中国法速報:中国政府が「中華人民共和国輸出管理法」を制定、12月に施行

中国弁護士(Not admitted in Japan)李 昱昊

 

 

 20201017日、「中華人民共和国輸出管理法」(以下、「輸出管理法」と称します。) (1)は、第13期全国人民常務委員会第22回会議で正式に採択され、立法されました。今年121日に施行されます。

 輸出管理法の成立は、中国との貿易を行っている企業様に大きな影響を及ぼす可能性があるため、弊所では速報として輸出管理法について要点を纏めご紹介致します。

 

 

 一、立法の背景

 高度完備及び成熟したアメリカ、日本及びEUなどの先進国の輸出管理体制と比べて、 長い間、中国の輸出管理の分野においては、法律レベルの特化した法規は存在しませんでした。現行の輸出管理法制度や法的ルールは、比較的に、制定時期が早く、法規範としてのレベルが低く、法体系になっていないことなどの欠点が存在しており、法の執行においても多くの問題を起こしています。また、輸出管理の措置も先進国の同類措置に比べ、対等的になっておらず、かつバランスもとれていないと思われます。この状況に対して、中国が、近年、航空宇宙、人工知能、通信などのハイテク分野で、大きな進歩を遂げており、対外貿易も急速に発展してきたため、いかに企業の合法的権利利益を有効に守り、コア技術、コア製品の優位性及びその輸出に関する安全性を確保するかは、中国政府にとって急務となっています。

 近年、いわゆる「中米貿易戦」及び米国等の国の輸出規制分野における法執行活動により、 多くの国の企業の国際経済活動と多国籍経営活動が様々な影響と制限を受けております。この事態は、広範な関心を引き起こしているだけでなく、中国政府による輸出管理分野の関連立法活動対しても促したように思われます。

このような背景において、中国の「輸出管理法」正式な公布によって、既存の輸出管理制度が整理され、法律として中国の輸出管理制度の基本的な枠組みと手続きの規則が構築され、「輸出管理法」は、今後、中国の急速に整備されている輸出管理法律体系の中の「基本法」になると思われます。「輸出管理法」の実施は、 中国の輸出管理法体系の空白を埋め、今後の中国の輸出管理関連法体系の完備と輸出管制制度の効果的な実施のために、堅実な基礎を打ち立てました。

 また、近年、国際貿易摩擦がエスカレートし、関係国が輸出管理分野の法執行を強化するという大きな背景の中で、「輸出管制法」の実施は、中国が輸出管理事務を堅実にを実施し、国際の新しい情勢に対応するための制度的保障を提供したと思われます。

 

 

二、立法の過程

 中国の安全と利益をより一層守るため、中国政府は、2016年に「輸出管理法」を正式に立法計画に組み入れました。

 2017年616日、中国商務部は先頭に立って「輸出管理法(草案意見募集稿)」を起草し、社会からの意見公募を行いました。その後、中国司法部は、さらに関係部門、地方政府、企業と業界協会の意見を募集し、中央財政弁公室、発展改革委員会、中央軍事委員会法制局など55の部門と共同で「輸出管理法(草案)」を制作しました。

 2019年1228日、第13期全国人民大会第15回会議で「輸出規制法(草案)」が第1回審議されました。

2020年628日、13期全国人大会第20回会議では「輸出規制法(草案二次審議原稿)」が審議されれました。

 

 

三、「輸出管理法」が規制する対象者及び域外管轄

 「輸出管理法」は、輸出入活動に関係する対象者を規制しており、以下のものが含まれるとされています。

  • 輸出経営者
  • 輸出入活動にサービスを提供する第三者(代理、貨物輸送、郵送、通関申告、第三者電子商取引プラットフォーム及び金融等のサービスを提供する第三者を含む)
  • 国外輸入業者及びエンドユーザー

 以上のような規定を鑑み、「輸出管理法」は、域外管轄の効力を有していると思われます。

また、「輸出管理法」第44条の規定によると、「中華人民共和国国外の組織及び個人が、輸出管制管理に関する規定に違反し、中華人民共和国の国家安全と利益に危害を及ぼし、拡散防止などの国際義務の履行を妨害した場合、法に基づき処理され、その法的責任を追及される」と規定されています。

 さらに、「輸出管理法」では、海外からの輸入者やエンドユーザーを対象とした「管理リスト」制度も規定されているため、輸出規制法上の義務に違反した者が、「管理リスト」(又は「信頼を欠くエンティティリスト」)に含まれる対象者のなる可能性も存在します。

 

 

四、「輸出管理法」が規制する管理対象品目

 「輸出管理法」においては、関係主管当局が管理対象者の輸出入活動に対して、管轄権を行使するための基礎が管理対象品目となります。すなわち、関係主管当局は、原則として、管理対象品目に該当する品目にかかる管理対象者の輸出入活動のみに対して、「輸出管理法」に基づく管理措置を採ることが可能となっています。輸出管理法に規定されている管理対象品目は、次のようになっています。

  • 民事用途と軍事用途の両方を有し、又は軍事潜在力の向上に資する両用品。特に大量破壊兵器及びその運搬手段の設計、開発、生産又は使用に用いることができる貨物、技術及びサービス。
  • 軍事目的に用いる装備、専用生産設備及びその他の関連貨物、技術及びサービス等の軍需品。
  • 核材料、核設備、原子炉用非核材料及び関連技術とサービス等の核関連品。
  • その他国家の安全と利益の擁護、拡散防止などの国際義務の履行に関連する貨物、技術、サービスなどの品目。
  • 管理品目に関連する技術資料などのデータ。

 具体的な管理対象品目については、関係主管当局が「輸出管理リスト」を通じて公布することとなります。また、上記の「輸出管理リスト」以外にも、臨時管理制度の導入によって臨時的に管理品目を追加することが可能となっています。

 「輸出管理法」第9条の規定によると、 「国家輸出管制管理部門は、本法及び関連法律、行政法規の規定に基づき、輸出管制政策に基づき、規定の手順に従い関連部門と共同で管理品目の輸出管制リストを制定、調整し、併せて適時公布する。国家の安全と利益を守り、拡散防止などの国際義務を履行する必要に基づき、国務院の批准を経て、又は国務院、中央軍事委員会の批准を経て、国家輸出管制管理部門は、輸出管制リスト以外の貨物、技術及びサービスに対して臨時管制を実施することができる」とされています。

 

 

五、「輸出管理法」が規制する対象活動の範囲

 輸出管理法においては、管理対象者が従事する管理対象品目にかかる以下の「輸出」活動が、輸出管理措置の直接の規制対象活動になると規定されています。

  • 中華人民共和国国内から国外への管理品目の移転。
  • 中国実体から外国実体へ管理品目の提供。
  • 管制物項目の通過・中継輸送・通運・再輸出。
  • 保税区・輸出加工区等の税関特殊監督管理区域及び輸出監督管理倉庫・保税物流センター等の保税監督管理場所から国外への輸出。

 「輸出管理法」は、草案の意見募集過程で多く議論されていた「再輸出」、「みなし輸出」という行為について、管理対象活動の範囲に含まれるというように原則的な規定のみをおきましたが、当該行為に関する具体的な認定ルールについては、「輸出管理法」実施細則等によって、具体化されることになると思われます。

 

 

六、「輸出管理法」における輸出許可制度

 「輸出管理法」における管理規制方法の一つとは、輸出許可制度となります。輸出経営者は、管理輸出品目を輸出する前に、関係主管当局に対して輸出許可を申請しなければならないとされています。

 「輸出管理法」においては、関係主管当局が当該許可申請を審査する際、国家の安全及び利益、中国の国際義務及び対外承諾、輸出類型、管理対象品目の機敏度、輸出目的国家又は地区、エンドユーザー及び最終用途、輸出経営者の関連信用記録及び法律行政法規が規定するその他の要素を総合的に考慮しなければならないとされています。

 「輸出管理法」は、輸出業者には、エンドユーザーおよび最終用途について、エンドユーザーまたはエンドユーザーが位置する国又は地域の政府機関によって発行された証明書を提出する義務があると規定しています。また、エンドユーザーが、管理対象品目の最終用途を無断で変更すること、または無断で第三者に譲渡することが禁止されています。さらに、輸出事業者及び輸入事業者は、エンドユーザー又は最終用途が変更される可能性があることが発覚した場合、直ちにそれを関係管理当局に報告しなければならないとされています。

 

 

七、「輸出管理法」における管理リスト制度の導入

 「輸出管理法」は、管理リスト制度を導入しました。関係主管部門は、当該管理リストに入った国外の個人及び組織に対して、必要に応じて、関係管理品目の取引の禁止又は制限、関係管理品目の輸出を中止する命令などの制限措置を講じることができます。輸出経営者には、上記制限措置に従う義務があり、当該外国の個人又は組織と取引を行ってはならないと義務付けられています。

 具体的には、以下のいずれかの場合に該当する外国籍の個人及び組織が管理リストに含まれる可能性があるとされています。

  • エンドユーザーまたは最終用途の管理要件に違反した場合。
  • 国家の安全と利益に危害を及ぼす可能性がある場合。
  • 管理対象品目がテロリズムの目的に使用される場合。

 

 2020919日、中国商務部は「信頼を欠くエンティティリスト規定」(商務部令2020年第4号)(※2)を公布し、特定行為を実施する外国エンティティに対して、制裁措置を講じるための信頼を欠くエンティティリスト制度を導入しました。

 「管理リスト」と「信頼を欠くエンティティリスト」との関係という観点から考察すると、両リストにかかる制度は、「国家安全」又は「利益」に危害を及ぼす行為が存在する外国エンティティをリスト対象に含まれる可能性がある点、当該外国エンティティに関係する輸出入取引の制限又は禁止という制限措置が取られる点などにおいて、一定の類似性があると思われます。

一方、「管理リスト」は、管理対象品目の輸出にかかる制限措置のみが基本となっているのに対し、管理対象品目以外の一般品目の輸出制限や国内投資の制限、関係者の入国制限、罰金なども含まれるという点から見ると、「信頼を欠くエンティティリスト」の方にかかる制裁措置の方が、「管理リスト」にかかる制裁措置と比べて、より幅広い範囲に及ぶものと思われます。

 

 

八、「輸出管理法」における禁輸制度

 禁輸制度は、「輸出管理法」の中の最も厳しい制限措置となります。「輸出管理法」においては、中国国務院の許可、又は中央軍事委員会の許可を経て、関係主管当局は、関連当局と共同で、以下の禁輸措置をとることができるとされています。

  • 関連管理対象品目の輸出禁止。
  • 関連管理対象品目の特定目的国及び地域への輸出の禁止。
  • 関連管理対象品目の特定の組織又は個人への輸出の禁止。

 

 

九、「輸出管理法」における罰則規定

 「輸出管理法」は、輸出経営者又は輸出入活動にサービスを提供する第三者による違反行為に対して、1回の違反行為に対する行政罰の罰金額を、最大で違法取引額の20倍までにすることができると規定し、比較的に重い行政処罰基準を設けています。

 これ以外に、違法所得の没収、関連管理対象品目の輸出経営資格の取消、及び輸出許可の申請に対する一定期間の受理の拒否等の関係主管部門による行政罰が設けられています。

更に、関係主管部門は、行政処罰を受けた企業及び当該企業の主管者及びその他の直接責任者に対して、一定期間で関係輸出経営活動に従事することを禁止する或いは終身禁止する措置を採ることができるとされています。

 刑事責任に関しては、「輸出管理法」は、「輸出禁止管理品目の輸出」及び「管理品目の無許可輸出」との行為に刑事責任を追求することを明記して規定しています。上記行為は、現行の中国刑法における「国家輸出入禁止貨物・物品密輸罪」又は「不法経営罪」等の犯罪に該当する可能性があると思われます。上記関連犯罪の罰則には、いずれも両罰規定が設けられています。つまり、企業による犯罪が認定された場合、当該犯行に直接責任がある主管者やその他の直接責任者も刑事責任を負うこととなります。

 

 

十、結び

 以上で述べたように、「輸出管理法」の制定及び施行は、中国に関係する輸出入業務に重大な、かつ直接的な影響を与えるのみならず、関連業務を行う企業も、「輸出管理法」に対するコンプライアンス対応が急に求められるようになりました。今後、日系企業も「輸出管理法」に関連する立法と執法の動向に注意しつつ、対策を錬る必要があると考えます。

 

 

参考

1「中華人民共和国輸出管理法」原文は、中国全国人民代表大会ウェブサイト(中文)を参照。

http://www.npc.gov.cn/npc/c30834/202010/cf4e0455f6424a38b5aecf8001712c43.shtml

 

2「信頼を欠くエンティティリスト規定」の詳細については、著者執筆の「中国法速報:中国政府が「信頼を欠くエンティティ(事業体)リスク規定」を公表・施行」を参照。

https://gvalaw.jp/11042

 

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