<令和2年改正資金決済法シリーズ>第4回 第三種資金移動業について

<令和2年改正資金決済法シリーズ>第4回 第三種資金移動業について

執筆:弁護士 原田雅史

 

 

1 はじめに

令和2年6月5日に成立した「金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和2年法律第50号)(※1)によって改正された資金決済法(以下「改正資金決済法」といいます。)により、第一種資金移動業、第二種資金移動業及び第三種資金移動業の3類型が新たに創設されました(法第2条第2項、法第36条の2(この記事において引用する法令は断りのない限り改正法を指すものとします。))。今回は第三種資金移動業の概要について取り上げます。

本稿は、GVA法律事務所にて改正資金決済法の概要を整理した第4回目の記事になります。これまでの記事については、末尾のリンク先よりご覧ください。

 

 

2 第三種資金移動業の定義

第三種資金移動業は「資金移動業のうち、5万円相当額以下の資金の移動に係る為替取引のみを業として営むことをいう。」と定義されています(法第36条の2第3項、改正施行令第12条の2第2項)。第2回の記事でも触れたように、5万円未満の送金が約9割となっており、また、アカウント残高も5万円未満のものが9割以上となっている資金移動業の利用実態を鑑み、新しく設けられた少額類型になります。

 

 

3 滞留規制

第三種資金移動業者は、第三種資金移動業の各利用者に対し、5万円に相当する額を超える額の債務(第三種資金移動業に係る為替取引に関し負担する債務に限る。)を負担してはならないとされています(法第51条の3、改正施行令第17条の2)。そのため、例えば、ある利用者が、アカウント残高が4万円の他の利用者に対して3万円の送金を行う場合には、仮にこれを全額アカウントで受け取るとすると、当該利用者(受取人)のアカウント残高は7万円となり、受入上限額である5万円を超過することとなるため、これを防止する措置が必要となります。この措置としては、例えば、受取人のアカウント残高と送金人の送金予定額の合計が5万円を超える場合には送金不可とすることや、上限額を超過する2万円を自動的に銀行口座に出金する等の契約にすることなどの措置が考えられるとされています(※2)。

 

 

4 履行保証金の保全

(1)保全方法

第一種資金移動業や第二種資金移動業では、利用者資金の保全方法は、「供託」、「履行保証金保全契約」及び「履行保証金信託契約」の3つの方法が認められています(法第43条ないし第45条)。詳しくは、「第3回 第二種資金移動業について」をご覧ください。第三種資金移動業については、この3つに加え、「分別した預貯金等で管理すること」(以下「預貯金等管理」といいます。)が認められました。以下詳細を説明します。

(2)履行保証金

 預貯金等管理の説明の前に、まず、「履行保証金」について説明します。

 資金移動業者は、原則として、履行保証金を「供託」しなければなりません(法第43条第1項)。ただし、「履行保証金保全契約」により保全される金額や「履行保証金信託契約」により信託されている信託財産の額については、その範囲において供託をしないことができます(法第44条、第45条)。

 「履行保証金」とは、第一種資金移動業者においては、各営業日における第一種資金移動業に係る要履行保証額(資金移動業の種別ごとの各営業日における「未達債務の額」と「権利の実行の手続に関する費用の額」の合計額をいいます。以下同じ。)以上の額に相当する額をいい、第二種資金移動業又は第三種資金移動業においては、1週間以内に資金移動業の種別ごとに資金移動業者が定める期間ごとに、当該期間における第二種資金移動業又は第三種資金移動業に係る要履行保証額の最高額以上の額に相当する額をいいます(法第43条第1項及び第2項)。

 「未達債務の額」とは、資金移動業者が利用者(※3)に対して負担する為替取引に関する債務の額をいいます(法第43条第2項、改正府令第11条第3項各号参照)。具体的には、資金移動業者がある営業時間中に、送金人から受け取り、受取人にまだ払い出していない(債務を負担したままとなっている)送金資金の額が未達債務の額になります(※4)。

 「権利の実行の手続に関する費用の額」とは、万が一、資金移動業者が破綻した場合に、利用者が資金移動業者に預けた資金の全額の弁済を受けることができるよう、権利実行の手続に関する費用のことであり、これもあわせて保全することとされています。具体的には以下のように算出されます。

①未達債務の額が1億円以下の場合

未達債務の額の5%

②未達債務の額が1億円を超える場合

未達債務の額から1億円を控除した残額の1%に500万円を加えた額

 

【履行保証金】

(3)預貯金等管理

 第三種資金移動業者は、法令に掲げる事項を記載した届出書を内閣総理大臣に提出したときは、第三種資金移動業に係る履行保証金の全部又は一部の供託をしないことができます。この場合において、当該資金移動業者は、第三種資金移動業に係る各営業日における未達債務の額に預貯金等管理割合を乗じて得た額以上の額に相当する額の金銭を預貯金等管理の方法により管理しなければならないとされています(法第45条の2、改正府令第21条の3)。

 また、「預貯金等管理割合」とは、第三種資金移動業に係る未達債務の額のうち預貯金等管理方法により管理する額の当該未達債務の額に対する割合をいいます(法第45条の2第1項第2号)。第三種資金移動業者のうち預貯金等管理の方法による管理を希望する者は、預貯金等管理割合を記載して届出書を提出することになっています(※5)。

 さらに、預貯金等管理の方法により管理する場合、「要履行保証額」は以下の表にある2つの額の合計額をいいます(法第43条第2項)。

基礎額(※6)(法第43条第2項)

各営業日における未達債務の額から当該各営業日における未達債務の額に預貯金等管理割合を乗じて得た額を控除した額

権利の実行の手続に関する費用の額(改正府令第11条第6項各号)

①基礎額が1億円以下の場合

⇒未達債務の額の5%

②基礎額が1億円を超える場合

⇒未達債務の額から1億円を控除した残額の1%に500万円を加えた額

 少しわかりにくいので具体例を使って説明します。例えば、預貯金等管理割合を20/100として届け出た第三種資金移動のみを営む事業者がいて、ある営業日の未達債務の額が3000万円だったとします。この場合、当該事業者は、未達債務の額である3000万円に預貯金等管理割合である20/100を乗じた600万円以上を預貯金等管理の方法により管理する必要があります。

次にこの場合の「要履行保証額」を計算します。「要履行保証額」は上記の通り、「基礎額」と「権利の実行の手続に関する費用の額」の合計額になります。これを計算すると以下のようになります。すなわち、2520万円(2400万+120万)を供託等の方法によって保全する必要があります。

なお、預貯金等管理割合が100/100の場合には、3000万円を預貯金等管理の方法により管理すればよく、「供託」などにより資産保全する必要はありません。預貯金等管理割合が100/100の場合の要履行保証額は0円となるからです(法第43条第2項ただし書、改正資施行令第14条第2号)

(4)預貯金等管理方法に係る監査

預貯金等管理の方法による管理を行う資金移動業者は、預貯金等管理方法による管理の状況について、毎年1回以上、定期に、公認会計士又は監査法人の監査を受けなければなりません(法第45条の2第2項、改正府令第21条の5)。

 

 

5 おわりに

今回、改正資金決済法により新しく創設された第三種資金移動業の概要をご紹介いたしました。第三種資金移動業は、預貯金等管理割合を100/100とすることにより、最低要履行保証金が0円となるため、従来1000万円の最低要履行保証金が必要だったことを考えると、資産保全義務が緩和されたと考えられます。参入ハードルが下がったことで、今後はより多くの事業者が参入することが考えられます。具体的にどのようなサービスが登場するかは未知ですが、いわゆる「投げ銭」サービスにおいて活発に利用されることが想定されるのではないかと考えます。第三種資金移動業と「投げ銭」については、また別の機会に書かせていただく予定です。

次回は、第一種資金移動業をご紹介させていただきます。

以上

 


 

過去記事

第1回 「為替取引」に関する規制について(執筆:境孝也)

第2回 資金移動業の種別について(執筆:原田雅史)

第3回 第二種資金移動業について(執筆:原田雅史)

 

※1

https://www.fsa.go.jp/common/diet/201/index.html

※2

事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係14資金移動業関係)の一部改正(案)(新旧対照表)57頁

※3

正確には改正府令第11条第3項第1号、第2号をご確認ください。

※4

堀天子「実務解説 資金決済法(第4版)」、85頁(商事法務、2019年)

※5

資金移動業者に関する内閣府令の一部改正(案)・別紙様式第15号、103~104頁参照

https://www.fsa.go.jp/news/r2/sonota/20201225-2/04.pdf

※6

法令に「基礎額」という用語が使われているわけではないのですが、本稿においては便宜上このように呼ばせていただきます。

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