グローバル情報

2018.2.21
ベンチャー法務・グローバル情報タイ法務

タイと日本の「営業秘密」

弁護士 藤江 大輔/Daisuke Fujie

 

1 はじめに


今回は、タイ企業でも重要な「営業秘密」について説明していきます。あまり知られてはいませんが、「営業秘密」というのは非常に重要な概念です。 有名なコカ・コーラ社は、レシピを厳重な保管庫で管理していることで知られていますが、その程度まで至らずとも、自社にとって重要な情報、他社との競争において優位性を持つ情報をいかに管理するかは、無視できないインパクトを持つことがあります。

 

そして、この「営業秘密」というのは、社内情報であれば何でも保護されるというものではないことを、今回のコラムで知っていただきたいと思います。

 

 

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2 日本における営業秘密


日本における営業秘密の法律上の定義は、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上または営業上の情報で、公然と知られていないもの」とされています。

 

1.秘密として管理されている情報(=秘密管理性)

2.事業活動に有用な情報(=有用性)

3.公然と知られていない情報(=非公知性)

 

上記3つの要素がこの中に表れています。これらが重複するのが、営業秘密です。

 

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この定義の中で特に重要なポイントは、「秘密として管理されている」(=秘密管理性)という部分です。
法律は、企業情報の全てを保護の対象としているわけではなく、秘密管理性が認められる情報だけを保護しているのです。

 

では、「秘密管理性が認められる情報とは、どのような情報か?」ということが問題になりますが、日本の場合は、この点について、経済産業省が「営業秘密管理指針」というガイドラインを出しています。これによると、秘密管理性を満たす情報とは、以下のような条件を満たす必要があるとされています。

 

秘密管理性要件が満たされるためには、営業秘密保有企業の秘密管理意思が秘密管理措置によって従業員等に対して明確に示され、当該秘密管理意思に対する従業員等の認識可能性が確保される必要がある。

 

上記の中の「秘密管理意思」とは、特定の情報を秘密として管理しようとする意思だと考えておけばまず問題ありません。噛み砕いて言えば、周囲に対して、「この情報は営業秘密として取扱いますよ」と伝わるような措置を実施して下さいと要求しているわけです。

 

上記の措置は、企業の情報を「一般情報と営業秘密に区別する措置」と、「その情報が営業秘密であると明らかにする措置」から構成されます。

 

つまり、企業としては、情報を区分けした上で、営業秘密に該当する情報には、営業秘密であると明示しておく必要があるわけです。その他に想定できる秘密管理措置としては、金庫等の物理的な方法や、ネットによるアクセス制限等を用いて、情報にアクセスできる者を制限したりする措置などがあります。

 

 

3 タイにおける営業秘密


では、タイにおける営業秘密を見てみましょう。
タイにおいても、営業秘密を保護する法律として、「Trade Secrets Act B.E. 2545」という法律が存在します。そして、この法律によれば、タイの「営業秘密」とは、「まだ一般に広く認識されていない、又はその情報に通常触れられる特定の人にまだ届いていない営業情報であって、かつ機密であることにより商業価値をもたらす情報、及び営業秘密管理者が機密を保持するために適当な手段を採用している情報」という定義になっています。

 

1.まだ一般に広く認識されていない情報(=非公知性)

2.秘密であることによって商業価値がある情報(=有用性)

3.営業秘密管理者が適切な手段で管理している情報(=秘密管理性)

 

ここでも、上記の3つの要件が重複するものが営業秘密とされていることが分かります。この点は、日本の構造とほぼ同じものが採用されていると言って良いでしょう。

 

また、タイには、日本のように「営業秘密管理指針」のようなものは公開されていませんが、実際の裁判例においては、タイにおいても日本とかなり近い判断要素が用いられています。すなわち、金庫等の物理的な方法や、ネットによるアクセス制限等を用いて情報にアクセスできる者を制限したりする措置を取ることや、営業秘密に関する社内ルールを周知徹底することなどが、具体的事例として取り上げられているのです。

 

このように考えると、日本における営業秘密の管理方法は、タイにおける営業秘密の管理方法にそのままスライドすることが可能であるように思われます。
つまり、日本の営業秘密管理指針における情報管理の考え方は、タイにおいても十分な効果がある可能性が極めて高いと考えられるのです。

 

 

4 おわりに


私は、この営業秘密に関する知見が、恐らく日本以上に、在タイ企業にとって重要なことだと考えています。
ご存知のとおり、タイは高い離職率、ジョブホッピングで有名であり、従業員が競合他社に移籍することも日常茶飯事です。この際に、自社の情報を持ち逃げされるケースは十分にあり得ますし、その時の対抗手段を持っておくことが企業利益を守ることにつながります。

 

そして、営業秘密が保護されるか否かは、その企業自身が「その情報をいかに丁寧に扱っているか」という点に大きく左右されます。Confidentialな情報に関する少しの配慮で、大きく結果が変わることもありますので、十分に留意して情報を取り扱って下さい。

 

 

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