、第4条第2項2号ロ)。
 また、複数医療機関の再編・統合に関する計画(再編計画)について、厚生労働大臣が認定する制度を創設し(同法第2章の2)、認定を受けた再編計画に基づき取得した不動産に関し、登録免許税を租税特別措置法により軽減します。

 

 

 

5.最後に

 上記のように、今回の医療法改正においては新型コロナウイルスの感染拡大を受けたものもありますが、従来からあった課題が、昨今のウイルス蔓延を受けて顕在化したものともいえますし、国の施策自体は、これまでの方針と同様です。現在の課題を解決するためには、国、地方自治体、医療機関、医療関係者等が一体となって施策を推進することが求められるといえますが、医療の効率的な提供や、医療機関の機能分化及び連携を行うには、ITやAIなどのテクノロジーを効率よく活用していくことも重要です。
 こうしたテクノロジーの活用には、個人情報の管理などを含めた法務課題も多いのが実情ですので、法律家のアドバイスを活用する必要があります。

 

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