不動産証券化と不特法STOの概要

不動産証券化と不特法STOの概要

執筆:弁護士 山田達郎

 

 

第1 不動産証券化とは

1.不動産を証券化する意義

 不動産は、賃貸収入等により比較的安定的に収益をあげることができるものの、一般的に取引価格が高額なものとなります。そのため、不動産の所有者にとって、任意のタイミングで売却ができるとは限らず、また、投資家にとっても投資価格が高額になるため投資の対象としづらい物件といえます。

 このように、安定的な収益を上げることができる投資物件である不動産に対する投資を容易にし、その流動性を確保するため、事業会社などの不動産の所有者(オリジネーターと呼ばれます。)が、投資規模を小口化した証券を発行することで、不動産投資へのハードルを下げる手法として、不動産の証券化が用いられています。

 なお、国土交通省の調査によると、令和元年度に不動産証券化の対象として取得された不動産又は信託受益権の資産額は約4.1兆円、譲渡された資産額は約3.9兆円とされています。

 

(国土交通省:不動産証券化の実態調査より抜粋)

 

2.不動産証券化の代表的なスキーム

 上記のとおり、不動産証券化においては、証券を発行する必要があるため、証券を発行する器(SPVSpecial Purpose Vehicle)やSPCSpecial Purpose Company)と呼ばれます。)を用いたスキームを策定する必要があります。

 また、

  • 投資対象としての安定性を向上させるために、オリジネーターが行うその他の事業からくる倒産リスクから、対象不動産を隔離する必要
  • SPVを用いることによるSPVに対する課税、投資家に対する課税という二重課税の回避を図る必要

 という要請を実現する必要があります。

 このように、証券を発行し、上記の要請を実現するための代表的なスキームとして、(1)商法・会社法を用いたGK-TKスキーム、(2)資産流動化法を用いたTMKスキーム、(3)不動産特定共同事業法に基づくスキーム、そして、(4)投信法を用いたJ-REATが利用されています。

 これらのスキームでは、オリジネーターが設立したSPVがエクイティとデットで投資資金を調達することになります。

以下では、(1)商法・会社法を用いたGK-TKスキーム、(2)資産流動化法を用いたTMKスキーム、(3)不動産特定共同事業法に基づくスキームの概要を説明します。

 

(1)GK-TKスキーム

 GK-TKスキームは、一般社団法人等が100%の出資持分を保有するSPVとして合同会社(GK)を設立し、資金調達の方法として金融機関等からの借入(デッド)と、匿名組合出資(エクイティ)を組み合わせる方式です。

 GK-TKスキームでは、後述の不動産特定共同事業法の適用対象とならないようにするため、オリジネーターが不動産を信託銀行に信託譲渡し取得した信託受益権をSPVである合同会社(GK)に譲渡します。合同会社(GK)はこの信託受益権を裏付けとして、金融機関等から出資を受けることとなります。

 一般社団法人を合同会社(GK)の出資者とし、当該社団法人の社員及び理事にオリジネーターとは独立した者を選任することで、オリジネーターの倒産リスクからの隔離が図られています。また、匿名組合は法人税・所得税の納税義務を負わないため、二重課税の回避が実現されています。

 

 

 (2)TMKスキーム

 TMKスキームは、資産流動化法に基づき、特定目的会社(TMK)を設立し、資金調達の方法として金融機関等からの特定借入れ・特定社債(デッド)と、優先出資(エクイティ)を組み合わせる方式です。

 特定目的会社(TMK)が取得することができる資産については資産流動化法212条により制限されている資産を除き制限がないため、GK-TKスキームと異なり現物不動産を取得することが可能です。

 一方で、業務開始届出書を内閣総理大臣に提出する必要があり、当該届出書に資産流動化計画書を添付することが求められていることから、その業務の開始及び運営には一定のハードルがあるものと考えられています。

 オリジネーターが対象の不動産を特定目的会社に譲渡し、特定目的会社(TMK)は、この不動産を裏付けとして、金融機関等から出資を受けることになります。

 

 TMKスキームでは、資産流動化計画及びその附帯業務のほか、他の業務を営むことができず(資産流動化法1951項)、資金の借り入れに関しても制限があるため(資産流動化法211条等)、オリジネーターの倒産リスクからの隔離が実現されています。また、特定目的会社(TMK)は法人税の課税対象となりますが、対象事業年度に配当額が配当可能利益の90%超であること等の要件を満たせば利益の配当の損金算入が認められる結果、投資家に対する配当分について法人税課税が控除される仕組みとなっており、二重課税回避の仕組も備わっています(租税特別措置法第67条の14)。

 

 

 (3)不動産特定共同事業法に基づくスキーム

 不動産特定共同事業法(以下「不特法」といいます。)に基づくスキームとは、不動産会社等が不動産特定共同事業契約に基づいて投資家から出資を受け、不動産取引から生ずる収益又は利益の分配を行う不動産特定共同事業を行うスキームをいいます。

 不動産特定共同事業法に基づくスキームはいくつか方法がありますが、代表的なものとしては、不動産会社が「不動産特定共同事業契約を締結して当該不動産特定共同事業契約に基づき営まれる不動産取引から生ずる収益又は利益の分配を行う」(不特法241号)方法があります(この場合の不動産会社を第1号事業者と呼びます。また不動産特定共同事業契約の締結の媒介等を行う事業者を第2号事業者と呼びます。)。

 不動産会社が各投資家と不動産特定共同事業契約(任意組合契約)を締結する任意組合型の類型(不特法231号)、不動産会社が各投資家と個別に不動産特定共同事業契約(匿名組合契約)を締結する匿名組合型の類型(不特法232号)、不動産会社が投資家に不動産の共有持ち分権を譲渡し、当該共有持分権賃貸借契約又は賃貸人契約を締結し賃料収入を分配する類型(不特法233号)があります。

 また、不特法では、投資家に電子情報処理組織を使用する方法により不動産特定共同事業契約の締結の申込みをさせることが認められており(電子取引業務。不特法5110号)、いわゆる不動産クラウドファンディングもこの方法により実現されています。

 

 

 

第2 不特法STOとは

(1)STOについて

 STO(セキュリティ・トークン・オファリング)とは、セキュリティ・トークンを投資者に対して販売することをいいます。セキュリティ・トークンとは、法令上明確に定義された概念ではありませんが、株券等の有価証券に表示される権利を「電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されるものに限る。)に表示」したもの(電子記録移転権利)と考えられています(金融商品取引法23項参照)。

 合同会社の社員権や集団投資スキーム持分(金融商品取引法223号及び5号)といった、いわゆる第二項有価証券も、電子記録移転権利に該当する場合には、その高度の流通性から投資家保護の必要性が生じ、第一項有価証券として扱われ、有価証券届出書を提出し(金融商品取引法41項・同法51項)、投資家に対して目論見書を交付する義務を負うことになります(金融商品取引法152項)。

 有価証券としての性格を持つトークンをブロックチェーン上に乗せて発行する場合には多くの場合、電子記録移転権利に該当すると考えられます。

 

(2)不特法STO

 不特法STOも明確に定義された概念ではありませんが、上述の不特法にもとづく不動産クラウドファンディングを通じて出資をした投資家に対して、セキュリティ・トークンを発行する場合をいうことが多いかと思います。

 セキュリティ・トークンを出資持分と紐づけて発行することにより、出資持分の高度な流通性を確保することができ、投資家による出資のインセンティブとなると考えられます。

 また、不特法に基づく権利は集団投資スキーム持分から除外されているため第二項有価証券に該当せず(金融商品取引法225号ハ)、そのため電子記録移転権利にも該当しない結果、上述の第一項有価証券の開示規制には服しません。

 このように、不特法STOによることで、セキュリティ・トークンの流通性を確保しつつ不動産会社にとっては(開示規制に服さない等)負担が少ないスキームとなることが期待されます。

 

 

第3 まとめ

 以上のとおり、不動産投資を活性化させる目的として不動産証券化が利用されており、これに加えて、近年のブロックチェーン技術の発達により、不特法の出資持分とセキュリティ・トークンを紐づけるいわゆる不特法STOという手法も現れてきました。

 後者については、現時点で活発に利用されているというわけではなく、また二次流通がどのように実現されるかという点において今後議論と実例の蓄積が必要となりますが、より一層不動産投資の活性化が進むことが期待されています。

 

 

ICO・暗号資産(仮想通貨)のサービス詳細はこちら