有償ストックオプションとは

有償ストックオプションとは

執筆:司法書士 朴章文(パク チャンムン)

 

 

ベンチャー企業の多くは税制適格ストックオプションを活用していますが、最近では有償ストックオプションを従業員や役員に付与する企業も増えてきています。
そのため、本稿では有償ストックオプションについて見ていくことにします。

 

有償ストックオプションとは

企業が役員や従業員にストックオプションを付与する場合、ストックオプションを行使する際に課税されてしまう、いわゆる「キャッシュ・インなき課税」(詳細は「税制適格ストックオプション(非税制適格ストックオプションとの対比)」をご覧ください。)が行われることを防ぐため、租税特別措置第29条の2の税制適格要件を満たすように設計する、税制適格ストックオプションを付与するのが一般的です。
もっとも、一定数の株式を保有している創業者(オーナー)にストックオプションを付与する場合には、大口株主への付与に該当するため、その他の要件を満たす場合であっても、結果的に税制非適格となってしまうことが多いのが実情です。
このような不都合を回避するために発行されるストックオプションが有償ストックオプションとなります。
有償ストックオプションの場合、税制適格ストックオプションと同様に、ストックオプションの付与時及びストックオプションの権利行使時にはいずれも課税がされず、ストックオプションの行使により取得した株式の売却時(譲渡時)のみ課税されることとなります。
他方、税制適格ストックオプションは、ストックオプションの付与時に付与対象者である役員や従業員等は何ら金銭を支払う必要はありませんが、有償ストックオプションは、ストックオプションの付与時に、付与対象者がストックオプションの公正価値に基づく発行価額(金額)を払い込む必要があります。
未上場会社のストックオプションの時価(ストックオプションの公正価値)については、一般の方が算定することが困難であるとされているため、税務・会計の専門家に相談した上でスキームを組むことをおすすめします。
なお、行使価格(新株予約権を株式に転換するために会社へ払い込む金銭)が定められる点については、税制適格ストックオプション、有償ストックオプションのいずれによっても異なるところではありません。

 

 

有償ストックオプションのメリットとは

①税務面で有利になる(税率が軽減される)

税制適格要件を満たさない無償のストックオプションの場合、無償で発行・付与され、税務上労働の対価として取り扱われていることから、ストックオプションの行使時に、権利行使時の株価と権利行使価格との差額について給与所得として課税されることとなります。
一方で、有償ストックオプションの場合には、役員や従業員であっても適正な対価を支払った上でストックオプションを取得しているため、ストックオプションの行使時に課税されることはありません(※)。

 

※ストックオプションの行使時に課税される場合には給与所得課税(最大約55%)が課されることになります。一方で、行使により取得した株式の売却時(譲渡時)の課税については、譲渡所得課税(最大約20%)とされています。

 

②付与対象者のモチベーションの向上につながる

有償ストックオプションの場合、権利を行使するための条件(例えば、1年後に売上10億円等)が設定されることとなり、かかる条件を達成しないとストックオプションを行使することができない内容となっています。そのため、付与対象者において、会社の業績を向上させることについてインセンティブが働きます。
また、有償ストックオプションの場合、付与される際に付与対象者自身で金銭を支払うこととなるため、「支払った金銭を取り戻す」という意味でもインセンティブが働くこととなります。

 

③社外協力者に対して付与することも可能である

有償ストックオプションには、税制適格ストックオプションのような人的要件が課されておらず、自社の役員や従業員に限らず社外協力者に対して付与することも可能です。
そのため、外部から優秀な人材を登用したいが雇用するほどの資金的な余裕のない企業においては、有償ストックオプションを活用することで、資金の流出なく、優秀な人材の協力を得ることができます。

 

④役員に付与する場合であっても報酬決議が不要

通常、役員に対してストックオプションを付与する場合には、会社法上「報酬等」に該当します(会社法第361条)。一方で、有償ストックオプションについては、公正な価額で発行する限り、税務上は有価証券(金融商品)として取り扱われていることから、役員に対して付与した場合であっても「報酬等」には該当せず、株主総会において報酬決議を経る必要がありません。
公開会社の場合、ストックオプションの発行自体は取締役会の決議で可能であるため、機動的なストックオプションの発行が可能となります。
なお、非公開会社の場合には、ストックオプションの発行自体に株主総会の特別決議が必要となるため、報酬決議が不要であることはメリットとはなりません。

 

 

有償ストックオプションのデメリットとは

①手元資金に余裕がないと利用できない

ストックオプションの付与時に発行価額の払込みが必要となるため、手元資金に一定の余裕のある者でないとスキームを利用できないこととなります。ただし、有償ストックオプションの行使条件等の設計次第では、ストックオプションの公正価値(評価額)を大幅に引き下げることが可能です。

 

②ストックオプションの公正価値の算定に一定の費用が発生する

既に述べたように、ストックオプションの公正価値については、一般の方が適切に算定することは困難であることから、税務・会計の専門家に相談する必要があります。この場合、専門家や相談の範囲によっても異なりますが、少なくとも50~100万円程度の費用が発生することとなるので、有償ストックオプションを発行することによるメリットをしっかりと検討した上で、発行の有無を判断する必要があります。

 

③行使条件を達成しないと行使できない

有償ストックオプションは、行使条件を定めることで公正価値を下げて、付与対象者の金銭的な負担を減らすことができます。もっとも、行使条件が厳しすぎると、会社が当該条件を達成することができず、結果としてストックオプションを行使できなくなるリスクがあります。
行使条件を厳しくすれば厳しくするほど公正価値が下がり、付与対象者の金銭的な負担は減りますが、その分行使できなくなるリスクが高まりますし、達成が困難な条件が設定されてしまうと付与対象者にとってインセンティブが働かなくなる可能性があるので、このあたりのバランスは非常に大事になってきます。

 

 

有償ストックオプションの活用場面とは

上記のメリット・デメリットから、有償ストックオプションの活用場面としては、以下のようなケースが考えられます。

  • 創業者である代表取締役へ付与する
  • 監査役へ付与する
  • 社外協力者へ付与する
  • 特許の譲渡代金の対価の一部として付与する

 

最後に

上記のとおり、税制適格ストックオプションが付与できない対象者にインセンティブを付与したい場合や、役員・従業員たちのインセンティブをより高めたいというような場合には、有償ストックオプションの発行を是非ご検討ください。
弊所では、これまで多くのクライアントから有償ストックオプションに関するご相談・ご依頼をいただいておりますので、ご検討される場合は是非弊所までお問い合わせいただければ幸いです。
なお、ストックオプションに詳しい税理士・会計士のご紹介も可能となっております。

 

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