薬機法改正―広告規制違反に対する課徴金制度の導入

薬機法改正―広告規制違反に対する課徴金制度の導入

執筆:弁護士 早崎智久弁護士 藤村亜弥

 

 

1.はじめに

 令和元年12月4日に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)等の一部を改正する法律」が公布されました。

(改正全体の概要は、以前にも書かせていただいておりますので、こちらをご参照ください。 )

 同法は、順次施行されておりますが、令和3年8月1日にも、同法の一部が施行されます。また、これに伴い、同日施行分について、関係政令及び関係省令が公布されるに至り、これらの政令・省令も、同日施行されることとなります。

 今回は、施行まで残すところおよそ3カ月(本稿作成日2021年5月)という状況を踏まえ、前回の「許可業者等の法令遵守体制の整備・強化」に続き、「広告規制違反に対する課徴金制度の導入」について、その大枠を解説します(厚生労働省 医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課「課徴金の導入について」)。

 

 

2.広告規制違反を対象とする課徴金制度の導入

 医薬品、医療機器等の効能・効果等に関する虚偽・誇大広告は禁じられておりますが(薬機法第66条第1項)、虚偽・誇大広告の違反事例は多数発生しており、社会的にも大きな影響を与えています。しかし、これまでは、違反に対する罰則は200万円以下の罰金(同法第85条第4号、第90条第2号)にとどまっており、違反広告により利益を得た業者に対しても、その利益を社会に還元させるような制度が無いことが問題点として指摘されておりました。

 そこで、今回の改正により、医薬品・医療機器等の虚偽・誇大広告に関し、虚偽・誇大広告の販売で得た経済的利益を徴収し、違反行為者がそれを保持し得ないようにすることによって違法行為の抑止を図り、規制の実効性を確保するための措置として、課徴金制度が導入されることになりました。

 今回制度化される課徴金納付命令は、

①「課徴金対象行為」をした場合に

②「課徴金対象期間」に行った取引の

③「課徴金対象行為に係る医薬品等の対価合計額」

に4.5%を乗じて得た額を納付することを命じられるというものです(同法第75条の5の2第1項)。

 以下では、上記各項目について何が対象となり、どうやって課徴金が算定されるのかについてその概要をご案内します。

 

(1)課徴金対象行為(薬機法第75条の5の2第1項)

 まず、①の「課徴金対象行為」についてご説明します。

 課徴金納付命令の対象となる「課徴金対象行為」とは、医薬品、医療機器等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する虚偽・誇大広告の禁止(同法第66条第1項)に違反する行為です(以下「違反広告」という。)(同法第75条の5の2第1項)。

 ただし、課徴金制度に係る経過措置として、施行日(2021年8月1日)より前に行われた違反行為は、課徴金納付命令の対象とはならないとされています。

 なお、同法第66条第1項で規制される広告の詳細につきましては、「広告の該当性」及び「医薬品等適正広告基準」をご参照いただければと思いますが、一般的には(ⅰ)顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昴進させる)意図が明確であり、(ⅱ)特定医薬品等の商品名が明らかにされており、(ⅲ)一般人が認知できる状態であるという3要件を満たしたものが「広告」に該当するものとなります(広告の該当性)。

 そして、医薬品等の名称、製造方法、効能、効果又は性能につき、その内容が製造販売承認等された事項と異なる広告をした場合には「虚偽」にあたるとされています。また、「誇大」であるかどうかは、実際のものよりも優良又は有利であると誤認させる広告をいい、具体的には「根治する」「一瞬で治る」といった効能効果・性能の確実さを保証する表現や、「日本一」「No.1」といった最大級の表現を用いることで「誇大」広告にあたるとされています。

 

(2)課徴金対象期間

 次に、②の「課徴金対象期間」ですが、原則として、違反広告を行っていた期間をいい、具体的には違反広告を始めた日からやめた日までの期間をいいます(薬機法第75条の5の2第2項)。

 ただし、違反広告をやめた日から、

(a)6か月を経過する日、

又は、

(b)「当該医薬品等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して誤解を生ずるおそれを解消するための措置」をとった日

のいずれか早い日まで

の間に、「課徴金対象行為に係る医薬品等の取引をした」場合は、当該「課徴金対象行為をやめてから最後に当該取引をした日までの期間」が加算されます(同項かっこ書)。これは、違反広告を止めても、その広告に基づいた取引がその後も生じることから、このような取引についても課徴金を課すことが合理的であるとの理由で加算されるものです。したがって、仮に違反広告をしてしまった場合は、単に問題のある広告を止めればよいというものではなく、誤解を生ずるおそれを解消するための措置を速やかに行う必要があります。

 そして、この「当該医薬品等の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して誤解を生ずるおそれを解消するための措置」とは、違反広告に係る記事等が同法第66条第1項に違反する虚偽・誇大広告に該当することを、時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法が規定されています(同法第75条の5の2第2項かっこ書、施行規則第249条の2)。

 なお、課徴金対象期間には上限が設定されており、上記の期間が3年を超える場合には、当該期間の末日から遡って3年間が課徴金対象期間とされます。もっとも、商品のライフサイクルを考えれば、3年というのは十分に長期の期間といえます。

 なお、これらの課徴金対象期間の計算は、景品表示法の課徴金と同様の枠組みが取られています。

 

(3)課徴金対象行為に係る医薬品等の対価合計額

 最後に、③の「対価合計額(課徴金対象行為に係る医薬品等の対価の額の合計額)」とは、違反広告を行った事業者による当該医薬品等の取引における販売額の合計額をいいます。要するに、違反広告による売上額をイメージすればよろしいかと思います。

 対価合計額の計算にあたっては、独占禁止法や景品表示法における課徴金額の算定方法と同様に、商品の品質不良等による値引額、返品額及び割戻金額が控除されます。また、同一の事案に対して、景品表示法の課徴金納付命令(景品表示法第8条第1項)が課されている場合には、対価合計額の3%(景品表示法の課徴金算定率)分が減額されます。

 

(4)その他

 課徴金対象命令は、売上高5000万円(課徴金額が225万円)未満の場合には出されません(薬機法第75条の5の2第4項)。

 また、虚偽・誇大広告を早期に発見するという観点から、違反広告に該当する事実を自主的に厚生労働大臣に申告した場合には、課徴金額の50%に減額する制度も設けられています(同法第75条の5の4)。ただし、調査があったことにより課徴金納付命令があるべきことを予知して報告しても減額はされません。

 なお、課徴金の対象者に対して、①業務改善命令(同法第72条の4第1項)若しくは措置命令(同法第72条の5第1項)(下記詳述)がなされる場合、又は②同法上の業許可・登録の取消し若しくは業務停止命令(同法第75条1項、第75条の2第1項)が行われる場合には、課徴金の納付を命じないことができるとされており(同法第75条の5の2第3項第1号、第2号)、課徴金納付命令を出すかどうかについて厚生労働大臣の裁量が認められています。

 

 

3.措置命令等

 課徴金納付命令と併せ、違反広告に対する行政措置として、措置命令も導入されています(薬機法第72条の5)。

 措置命令の対象は、医薬品等の虚偽・誇大広告(同法第66条第1項)並びに未承認の医薬品、医療機器及び再生医療機器等製品の広告(同法第68条)で、厚生労働大臣又は都道府県知事は、同法第66条第1項又は同法第68条の規定に違反した者に対して、違反広告の中止、その違法行為が再び行われることを防止するために必要な事項又はこれらの実施に関連する公示又はその他公衆衛生上の危険の発生を防止するに足りる措置をとるべきことを命じることができるようになります。

 

 

厚生労働省「課徴金制度の導入について」より引用(上述)

 

 

4.終わりに

 今回の薬機法改正に伴う広告規制違反に対する課徴金制度の導入は、医薬品・医療機器業界の事業者にとって、大きなインパクトを与えるものです。課徴金納付命令が下されるような事態を避けるためには、どのような情報提供活動が「虚偽・誇大広告」(同法第66条第1項)に該当するか、その適用範囲を正確に理解することが極めて重要です。

 

 また、すでに「虚偽・誇大広告」が行われているおそれがある場合、実際に広告規制に違反するのかどうかの確認や、違反していた場合の誤解解消措置の速やかな実施、官庁に対する自己申告を行うべきなのかを含めた慎重な対応が必要となります。

 GVA法律事務所では、同法に違反しない広告表現の調査等の予防法務から実際に違反してしまっていた場合の事後対応まで、全面的にサポートしておりますので、お気軽にお問い合わせください。

 

以上

 

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