外商投資法施行後の中国外資規制政策

中国弁護士(Not admitted in Japan) 唐紅海

 

「中華人民共和国外商投資法」が2020年1月1日に正式に施行され、当該重要な法律は、外国企業による中国への投資に関するネガティブリストリスト管理制度を更に明確にしました。すなわち、禁止や制限の対象となる項目を除き、外資に完全に開放され、外資は国内資本と同等の待遇を享受できます。本稿において、外国企業が中国に投資する際の外資制限政策を整理し、どの分野が投資できるか、どの分野の投資が禁止又は制限されるかを明確にし、実務分野における留意事項を説明いたします。

 

I  伝統的な意味のネガティブリスト

一般的な意味のネガティブリストは、「外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)」と「自由貿易試験区外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)」であると理解されています。

 

1  外商投資産業指導目録

「外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)」は、国家計画委員会、国家経済貿易委員会、対外貿易経済合作部により1995年に公布された「外商投資方向性の指導に関する暫定規定」に由来しています。 その後、同規定は、2002年に国務院が公布した「外商投資の方向性指導に関する暫定規定」に取って代わりました。2002年の「外商投資方向性の指導に関する暫定規定」によれば、国家発展計画委員会、国家経済貿易委員会、対外貿易経済合作部は、国務院の関連部門と共同で「外商投資産業指導目録」を制定し、国務院の承認を得て公布されます。「外商投資産業指導目録」は、外商投資プロジェクトを奨励、許可、制限、禁止の4つに分類し、「外商投資産業指導目録」に記載されるのが奨励類、制限類及び禁止類のプロジェクトです。 奨励類、制限類及び禁止類のいずれにも該当しない外商投資プロジェクトは許可類であり、「外商投資産業指導目録」に記載されません。1995年に「外商投資産業指導目録」の第1版が公布され、2002年、2004年、2007年、2011年、2015年及び2017年の数回に渡り改訂されました。
2018年6月28日、国家発展改革委員会と商務部が共同で「外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト) (2018年版)」を公布し、「ネガティブリスト」という四文字が初登場しました。その後、 国家発展改革委員会と商務部が2019 年 6 月 30 日に2019 年版のネガティブリストを公布し、2018年版のネガティブリストを廃止しました。ネガティブリストの最新版は、国家発展改革委員会と商務部が 2020年 6 月 23 日に公布した2020 年版ネガティブリストであり、2020年7月2 3日から実施されています。自由貿易試験区ネガティブリストは、全国版ネガティブリストの内容と共通する部分は多いが、特定の産業分野につき、自由貿易試験区内において外商投資に関する制限をさらに撤廃又は緩和するものです。現在、全国に18の自由貿易試験区があり、上海市、広東省、天津市、福建省、遼寧省、江蘇省、河南省、湖北省、重慶市、四川省、山西省、海南省、山東省、江蘇省、河北省、雲南省、広西省、黒龍江省です。

 

2  2020年版ネガティブリスト

2020年版ネガティブリストの主な内容は以下のとおりです。

  1. ネガティブリストにおいて、持分保有要件、役員要件、その他の外商投資参入に関する特別管理措置をリスト化し、特別管理措置以外の産業領域は、国内企業及び外商企業が平等の原則に従って管理を実施されます。
  2. ネガティブリストにおいて、外商投資参入を制限する措置の解除又は緩和の移行期間を明確し、移行期間が満了となれば、時間通りに制限措置を解除又は緩和されます。
  3. ネガティブリストに規定されている特別管理措置は、(1)農業、林業、牧畜業、漁業、(2) 採鉱業、(3)製造業、(4) 電力、熱エネルギー、ガス及び水の供給業、(5) 卸売・小売業、(6) 交通運輸・倉庫・郵政業、 (7) 情報通信、ソフトウェア・技術サービス業、 (8) リース・ビジネスサービス業、 (9) 科学研究・技術サービス業、 (10)教育、(11) 衛生・社会事業、(12) 文化・体育・娯楽業の33項目で12業種が含まれています。
  4. 持分保有要件が定められている産業領域では、外商投資組合企業の設立は認められません。

 

3 ネガティブリストの改訂

毎年ネガティブリストが改訂され、制限措置は削減されています。とりわけ、2017年から2019年までの3年で、全国版ネガティブリスト及び自由貿易試験区ネガティブリストにおける制限措置はそれぞれ93項、122項から40項、37项に削減されました。更に2020年版ネガティブリストの項目は2019年版の40項目から33項目に削減され、自由貿易試験区ネガティブリストの項目は37項目から30項目に削減されました。2020年版ネガティブリストは、2019年版と比べて、主な変更点は以下のとおりです。

  1. 金融業につき、①証券会社の外資出資比率は 51%を超えない、証券投資ファンド管理会社の外資出資比率は 51%を超えない(2021 年に外資出資比率制限を撤廃)、③先物取引会社の外資出資比率は 51%を超えない(2021 年に外資出資比率制限を撤廃)、④生命保険会社の外資出資比率は 51%を超えない(2021 年に外資出資比率制限を撤廃)の制限がありましたが、20年版ネガティブリストではこれらを完全に削除し、外資による中国の金融業を完全に開放しました。
  2. 人口 50 万人以上の都市の給排水管網の建設及び経営は中国側がマジョリティという制限がありましたが、撤廃されました。
  3. 専用車及び新エネルギー車に加え、商用車製造も外資による100%の参入を認めました。
  4. 放射性鉱物の精錬、加工、核燃料製造につき、完全に禁止されていた外資による投資が可能となりました。
  5. 小麦及びトウモロコシの新品種の選択育成と種子の生産は中国側がマジョリティで制限されていましたが、小麦の新品種の選択育成と種子の生産は中国側が34%を下回らないよう規制緩和されました。
  6. 自由貿易試験区では、以上の外資開放・緩和措置に加え、①漢方煎じ薬への投資は禁止されましたが、外資による投資が認められました。また、②学位制の専門学校の外資100%保有は禁止されましたが、外資による100%保有まで認められました。

 

 

II 普遍的に適用されるネガティブリスト及び目録

以上のような伝統的な意味のネガティブリストは、外商投資にのみ適用され、「市場参入ネガティブリスト」及び「産業構造調整指導目録」は、国内企業のみでなく、外商投資企業にも適用されます。現在、最新版として、「市場参入ネガティブリスト(2019年版)」及び「産業構造調整指導目録(2019年版)」です。 すなわち、投資予定の産業領域が伝統的なネガティブリストに記載されていないか、又は記載されているが禁止されていない産業領域である場合、投資家は、「市場参入ネガティブリスト(2019年版)」及び「産業構造調整指導目録(2019年版)」に基づき、当該産業領域に投資できるか否かをさらに検討する必要があります。

 

1 「市場参入ネガティブリスト(2019年版)」

「市場参入ネガティブリスト(2019年版)」には、禁止と許可の2つの分類が含まれています。禁止類については、市場参入できず、行政機関が審査・認可を行わず、関連手続き行うことができません。許可類については、関連する資格要件や手続き、技術基準、許可要件を満たす必要があり、申請が提出された場合、行政機関が法律に従って参入を認めるか否かを決定します。市場参入ネガティブリスト以外の産業、分野、事業等に関して、企業が法律に従って平等に参入できます。
例えば、2019年の市場参入ネガティブリストを例にとると、市場参入に関する事項は145項、(1)農業、林業、牧畜業、漁業、(2)製造業、(3) 電力、熱エネルギー、ガス及び水の供給業、(4)建築業、 (5) 卸売・小売業、(6) 交通運輸・倉庫・郵政業、 (7)金融業、(8)宿泊・飲食業、(9) 情報通信、ソフトウェア・技術サービス業、(10) 科学研究・技術サービス業、 (11) 水利、環境及び公共施設の管理業、(12) 住民サービス、修理及びその他のサービス業、(13)教育、(14)衛生・社会事業、(15)文化・体育・娯楽業の15業界に関連します。

 

2 「産業構造調整指導目録(2019年版)」

「産業構造調整指導目録」の法的根拠は、2005年12月に国務院が公布した「産業構造調整の促進に関する暫定規定」です。「産業構造調整指導目録」は、奨励、制限、淘汰の3種類で構成されています。奨励、制限及び淘汰のいずれにも属しておらず、国の法律、法規及び政策規定に適合している場合、許可類になります。許可類は、「産業構造調整指導目録」に記載されません。

 

(1)奨励類
奨励類は、主に、経済・社会発展に重要な役割を果たし、資源の節約、環境保護、産業構造の最適化とアップグレードに有益であり、政策措置により奨励する必要のある中核技術、設備、製品を指します。
奨励類の投資プロジェクトについては、国の関連投資管理規則に従って審査・認可、又は届出の手続きを行うことができます。また、各金融機関は、融資を提供し、投資総額で輸入された自社用機器は、財政部が公布した「国内投資プロジェクトに関する免税対象にならない輸入商品目録」に記載されている商品を除き、関税及び増値税の免除を継続されます。国が免税対象とない投資プロジェクト目録を公布した場合、新しい規定に従って実施されます。奨励類の産業プロジェクトに関するその他の優遇政策は、国の関連規定に従って実施されるとされています。

 

(2)制限類
制限類は、主に技術が遅れており、産業参入条件や関連規定を満たさず、産業構造の最適化とアップグレードに有益ではなく、改造又は禁止が必要となる新規の生産能力、プロセス技術、設備、製品を指します。
制限類に属する新規プロジェクトについては、投資は禁止されています。投資管理部門は審査・認可、又は届出の手続きはできません。また、金融機関は融資を行わず、土地管理、都市計画・建設、環境保護、品質検査、消防、税関、工商等の部門は、関連手続きを行ってはならないとさています。

 

(3)淘汰類
淘汰類は、主に、関連する法律、法規に適合しておらず、資源の浪費、環境汚染、安全な生産条件の欠如、淘汰する必要のある時代遅れの技術、機器、製品を指します。淘汰類のプロジェクトについては、投資は禁止されています。

 

 

III 特定の分野に投資できるかどうかを決定する方法

以上から、特定の産業分野に投資できるか否かを判断するには、次の手順で実行できます。

  1. 投資予定の地域が自由貿易試験区である場合、自由貿易試験区ネガティブリストに依拠し、投資予定の産業領域が禁止類に該当するかを判断します。禁止類であれば、投資できません。禁止類ではないが、当該産業領域につき、持分保有要件又は役員要件の制限がある場合は、その要件が満たされるか否かを考慮する必要があります。
  2. 投資予定の産業領域が自由貿易試験区ネガティブリストに明示的に記載されている禁止類又は制限類でない場合、当該産業領域が「市場参入ネガティブリスト」の禁止類に属しているか否か、及び「産業構造調整指導目録」の淘汰類に該当するか否かを判断する必要があります。該当になった場合は投資できません。該当ではない場合、投資予定の産業領域は「市場参入ネガティブリスト」の許可類に分類される時、関連する資格要件や手続き、技術基準、許可要件を満たせるかを判断する必要があります。
  3. 投資予定の地域は非自由貿易贸地域である場合、全国版ネガティブリストに依拠し、投資予定の産業領域が禁止類に該当するかを判断します。禁止類であれば、投資できません。禁止類に属しないが、当該産業領域につき、持分保有要件又は役員要件の制限がある場合、その要件が満たされるか否かを考慮する必要があります。投資予定の産業領域が自由貿易試験区ネガティブリストに明示的に記載されている禁止類又は制限類でない場合、2を参照し、投資できるか否かを判断する必要があります。

 

 

IV おわりに

外商投資法の施行後、中国の外資政策はより透明になり、中国の産業分野における外資への開放はさらに拡大されると予想できます。しかし、これは中国が外資に対して一切規制を設けないということではありません。以上の説明から、いかなる産業領域に投資できるか、いかなる産業領域が禁止又は制限されるかの理解に役に立つことを期待したい。

 

 

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