資金決済法の改正と新しいFinTech(フィンテック)サービスについて ~資金移動業の3類型及び収納代行の一定の線引き~

資金決済法の改正と新しいFinTech(フィンテック)サービスについて  ~資金移動業の3類型及び収納代行の一定の線引き~

執筆:弁護士 原田雅史

 

 

第1 改正の概要

資金決済法の改正
①金融サービス仲介業の創設
②資金移動業に新たな類型を創設
③収納代行について一定の線引き

2020年3月6日に、資金決済に関する法律(以下「資金決済法」といいます。)及び金融商品販売法等を改正する「金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律案」(以下「改正法」といいます。)が国会に提出され、同年6月5日に成立しました(以下「本改正」といいます。なお、本改正前の資金決済法を以下「現行資金決済法」といい、本改正後の資金決済法を以下「改正資金決済法」といいます。)。
改正資金決済法では、①銀行・証券・保険すべての分野のサービスを仲介可能にする「金融サービス仲介業」が創設(※1)されると共に、②資金移動業について送金額・リスクに応じた過不足のない規制を適用するために(※2)、資金移動業に類型を設けられることとなりました。また、③改正資金決済法により、従来から議論のあった収納代行について一定の線引きもされました。改正法は、①については公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日から施行し、②については公布の日から起算して1年以内に政令で定める日から施行することとされており(改正法附則第1条(※3))、まだ具体的な施行日は決定されていません。
本稿では、FinTech(フィンテック)サービスに関連する②の資金移動業と③の収納代行に関する改正内容を紹介します。

 

 

第2 背景・経緯

  • 資金移動業は過去10年間でサービスを拡大
  • 少額の送金について需要が多い
  • 少額送金を取り扱う資金移動業者に課せられる義務を緩和する声

「資金移動業」とは、銀行等以外の者が100万円に相当する額以下の資金の移動に係る為替取引を業として営むことをいいます(現行資金決済法第2条第2項、資金決済法施行令第2条)。資金移動業を営むには、事前に内閣総理大臣の登録を受けなければなりません。無登録で資金移動業(為替取引)を行った場合、銀行法第4条1項に違反する無免許業者として銀行法上の罰則の適用を受けることになります。
資金移動業は2010年の制度創設から約10年間で着実にサービスを拡大してきました(※4)。金融庁の説明資料によりますと(※5)、海外送金など100万円超の送金ニーズがある一方、実態をみると、件数ベースで5万円未満の送金が約9割であり、アカウント残高も5万円未満が9割以上となっています。このような実態については、2019年12月20日の「金融審議会 決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ報告」(以下「金融審議会報告」といいます。)においても触れられており、同報告においても、送金額に応じた規制の導入の必要性が指摘されていました(※6)。例えば、資金移動業者は、利用者保護の観点から資産保全義務という規制が課されており、資金移動業者は、その利用者に対して負う債務の全額と同額以上の資産を供託等によって保全しなければなりません(※7)。これにより万が一、資金移動業者が破綻した場合には、その利用者は、あらかじめ保全された資産の中から、優先的に弁済を受けることができるのですが(※8)、一方で資金移動業者の資産保全義務の範囲は最低でも1000万円であり、資金決済サービスを検討するスタートアップ企業にとっては負担が重いものとなっています。この点について、金融審議会報告では、資金の保全方法については、利用者保護について、「少額」送金を取り扱う資金移動業者については、規制緩和の余地があると指摘されていましたが(※9)、本改正において、少額送金を取り扱う類型の資金移動業が創設されました。以下では、本改正で創設された三類型について説明します。

 

 

第3 改正内容(詳細)

【3類型の整理】

類型 定義 送金上限額 参入規制 その他
第一種資金移動業者(36の2I 資金移動業のうち、第二種資金移動業及び第三種資金移動業以外のもの 上限額なし 認可制

具体的な送金指図がある場合のみ利用者から資金を受け入れ、直ちに送金する必要あり

第二種資金移動業者(362II

資金移動業のうち、 少額として政令で定める額以下の資金の移動に係る為替取引のみを業として営むこと(第三種資金移動業を除く。)

100万円まで 登録制 利用者から預かった資金が100 万円を超える場合、送金と無関係な資金の払出しが求められる
第三種資金移動業者(362III 資金移動業のうち、 特に少額として政令で定める額以下の資金の移動に係る為替取引の みを業として営むこと 少額(政令で決められる額以下) 登録制

・利用者から預かった資金について、供託など既存の保全方法に代えて、分別した預金で管理することを認める

・外部監査を義務付ける

(1)総論
改正法においては、資金移動業に類型を設け、送金額・リスクに応じた過不足のない規制が適用されることとしました。具体的には、①先に指摘した少額送金を取り扱う類型のみならず、高額送金を取扱可能な新しい類型(認可制)も創設するとともに、②少額送金を取り扱う類型については利用者資金の保全に係る規制を合理化しようとしています(※10)。

(2)高額類型(第一種資金移動業)
「第一種資金移動業」とは、「資金移動業のうち、第二種資金移動業及び第三種資金移動業以外のものをいう」と定められています(改正資金決済法第36条の2第1項)。つまり、送金額が100万円を超える高額送金の取扱いが可能な類型を指します。資金移動業者が第一種資金移動業を営もうとするときは、内閣総理大臣の「登録」を受けるのみならず、業務実施計画について内閣総理大臣の「認可」を受けなければなりません(改正資金決済法第 40 条の2第1項)。
第一種資金移動業は、当該事業者破綻時に利用者に与えうる影響が他の類型と比較して大きいものです。そのため、利用者資金の受入れを最小限度とするために具体的な送金指図を伴わない資金の受け入れが禁止されています(改正資金決済法第51条の2第1項)。つまり、第一種資金事業を営む資金移動業者は、送金先や送金日時が決まっている資金のみ、利用者から受入れることができます(※11)。

(3)現行類型(第二種資金移動業)
「第二種資金移動業」とは、「資金移動業のうち、少額として政令で定める額(100万円)以下の資金の移動に係る為替取引のみを業として営むこと(第三種資金移動業を除く。)をいう」と定められています(改正法第36条の2第2項)。本類型は現行の枠組みを維持したものといえ、資金移動業者が第二種資金移動業を営もうとするときは、内閣総理大臣の登録を受けなければなりません(改正資金決済法第37 条)。
金融審議会報告においては、一部の資金移動業者において、資金決済法制定時の想定の範囲を超えて、利用者資金が滞留していることが指摘されており、為替取引との関連性が認められないような利用者資金の滞留を防止するための方策を講ずることが必要と指摘されていました。そこで、改正資金決済法においては、資金移動業者は、利用者から預かった資金が100 万円を超える場合、送金と無関係な資金の払出しを利用者に求めることとなりました(改正資金決済法第51条)(※12)。資金移動業者が為替取引と無関係に利用者資金を受け入れた場合、その金額の多寡にかかわらず、出資法の預り金規制に抵触のおそれがあると従前より指摘されていましたので、いずれにしても、送金と無関係な資金を保有することがないよう実務を見直す必要があります(※13)。

「第三種資金移動業」とは、「資金移動業のうち、特に少額として政令で定める額以下の資金の移動に係る為替取引のみを業として営むことをいう」と定められています(改正法第36条の2第3項)。資金移動業者が第三種資金移動業を営もうとするときは、従前と同様に、内閣総理大臣の登録を受けなければなりません(改正法第37条)。
もっとも、第三種資金移動業を営む資金移動業者については、利用者から預かった資金について、供託など既存の資金保全方法に代えて、分別した預金で管理することが新たに認められました(改正資金決済法第45条の2)(※14)。現行の保全方法として、供託又は信託契約を利用する場合、資金移動業者は、供託又は信託した資金を直ちに取り戻すことができないため、実務上、実際に送金を行う際に別途資金を調達する必要があります。また、保全契約を利用する場合、契約の相手方である銀行等が資金移動業者に提供できる保証枠には、与信管理上の限度があるほか、資金移動業者は保証料を負担する必要があります。本改正の、預金による管理は、このような資金移動業者の資金繰り負担が軽減されることから、低コストで利用者利便の高いサービスの提供が促進されることが期待されます。(※15)
このように資産保全方法に関する規制が緩和された代わりに、分別預金による場合には外部監査が義務付けられることとなりました。これは、金融審議会報告によると、資金移動業者の破綻時に利用者が十分な資金の還付を受けられないおそれがあるため、モニタリングを強化する観点から義務付けられたものだと指摘されています(※16)。
以上の改正により、従来、重い負担とされていた資産保全義務が緩和されたことで、今後、第三種資金移動業の登録を受けて、少額送金のサービスを積極的に展開するスタートアップ企業が増えるものと思われます。

 

 

第4 収納代行について

  • 従来から収納代行の「為替取引」該当性が議論されてきた
  • 本改正で「割り勘アプリ」は「為替取引」に該当することに

(1)はじめに
フィンテック企業や大手の企業によって多様な決済サービスが提供されていますが、その中でも比較的古くから用いられている決済サービスとして、収納代行サービスがあります。
収納代行とは、電気・ガス等の財・サービスの利用料金の支払いにおいて、財・サービスの提供者(債権者)から依頼を受けたコンビニエンス・ストア等の事業者に対して利用者(債務者)が支払いを行い、事業者が受け取った代金を債権者に渡すものをいいます(※17)。収納代行については、近年、為替取引の該当性について議論がされてきたところですが、本改正において一定の線引きがされています。以下、その詳細を説明します。

(2)過去の議論について
収納代行サービスについては、遠隔地にいる債権者と債務者との間の決済手段として利用されています。そのため、これまで銀行や資金移動業者でなければ行うことができない「為替取引」(銀行法第2条第2項第2号、現行資金決済法第2条第2項)に該当するのではないかとの指摘がありました。
この「為替取引」とは、最高裁判所の判例によると、「顧客から、隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受けること、又はこれを引き受けて遂行すること」(最高裁平成13年3月12日決定)とされています。収納代行サービスについては、金銭債権の債務者が、第三者たる事業者を介して、遠隔地に所在する債権者に対して決済を行っており、当該事業者が資金を移動していると評価できることから、これが「為替取引」に該当するのではないかと指摘されていました(※18)。
金融審議会報告によれば、この点について、収納代行のうち、①債権者が事業者や国・地方公共団体であり、かつ、②債務者が収納代行業者に支払いをした時点で債務の弁済が終了し、債務者に二重支払の危険がないことが契約上明らかである場合には、既に一定の利用者保護は図られていると考えることが可能であるとして、こうした収納代行については為替取引に関する規制を適用する必要性は、必ずしも高くないと指摘されていました。
一方、個人間の収納代行では、「割り勘アプリ」について、為替取引に関する規制の提供対象となることを明確化することが必要であることが指摘され、また、「エスクローサービス」について、引き続き検討課題とすることが指摘されました。

(3)本改正について
本改正では、近年登場した、「収納代行」と称しつつ実質的には一般利用者間の送金サービスを提供する事業者について、利用者保護の観点から、資金移動業の登録を求めることを明確化することを目的に、「割り勘アプリ」のような実質的に個人間送金を行う行為が、規制対象であるとされました。一方、従来から利用されている宅配業者の代金引換・コンビニの収納代行については、利用者保護上の深刻な問題が指摘されていないこと、債権者が事業者であり、かつ、債務者(一般利用者)に二重支払の危険がないものについては利用者保護上の懸念は少ないことを理由に、規制対象としないこととしています。また、「エスクローサービス」についても、インターネットモールにおいて、一般利用者間の物品取引に際して用いられること、エスクローサービス自体が、利用者保護の機能を果たすエコシステムであるとの指摘があることを理由に規制対象としないこととされました(※19)。
本改正では、「割り勘アプリ」が資金決済法の規制対象になることが明確にされましたが、その他のサービスについては規制対象となりませんでした。しかし、債権者及び債務者の双方が消費者である場合の収納代行サービスについては、今後も規制の対象となる可能性が否定されておらず、引き続き動向を見守る必要があります。

 

【現行資金決済法上の整理】

債権者の委託を受け、債務者から代金を回収(収納代行)する事業者は、資金決済法の規制対象外(※20)。

 

【改正資金決済法上の整理】

 

 

第5 最後に

本改正は、今後府令等で具体的な規制が明確になっていくものと思われます。資金移動業や収納代行に関するFinTech(フィンテック)ビジネスを検討される際は、弊所にご相談ください。

 

以上

 

 


 

(※1)「金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律」金融庁説明資料4頁
(https://www.fsa.go.jp/common/diet/201/01/setsumei.pdf)

(※2)金融庁説明資料・前掲注1) 8頁

(※3)「金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律」法律案要綱8頁
(https://www.fsa.go.jp/common/diet/201/01/houritsuanriyuu.pdf)

(※4)金融庁説明資料・前掲注1) 7頁

(※5)金融庁説明資料・前掲注1) 7頁

(※6)「金融審議会 決済法制及び金融サービス仲介法制に関するワーキング・グループ 報告」(2019年12月20日)5~6頁
(https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20191220/houkoku.pdf)

(※7)堀天子「実務解説 資金決済法(第4版)」84頁(商事法務、2019年)

(※8) 堀・前掲注7) 84頁

(※9)2019年12月20日金融審議会報告・前掲注6) 5頁

(※10)金融庁説明資料・前掲注1) 8頁

(※11)「金融サービスの利用者の利便の向上及び保護を図るための金融商品の販売等に関する法律等の一部を改正する法律」金融庁概要
(https://www.fsa.go.jp/common/diet/201/01/gaiyou.pdf)

(※12)金融庁説明資料・前掲注1) 8頁;2019年12月20日金融審議会報告・前掲注6) 8頁

(※13)2019年12月20日金融審議会報告・前掲注6) 9頁

(※14)金融庁説明資料・前掲注1) 8頁

(※15)2019年12月20日金融審議会報告・前掲注6) 11頁

(※16)2019年12月20日金融審議会報告・前掲注6) 11頁

(※17)金融審議会金融分科会第二部会「資金決済に関する制度整備について―イノベーションの促進と利用者保護―」(平成21年1月14日)11頁

(※18)金融審議会金融分科会第二部会・前掲注17)、11~15頁

(※19)金融庁説明資料・前掲注1) 10頁

(※20)金融庁説明資料・前掲注1) 10頁。ただし、前提として、「弁済として」債務者から代金を回収すること、すなわち、債務者から代金を回収した時点で法律上当該債務が消滅することを要すると思われます。

(※21)その他の要件については、今後内閣府令において定められることとなっています。

 

 

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