決済サービスの基礎

決済サービスの基礎

執筆:弁護士 宮本真衣

 

 

第1 はじめに

 情報通信技術の革新やインターネットの普及等により、従来銀行が提供してきたものとは異なる新たな決済サービスが見られるようになりました。

 スタートアップ企業や大手事業会社などでも金融サービスを提供する事業者が増えてきており、利用者にとってより便利な個人間アプリ送金など多種多様な決済サービスが展開されています。

 金銭の移動が伴う様々な決済サービスが世の中にあふれることで、私たちの生活がより豊かに便利になると同時に、決済サービス提供者は、適正なサービス提供や利用者保護など様々な規制について遵守していかなければなりません。

 今回は、どのような決済サービスがいかなる類型に分類されるのか、また、決済サービス運営に当たって必要な手続や遵守すべき規制は何かという観点から、資金決済に関する法律(以下、条文引用の場合は「法」といいます。)やその他の関連法令が対象とする決済サービスについて解説していきます。

 

 

第2 主なサービス類型

 資金決済に関する法律は、①資金移動業、②前払式支払手段の発行業務等を対象とした法律です。簡単に説明すると以下のとおりになります。

 

①資金移動業とは、銀行以外の事業者が行う少額の為替取引を業として営むことをいいます。

②前払式支払手段の発行業務とは、プリペイド型の支払い手段を発行する業務をいいます。

 

 資金決済に関する法律は、①と②のほかに、暗号資産交換業及び資金清算業についても規定しています。暗号資産交換業は主に暗号資産に関するサービスであり、①と②とは性質を異にします。また資金清算業については一般社団法人全国銀行資金決済ネットワークが唯一の資金清算業として免許を受けていることから一般的な会社が業務を行うことは想定されません。したがって、今回は、①と②についてのみ解説いたします。

 

 また、資金決済に関する法律が直接規定するわけではない類型として、③ポイントサービスと④収納代行サービスが挙げられます。簡単に説明すると以下のとおりになります。

 

③ポイントサービスとは、商品やサービス提供の際に景品やおまけ、割引としてポイントを付与し、事後的に付与されたポイントの利用により商品の購入や役務の提供を受けることができるサービスのことをいいます。

④収納代行サービスとは、金銭の支払義務を負う債務者が遠隔地にいる債権者に代金を支払うに際して、事業者を介して決済を行うことができるサービスのことをいいます。

 

 

第3 サービス類型の説明と運用における必要な手続

1 ①資金移動業

(1)資金移動業についての説明

 資金移動業とは、銀行等以外の者が為替取引(100万円に相当する額以下の資金の移動に係るものに限ります。)を業として営むことをいい(法2条2項、資金決済法施行令(以下「施行令」といいます。)2条)、登録を受けて資金移動業を営むものを資金移動業者と言います(法2条3項、37条)。

 

なお、令和2年6月改正により、資金移動業が3類型に分けられ、100万円までの送金上限額については、類型ごとに区分されることとなりました。詳細は、こちらをご覧ください。

https://gvalaw.jp/10408

 

 「為替取引」とは、判例上、「顧客から隔地者間で直接現金を輸送せず資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受けること、又はこれを引き受けて遂行することをいう」とされています。

 

 資金移動業にあたるかどうかは、銀行が行っているような送金システムが設けられていることや、送金システムにより受領した金銭を実際に現金として引き出すことができるスキームが見られる場合に該当する場合が多いといえます。

 

(2)資金移動業の運用における必要な手続や義務

 資金移動業を営むためには、内閣総理大臣(具体的には財務局長)の「登録」を受けることが必要となります(法37条)。登録を行うことができるのは、株式会社又は一定の要件を充たす外国資金移動業者に限られています(法40条1項1号)。

 登録には、登録申請書に必要書類を添付したうえで、財務局長に提出する必要があります。登録申請書が提出されると、登録審査が行われ、登録拒否事由があると認められるとき、又は登録申請書若しくはその添付書類のうち重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときを除き、資金移動業の登録がなされます(法39条1項)。

 登録された資金移動業者については、資金移動業者登録簿に記載され、公衆の縦覧に供されることになります(法39条)。

 

 また、行為規制としては以下の事項が挙げられます。なお、サービス内容によって規制対象となるかどうかが異なってくる点にはご留意ください。

 

・情報安全管理措置

・委託業務の適正・確実な遂行確保の措置

・銀行等が行う為替取引との誤認防止措置

・情報提供義務

・受取証書の交付義務

・その他利用者保護を図るための措置

・社内規則の整備

・本人確認義務

・疑わしい取引の届出

 

2 ②前払式支払手段の発行

(1)前払式支払手段についての説明

 前払式支払手段とは、以下の4つの要件をすべて備えたものをいいます。

 

(a)金額又は物品・サービスの数量(個数、本数、度数等)が、証票、電子機器その他の物(証票等)に記載され、又は電磁的な方法で記録されていること。

(b)証票等に記載され、又は電磁的な方法で記録されている金額又は物品・サービスの数量に応ずる対価が支払われていること。

(c)金額又は物品・サービスの数量が記載され、又は電磁的な方法で記録されている証票等や、これらの財産的価値と結びついた番号、記号その他の符号が発行されること。

(d)物品を購入するとき、サービスの提供を受けるとき等に、証票等や番号、記号その他の符号が、提示、交付、通知その他の方法により使用できるものであること。

 

 具体的には、商品券、IC型のプリペイドカード等がこれに当たります。

 

 また、前払式支払手段は、㋐自家型前払式支払手段と㋑第三者型前払式支払手段に分類されます。

 

 

 ㋐自家型前払式支払手段とは、発行者又は当該発行者と密接な関係を有する者(以下「発行者等」といいます。)から物品の購入若しくは借受けを行い、若しくは役務の提供を受ける場合に限り、これらの代価の弁済のために使用することができる前払式支払手段、又は発行者等に対してのみ物品の給付若しくは役務の提供を請求することができる前払式支払手段をいいます(法3条4項)。

 

 ㋑第三者型前払式支払手段とは、自家型前払式支払手段以外の前払式支払手段をいいます(法3条5項)。㋐との違いとしては、発行者に限らず加盟店から物品給付や役務提供を受けることができる点が挙げられます。

 

(2)前払式支払手段に関する資金決済法の適用除外

定義上、(1)にて説明した前払式支払手段に該当したとしても、資金決済法上、当該前払式支払手段が以下のものに該当する場合には、規制の適用が除外されています(法4条)。

 

(a)乗車券、入場券その他これらに準ずるもの

(b)使用期間が6か月以内に限定されているもの

(c)発行体の信用力に着目して適用除外とされるもの

(d)一定の関係性に着目して適用除外とされるもの

(e)他法の規制との重畳を回避するため適用除外とされるもの

(f)利用者保護という立法趣旨に鑑み適用除外とされるもの

 

(3)前払式支払手段の発行業務を運営する際に必要な手続

 ㋐自家型前払式支払手段は、誰でも発行することができますが、基準日においてその未使用残高が1000万円を超えた場合には、内閣総理大臣(具体的には財務局長)に対する「届出」が必要となります(法5条)。届出を行った場合には、自家型発行者として資金決済に関する法律の規制を受けることになります(法3条6項)。

 自家型前払式支払手段の基準日未使用残高がその発行を開始してから最初に1000万円を超えることとなったときは、発行届出書に必要書類を記載し、財務局長に届けなければならないとされています(法5条1項)。この届出を行うと、自家型発行者となり、自家型発行者届出簿に記載され、公衆の縦覧に供されます。

 

 ㋑第三者型前払式支払手段については、財務局長の「登録」を受けた者のみが発行業務を行うことができます(法7条)。

 第三者型前払式支払手段の登録は、法人のみが行うことができるとされています。

 登録には、登録申請書に必要書類を添付したうえで、財務局長に提出する必要があります。登録申請書が提出されると、登録審査が行われ、登録拒否事由があると認められるとき、又は登録申請書若しくはその添付書類のうち重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときを除き、第三者型発行者の登録がなされます(法10条1項)。

 登録された第三者型発行者については、第三者型発行者登録簿に記載され、公衆の縦覧に供されることになります。

 

 また、前払式支払手段の発行業務における行為規制としては、以下の事項が挙げられます。

 

・情報提供義務

・表示義務

・発行量、回収量及び未使用残高等の記載義務

・供託等による資産の保全義務

・苦情処理体制構築義務

・社内規定の整備

・払戻時の手続履践

 

3 ③ポイントサービス

(1)ポイントサービスについての説明

 ポイントサービスには、商品やサービスの提供の際に、ポイントを発行するサービスとなります。一般的には、購入した商品の価格に応じて一定割合でポイントが発行され、次回の商品購入の際に値引きとして利用できるような形が典型的です。

 

 ポイントの発行か前払式支払手段の発行かを判断する際には、利用者から「対価」を受け取るか否かが判断の要となります。利用者から「対価」をもらわず、発行者が一方的に発行する場合には、ポイントであると判断できます。「対価」には、現金のほか、財産的価値があるものがこれに含まれるとされています。

 

(2)ポイントサービスの運営に必要な手続

 ポイントの発行は、財務局長に対する届出や登録が不要であり、他の法令に反しない限り、誰でも自由に発行することができます。

 関連する法令としては、ポイントの発行内容について景品表示法や、有効期間の設定に関して消費者契約法が挙げられます。景品表示法においては、もれなく景品を付与するような総付景品の場合、取引価格が1,000円未満のときは景品上限が200円、取引価格が1,000円以上のときは景品上限が取引価額の20%までとなります。このような上限を超えてポイントが付与された場合、前払式支払手段の発行業務に該当する可能性があるとの議論もありますので、ご注意ください。

 

4 ④収納代行サービス

 収納代行サービスとは、電気・ガス等の財・サービスの利用料金の支払いにおいて、財・サービスの提供者(債権者)から依頼を受けたコンビニエンス・ストア等の事業者に対して利用者(債務者)が支払いを行い、事業者が受け取った代金を債権者に渡すものをいいます。

 

 収納代行サービスに関しては、別記事にて詳しく解説していますので、ご参照ください。

 https://gvalaw.jp/9242

 

 

第4 小括

 新しいサービスに限らず、従来から存在するサービスに関しても、金銭的対価を回収するという枠組みは、変わるものではありません。もっとも、その手段として、資金の決済方法は、技術革新に伴い多様性を増しています。

 このような情勢においては、企業にとって、適切な決済サービスを選択することで、ビジネスの拡大に資することが可能であるといえます。

 

 弊所においては、適切な決済サービスについてのご提案・コンサルティングや、既に運用されているスキームについての助言、ひいては、登録・届出等の手続等のリーガルサービスを提供していますので、資金決済についてのご質問やご相談がございましたら、お問い合わせください。

 

以上

 

 

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