<令和2年改正資金決済法シリーズ>第1回「為替取引」に関する規制について

<令和2年改正資金決済法シリーズ>第1回「為替取引」に関する規制について

執筆:弁護士 境孝也

 

 

1 はじめに

 令和2年6月5日に成立した「金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和2年法律第50号)(※1)により、資金決済法に関する「資金移動業の規制の見直し」等が行われることとなりました。そして、令和2年12月25日に、今回改正された資金決済法(以下「改正資金決済法」といいます。)に関する政令・内閣府令案等(※2)が金融庁より公表され、規制の具体的な変更内容が明らかになってきました。

 GVA法律事務所では改正資金決済法の概要について改めて整理するために、その概要について複数回に亘って記事を公表いたします。本稿では、その第1回目として、改正資金決済法下における「為替取引」に関する規制について整理していきます。この「為替取引」に関する規制は、収納代行、エスクロービジネスを始めとしたフィンテックに深く関係する規制となりますので、関係するビジネスを展開される事業者の方は特にご留意ください。

 

 

2 これまでの「為替取引」について

 まず、「為替取引」とは、銀行法(第2条第2項第2号)や資金決済法(第2条第2項)に規定される概念で、この「為替取引」を行うためには「銀行業の免許」又は「資金移動業の登録」を取得しなければならないとされています。

 そして「為替取引」の意味については、「顧客から、隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受けること、又はこれを引き受けて遂行すること」(最高裁平成13年3月12日決定)とされています。

 そのため、資金が移転されるに当たってその当事者間に事業者が介在する場合には、為替取引に該当するか否かについて検討する必要があります。例えば、収納代行やエスクロービジネス等に関しては、伝統的にこの為替取引に該当するか否かについて議論が行われてきました。この詳細については、以前に紹介した記事(※3)をご覧ください。

 

 

3 改正資金決済法における「為替取引」について

 改正資金決済法第2条の2では、「為替取引」に関する考え方が一歩進められて、新たに「為替取引」に該当する場合が示されることとなりました。次の①と②のいずれも満たす場合には、「為替取引」に該当することとされています。

①受取人(金銭債権を有する者。以下同じ。)からの委託、受取人からの金銭債権の譲受けその他これらに類する方法により、当該金銭債権に係る債務者又は当該債務者からの委託(二以上の段階にわたる委託を含む。)その他これに類する方法により支払を行う者から弁済として資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、当該受取人に当該資金を移動させる行為(当該資金を当該受取人に交付することにより移動させる行為を除く。)

②受取人が個人(事業として又は事業のために受取人となる場合におけるものを除く。)であることその他の内閣府令で定める要件を満たすもの

 そして、令和2年12月25日に公表された改正資金決済法に関する内閣府令案(以下「改正府令案」といいます。)第1条の2では、上記②の要件として、「受取人が個人(事業として又は事業のために受取人となる場合におけるものを除く。)」であって、かつ、次の⑴~⑶のいずれかに該当することとされています。

⑴ 受取人が有する金銭債権に係る債務者又は当該債務者からの委託(二以上の段階にわたる委託を含む。)その他これに類する方法により支払を行う者(⑶において「債務者等」という。)から弁済として資金を受け入れた時(他の者に資金を受け入れさせる場合にあっては、当該他の者が弁済として資金を受け入れた時)までに当該債務者の債務が消滅しないものであること

⑵ 受取人が有する金銭債権が、資金の貸付け、連帯債務者の一人としてする弁済その他これらに類する方法によってする当該金銭債権に係る債務者に対する信用の供与をしたことにより発生したものである場合に、当該金銭債権の回収のために資金を移動させるものであること

⑶ 次に掲げる要件のいずれにも該当すること(イとロの全てに該当すること)

 イ 受取人がその有する金銭債権に係る債務者に対し反対給付をする義務を負っている場合に、当該反対給付に先立って又はこれと同時に当該金銭債権に係る債務者等から弁済として資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、当該反対給付が行われた後に当該受取人に当該資金を移動させるものでないこと

 ロ 受取人が有する金銭債権の発生原因である契約の締結の方法に関する定めをすることその他の当該契約の成立に不可欠な関与を行い、当該金銭債権に係る債務者等から弁済として資金を受け入れ、又は他の者に受け入れさせ、当該受取人の同意の下に、当該契約の内容に応じて当該資金を移動させるものでないこと

 つまり、次の1)か2)のいずれかに該当すれば、少なくとも直ちに「為替取引」には該当しない旨が明らかになりました。なお、今回の改正資金決済法及び改正府令案によっても、次のいずれかに該当すれば「為替取引」に絶対に当たらないとまでは言い切ってはいないので、この点は注意が必要です。

  1. 受取人が国、地方公共団体、事業者(個人事業主を含みます。)等の個人以外の者であること(改正府令案第1条の2柱書)
  2. 上記⑴~⑶のいずれかに該当すること。なお、⑴はいわゆる収納代行を、⑵は主に割り勘アプリを、⑶はエスクローサービスを想定していると思われますが、これらのみに限られるものではありませんので、サービス毎に個別に検討する必要があります。この点については、現に、事務ガイドライン(資金移動業者)-2の改正案(※4)では、「法第2条の2の規定は、同条に定める行為であって、内閣府令で定める要件に該当するものが為替取引に該当することを確認するものであるところ、今後新たなビジネスモデルが登場する可能性等もあることから、同条に定める行為に該当しない行為及び同条に定める行為には該当するが内閣府令に定める要件に該当しないものが将来にわたって直ちに為替取引に該当しないことを意味するものではなく、事業者の行為が為替取引に該当するかは、その事業者が行う取引内容等に応じ、最終的には個別具体的に判断することに留意する。」と記載されています。

 

4 おわりに

 今回、改正資金決済法と改正府令案により「為替取引」に関する考え方が整理されましたので、これを元にして今後のビジネス設計を決める必要がありますが、基本的には、従前の実務や金融庁の考えが法令化されたというもので、現状のビジネスが直ちに違法になるということはないと思われます。もっとも、この後に本シリーズで紹介するとおり、「第三種資金移動業」という新たな制度も登場していますので、収納代行スキームの他にも資金移動に関与する方法は増えたと言え、決済サービスを提供する事業者の方の選択肢はより広がったのではないかと思います。

 

 

※1 https://www.fsa.go.jp/common/diet/201/index.html

※2 https://www.fsa.go.jp/news/r2/sonota/20201225-2/20201225-2.html

※3 『収納代行サービス等に関する規制の変化とFinTech(フィンテック)ビジネスについて』
     https://gvalaw.jp/9242

※4 https://www.fsa.go.jp/news/r2/sonota/20210319-2/07.pdf

 

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