2020.09.24

リツイート事件最高裁判決(令和2年7月21日)から学ぶ企業対応

リツイート事件最高裁判決(令和2年7月21日)から学ぶ企業対応

執筆:弁護士 鈴木景

執筆:弁護士 箕輪洵

執筆:弁護士 宮本真衣

 

 

 2020(令和2)年7月21日、最高裁判所において、ツイッターにおけるリツイート行為が氏名表示権を侵害する旨の判決がなされました(以下「本判決」といいます。)。ツイッターは現在、国内だけでも約4500万人が利用しているとされており(※1)、企業のプロモーションにおいても欠かせないツールとなっていることから、本判決は社会からの注目を浴びています。
 今回は、本判決の内容を紹介した上、各企業における留意点等について解説します。

 

第1 事案の概要

 本件は、写真家VS米国ツイッター社という構造で争われた事案になります。事案を簡潔にまとめると、以下のとおりです。
 写真家(以下「本件写真家」といいます。)は、自身が撮影した写真(以下「本件写真」といいます。)を、自身のウェブサイトに掲載しました(以下、当該ウェブサイトに掲載された画像を「本件写真画像」といいます。)。
 その際、本件写真家は、本件写真画像の隅に「©」マークと、自身の氏名のアルファベット表記(以下「本件氏名表示部分」といいます。)を付加していました。 そうしたところ、本件写真家に無断で、本件写真の画像ファイルを含むツイート(以下「本件ツイート」といいます。)が行われ、また、当該ツイートが、別の者(以下「本件リツイート者」といいます。)により、リツイートされました。

 

 このような形でリツイートされた場合、ツイッターの仕様上、元のツイート(本件ツイート)に用いられていた本件写真画像はトリミングされた形で表示されることになり、本件氏名表示部分が表示されない状態になります。そして、トリミングされた表示をクリックすることで、本件写真画像全体を見ることができ、これにより本件氏名表示部分も確認できる、という仕様になっていました。

 

 具体的には、以下の画像のように、元の写真画像(左)が、ツイッター上でリツイートした場合、トリミングされた状態(右)で表示されることになります。そして、<リツイートした画像の見え方>で表示されている写真をクリックすることで、<元の写真画像>が表示される仕組みになっています。<元の写真画像>には右下部分に©マーク付きの氏名表示が見えますが、<リツイートした画像の見え方>では、下部がトリミングされることで氏名表示が見えない状態となります。
 本件写真画像も、以下の画像と同様に右下部分に氏名表示がされていましたが、リツイートした場合には画像をクリックしなければ氏名表示が見えない状態となっていました。

 

 これを受け、本件写真家は、米国ツイッター社に対して、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)4条1項に基づき、本件リツイート者の発信者情報(氏名、住所、メールアドレス等)を開示するよう求めました。
 本件では、本件リツイート者による本件リツイートが本件写真家の氏名表示権を侵害するといえるか否かが問題となりました(※2)。

 

 

第2 判示内容

 最高裁判所は、以下のとおり、本件リツイート者による本件リツイートが本件写真家の氏名表示権を侵害すると示しました(※3)。

 

「被上告人(筆者注:本件写真家)は,本件写真画像の隅に著作者名の表示として本件氏名表示部分を付していたが、本件各リツイート者が本件各リツイートによって本件リンク画像表示データを送信したことにより、本件各表示画像はトリミングされた形で表示されることになり本件氏名表示部分が表示されなくなったものである…。また、本件各リツイート者は、本件各リツイートによって本件各表示画像を表示した本件各ウェブページにおいて、他に本件写真の著作者名の表示をしなかったものである。
 そして、本件各リツイート記事中の本件各表示画像をクリックすれば、本件氏名表示部分がある本件元画像を見ることができるとしても、本件各表示画像が表示されているウェブページとは別個のウェブページに本件氏名表示部分があるというにとどまり、本件各ウェブページを閲覧するユーザーは、本件各表示画像をクリックしない限り、著作者名の表示を目にすることはない。また、同ユーザーが本件各表示画像を通常クリックするといえるような事情もうかがわれない。そうすると,本件各リツイート記事中の本件各表示画像をクリックすれば、本件氏名表示部分がある本件元画像を見ることができるということをもって、本件各リツイート者が著作者名を表示したことになるものではないというべきである。」
「以上によれば、本件各リツイート者は,本件各リツイートにより、本件氏名表示権を侵害したものというべきである。

 

 このように最高裁判所は、仮に、各リツイート記事中の画像をクリックすれば氏名が表示されるとしても、クリックせずにそのリツイートに接したユーザーには氏名は確認できないうえ、ユーザーにとっても、クリックするのが通常とまではいえないことから、今回のリツイートは、著作者の氏名を表示していたとはいえず、氏名表示権を侵害したものと判断しました。

 

 

第3 判示内容の解説

1 氏名表示権について
 氏名表示権とは、著作者に認められている著作者人格権の一つで、著作物に著作者名を表示するか否か、表示するとすればどのように表示するかを決定することができる権利です。
 著作者が著作物に、著作者名を表示している場合、これを利用する際に著作者名を表示しないと、著作者が別段の意思表示を行った場合を除き、原則として著作者の氏名表示権を侵害することになります。
 今回は、リツイートされた画像がトリミングされ、大元の画像に表示されていた氏名が、トリミングによって表示されなくなったことが、画像の著作者の氏名表示権を侵害するものではないか、という点が争われました。

 

2 画像のリツイート行為が全て違法になるのか?
 本判決がなされた当日、ニュースでは「無断リツイートは権利侵害」などと大々的に報じられたこともあり、ニュースをご覧になった方は、著作物性のある画像のリツイート行為が全て違法になるのかと不安に思われた方もいるかもしれません。
 しかしながら、本判決は、写真画像に著作者名が表示されていた場合に、リツイートによって著作者名が表示されないときは、氏名表示権を侵害すると判断した判決であり、それ以上に、著作物性のある画像のリツイート全てが違法である旨を判示したものではありません。
 また、本判決の戸倉三郎裁判官による補足意見では、「そもそも,元ツイートに掲載された画像が,元ツイートをした者自身が撮影した写真であることが明らかである場合には,著作者自身がリツイートされることを承諾してツイートしたものとみられることなどからすると,問題が生ずるのは,出所がはっきりせず無断掲載のおそれがある画像を含む元ツイートをリツイートする場合に限られる。」とされています。
 これらのことから考えると、著作者自身が画像をツイートしていることがはっきりしているケースでは、当該画像をリツイートしても氏名表示権の侵害の問題は生じないと考えられます。

 

3 リツイートをするにあたっては、引用される画像に関する著作者の意思を確認しなくてはならないのか?
 本判決によれば、ある画像付きのツイートをリツイートした場合、当該画像が無断転載されたものであるときには、当該画像の著作者の氏名表示権を侵害する可能性があることになります。そうすると、「画像をリツイートする場合には、その画像について、氏名表示の有無や、氏名表示の意思を著作者が有しているかどうかの確認をしなくてはならないのか?」という疑問が生じます。

 

 この点について、本判決の戸倉三郎裁判官による補足意見では、以下のとおり述べられています。
「このような氏名表示権侵害を認めた場合,ツイッター利用者にとっては,画像が掲載されたツイート(以下「元ツイート」という。)のリツイートを行うに際して,当該画像の出所や著作者名の表示,著作者の同意等に関する確認を経る負担や,権利侵害のリスクに対する心理的負担が一定程度生ずることは否定できないところである。しかしながら,それは,インターネット上で他人の著作物の掲載を含む投稿を行う際に,現行著作権法下で著作者の権利を侵害しないために必要とされる配慮に当然に伴う負担であって,仮にそれが,これまで気軽にツイッターを利用してリツイートをしてきた者にとって重いものと感じられたとしても,氏名表示権侵害の成否について,出版等による場合や他のインターネット上の投稿をする場合と別異の解釈をすべき理由にはならないであろう。
 このように、画像を含むツイートをリツイートするにあたっても、他のインターネット上の投稿と異ならず、著作者名の表示や、著作者の同意等に関する確認を経る負担は現行著作権法下において当然に伴うものであって、ツイッターのリツイートのケースのみ特に異なって解釈すべきでないという考え方が、補足意見として示されています。

 

 他方で、ツイッターにおけるツイートは、サービス設計上、リツイートされることがそもそも想定されているものであり、今回の事象と離れて、ツイッターを利用する方に対する一般的な負担として、このような負担が課せられるというのは重すぎるのでは?という感覚もあるかもしれません。

 

 この点について言及したのが、本判決の林景一裁判官による反対意見です。
林景一裁判官は、わいせつ画像や誹謗中傷画像などのリツイートが許容されないのは当然であるとした上で、そのような画像以外のリツイートに関して、以下のとおり述べ、本判決の結論に反対しました。
 「多数意見や原審の判断に従えば,……ツイートの主題とは無縁の付随的な画像を含め,あらゆるツイート画像について,これをリツイートしようとする者は,その出所や著作者の同意等について逐一調査,確認しなければならないことになる。私見では,これは,ツイッター利用者に大きな負担を強いるものであるといわざるを得ず,権利侵害の判断を直ちにすることが困難な場合にはリツイート自体を差し控えるほかないことになるなどの事態をもたらしかねない。」
 この点については今後さらに議論が集積されることが予想されます。
以上のような反対意見もあるところですが、本判決は結論として、元画像に氏名が表示されていた場合に、リツイートによって氏名部分がトリミングされていた場合は、仮にクリックして全体を表示すれば氏名が表示されたとしても、氏名表示権を侵害する旨を示したものであり、実務上も留意する必要があります。

 

4 ツイッターの仕様について
 本判決において本件リツイートが本件写真家の氏名表示権を侵害するとの判断がなされたのは、ツイッターの仕様上、リツイートをした際に画像がトリミングされて表示されることが原因の一つとなっています。
 この点については、(本判決を踏まえて)米国ツイッター社がツイッターの仕様を変更すれば、リツイートをしても氏名表示権を侵害しない結果になる可能性があります。今後の米国ツイッター社の対応にも注目です。

 

 

第4 判示内容からのインサイト

 本判決を踏まえ、各企業において留意すべきこととして、以下の事項が挙げられます。

 

1 企業がツイッターのアカウントを運用する場合
 本判決を前提とすると、出所がはっきりせず無断掲載のおそれがある画像を含むツイートをリツイートした場合には、氏名表示権を侵害するリスクが生じることになります。
 したがって、例えば、第三者が、自社に関連する画像を含むツイートをしていた場合に、これをリツイートしようとする場合には、当該画像の出所や著作者名の表示,著作者の同意等に関して事前に確認を行うことが望ましいです。これらの点について確認が取れない場合には、リツイートは避けた方が良いでしょう。
 また、本判決はリツイートに関する判決ですが、氏名表示権についての大枠の考え方は、ツイートをする場合にも当てはまると考えられます。企業が画像をツイートするにあたっては、しっかりと画像の権利処理を行ない、権利関係が不明な画像を使わないようにすることも非常に重要です。
 仮に第三者から画像を含むツイートのリツイートが氏名表示権を侵害している旨の指摘を受けた場合は、早急に弁護士等の専門家に相談して対応することが肝要です。
 また、ツイッターの仕様によってリツイートが他人の氏名表示権を侵害するか否かの結論が変わる可能性があることから、ツイッターの仕様変更(リツイートした際に画像がトリミングされて表示されるか否か等)についても注意を払っておくべきであるといえます。

 

2 自社が著作者である画像を無断で拡散されたくない場合
 自社が著作者である画像をツイッターにおいて無断で拡散されたくない場合には、(画像自体の芸術性を損なわない限り、)画像自体に「無断転載禁止」などの表示や自社のクレジットを入れておくことが考えられます。
 ツイッターにおいて自社が著作者である画像を無断転載したツイートや当該ツイートのリツイートを発見した場合には、当該ツイートやリツイートを行ったアカウントに対する削除要請、発信者情報開示請求等を行う余地があります。

 

 弊所におきましては、会社でのSNS運用の際のリーガルアドバイスや、発信者情報開示請求を含めた知的財産権侵害への対応等のサポートも行っております。お気軽にお問合せください。

 

 


 

(※1)本判決の戸倉三郎裁判官による補足意見参照。

(※2)本件写真家は、その他にも本件写真に係る公衆送信権、複製権、同一性保持権の侵害を主張しましたが、本判決ではこれらの権利の侵害の成否について判断せず、氏名表示権についてのみ判断しています。

(※3)本判決は、リツイート行為と氏名表示権の侵害に関して、掲載した判示部分以外に、著作権法19条1項の氏名表示権を侵害したというには同法21条から27条までに規定する権利に係る著作物の利用によることを要するか否か、という点についても判断を示していますが、やや専門的な内容になるためここでは割愛します(結論として「要しない」としています。)。