医療法等改正の概要-医師の働き方改革

医療法等改正の概要-医師の働き方改革

執筆:弁護士 宮田智昭弁護士 増田亜起子

 

 

1.はじめに

 医師の長時間労働が問題になっている状況に鑑みて、「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律(改正医療法)」によって、医療法が改正され、医師の労働時間の短縮及び健康確保のための制度が創設されます。

 

良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律案の閣議決定について
令和3年2月12日第31回地域医療構想に関するワーキンググループ
参考資料から引用

 

 医療法の改正は、医師に対する時間外労働の上限規制の適用開始(令和6年4月1日)に向け、次のように段階的に施行されることになります。

 

 

2.公布日~

 公布日からは、労働時間を短縮し、健康を確保できるよう、必要な指針が公表されます(医療法105条)。

 

 

3.令和4年4月1日~

 令和4年4月1日からは、病院又は診療所に勤務する医師の労働時間の短縮のための取組の状況等について評価等を行う医療機関勤務環境評価センターが創設されます(第107条、第108条(令和6年4月1日以降は、第130条、第131条))。
 医療機関勤務環境評価センターは、厚生労働大臣によって指定され、労働時間の短縮のための取組の状況等についての評価を、病院又は診療所の管理者と都道府県知事に通知します。そして、当該通知を受けた都道府県知事は、評価の結果を公表します(第109条、第111条(令和6年4月1日以降は、第132条、第134条))。

 

 

4.令和6年4月1日~

(1)概要

 令和6年4月1日からは、医療機関全般に対して、労働時間の上限を超えた場合の面接指導、医師の休息時間の確保等について制度ができます。
 また、やむを得ず医師の長時間労働が必要となる病院又は診療所については、病院又は診療所の開設者の申請により、当該病院又は診療所を「特定労務管理対象機関」と指定し、労働時間の上限を通常よりも高く設定するとともに、労働時間短縮計画の策定を義務付けるなどの義務を課しています。特定労務管理対象機関には、①特定地域医療提供機関、②連携型特定地域医療提供機関、③技能向上集中研修機関、④特定高度技能研修機関が挙げられます。

 

(2)健康確保措置(全般)

ア.面接指導

 病院又は診療所の管理者は、勤務している医師の労働時間の状況が、厚生労働省令で定める要件に該当する場合、その医師に対して、医師による面接指導を行わなければなりません。面接指導の結果、必要があるときは、労働時間の短縮、宿直の回数の減少などの措置を講じなければなりません(第108条第1項から第5項)。
 病院又は診療所の管理者が、面接指導を正当な理由なく行わない場合や、必要な措置を講じていない場合は、改善命令が出される可能性があります(第111条)。
 面接指導の基準となる労働時間の上限は、次の図のように、特定労務管理対象機関か、そうでないかによって異なり、特定労務管理対象機関には、地域医療確保暫定特例水準、集中的技能向上水準が適用されます。

 

医師の働き方改革について
令和元年6月7日第1回医療政策研修会第1回地域医療構想アドバイザー会議 資料2-1から引用

 

イ.休息時間の確保

 病院又は診療所の管理者は、勤務している医師の労働時間の状況が、上の図のとおり、厚生労働省令で定める要件に該当する医師に対し、厚生労働省令で定めるところにより、休息時間を確保する努力義務があります(第110条第1項本文)。この休息時間を確保しなかった場合は、事後的に休息時間を確保するよう努めなければなりません(第110条第2項)。
 宿日直勤務の際は、宿日直勤務の後に、必要な休息時間を確保するよう努力する義務があります(第110条第3項)。
 休息時間の確保は、このように一般に努力義務となりますが、特定労務管理対象機関には義務になるなどの違いがあります(詳しくは、後述いたします)。

 

(3)特定労務管理対象機関制度の創設

ア.特定労務管理対象機関とは

 特定労務管理対象機関とは、地域医療の確保や集中的な研修実施の観点から、長時間労働の必要がある医療機関として都道府県知事に指定された機関のことをいいます。
特定労務管理対象機関には、⑵で記述した上限時間の違いがある他、異なる条件が課されています。
 特定労務管理対象機関には次の①~④があります。

 

①特定地域医療提供機関:

 次に掲げる医療を提供するために勤務する医師の労働時間がやむを得ず長くなる病院又は診療所として都道府県知事に指定された機関(第113条第1項)

・救急医療
・居宅等における医療
・地域において当該病院又は診療所以外で提供することが困難な医療

 

②連携型特定地域医療提供機関:

 医師の派遣を行うことによって、派遣される医師の労働時間がやむを得ず長くなる病院又は診療所として都道府県知事に指定された機関(第118条第1項)

 

③技能向上集中研修機関

 次の病院又は診療所で、やむを得ず当該機関で研修を受ける医師を長時間労働させる必要がある病院又は診療所として都道府県知事に指定された機関(第119条第1項)

・医師法第16条の2第1項に基づき臨床研修を行う医療機関として都道府県知事の指定する病院

・医師法第16条の11第1項に基づき医療に関する最新の知見及び技能に関する研修を行う病院又は診療所

 

④特定高度技能研修機関

特定分野における高度な技能を有する医師を育成するために、研修を受ける医師を長時間労働させる必要がある病院又は診療所として、都道府県知事に指定された機関(第120条第1項)

 

イ.特定労務管理対象機関についての申請

 特定地域医療提供機関は、当該病院又は診療所の申請によって、指定されるフローになっています。
 申請には、当該病院又は診療所で、勤務する医師や関係者の意見を聴いて、医師の労働時間を短縮する計画(労働時間短縮計画)の案を作成して、添付する必要があります(第113条第2項)。
 また、特定地域医療提供機関に指定されるには、法律上必要な面接指導・休息時間の確保を行うことができる体制が整備されていることが必要です(第113条第3項第2号)。

 

ウ.特定労務管理対象機関に関する規定

①労働時間短縮計画

 上記アの特定労務管理対象機関に指定された機関の管理者は、労働時間短縮計画を定めなければなりません(第114条、第118条第2項、第119条第2項、第120条第2項)。特定労務管理対象機関の管理者は、労働時間短縮計画に基づいて、医師の労働時間短縮のための取組を実施する必要があります(第122条第1項)。
 また、労働時間短縮計画は、厚生労働省の定める期間内に、勤務する医師や関係者の意見を聴いて、変更の必要性を検討しなければなりません。変更した場合、変更後の労働時間短縮計画は都道府県知事に提出する必要があり(第122条第2項)、変更の必要がない場合は、その旨を都道府県知事に届け出る必要があります(第122条第3項)。

 

②特定労務管理機関の指定の有効期間等

 特定労務管理対象機関の指定は3年毎に更新する必要があり、更新されないと効力を失うことになります(第115条第1項、第118条第2項、第119条第2項、第120条第2項)。また、特定労務管理対象機関の要件を欠くに至った場合は、特定労務管理対象機関の指定は取り消される場合があります(第117条、第118条第2項、第119条第2項、第120条第2項)。

 

③休息時間

 休息時間の確保は、⑵イで記載したとおり、義務となっています(第123条第1項本文)。ただし、やむを得ない事由によって、休息時間として確保すべき時間に医師を労働させる必要がある場合は、労働させることができます。この場合、労働させた時間の分、後で休息時間を確保しなければなりません(第123条第2項)。正当な理由なくこの休息時間の確保を行っていない場合は、改善命令が出される可能性があります(第126条)。
 もっとも、災害など避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合は、都道府県知事の許可を受けて、必要な限度で休息時間の確保を行わないことができます(第123条第4項)。
 上記と異なり、宿日直勤務の際には、宿日直勤務の後に、必要な休息時間を確保するよう配慮する義務があります(第123条第3項)。
 また、特定労務管理対象機関の管理者は、複数の病院又は診療所に勤務する医師に関する休息時間の確保のために必要がある場合は、その医師の勤務する他の病院又は診療所の管理者に対し、必要な協力を求めることができ、協力を求められた病院又は診療所の管理者は、その求めに応ずるよう努めることとされています(第125条)。

 

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