グローバル情報

2017.12.20
ベンチャー法務・グローバル情報タイ法務

タイにおける株式の取扱い(2)

弁護士 藤江 大輔/Daisuke Fujie

 

■ はじめに


前回に続いて、今回もタイにおける株式について解説します。

 

今回は、株式の「譲渡」についてです。近年ベンチャー投資が急激に増加しているタイですが、当然これに伴ってStartup企業のM&Aも増加の兆しを見せています。M&Aは、対象企業の株式を買い取る方法(株式譲渡)によって実行されることが多いので、株式譲渡がどういう仕組みになっているか知ることは重要です。

 

また、タイでは会社の設立に最低3名の「発起人」が必要で、かつ法人は発起人になれませんので、創業時に発起人として株式を引き受けてくれた個人株主が、その後離脱したりする場合もしばしばあります。このように、タイの実務で株式譲渡が用いられることは、案外少なくないのです。

 

 

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■ 株式譲渡の方法


タイにおける株式譲渡も、日本と同様に株式譲渡契約を取り交わすことによって行われます。ただし、日本と少し違うのは、この「株式譲渡契約」の意味合いです。

 

日本では、株式譲渡も他の契約と違いなく、当事者の意思が合致していれば成立し、必ずしも書面がなくとも契約自体の効力は発生します。これに対してタイの民商法典によれば、株式譲渡は、一定の要件を記載した書面によってなされなければならず、これを欠いた株式譲渡は無効になってしまいます。書面作成が契約発生の要件になっているという点は、実務的にも極めて重要な点と言って良いでしょう。

 

なお、民商法典上、株式譲渡契約に記載しなければならない事項は以下のとおりです。

 

・譲渡人氏名

・譲受人氏名

・譲渡される株式の数

・譲渡される株式の番号

 

また、株式譲渡契約には、契約当事者のサインが当然必要になりますが、それに加えて、最低1人以上の証人を付けなければならないとされています。これを欠いてしまうと契約書が無効になってしまいますので、書類作成上の留意点として押さえておいて下さい。

 

このように厳格に思える株式譲渡契約ですが、届出等の公的な手続きが必要なものではありません。したがって、契約の言語は何であってもよく、必ずしもタイ語でなくとも構いません(タイでは、管轄官庁への届出等をしなければならない類型の契約が存在し、それらはタイ語で作成されなければなりません)。

 

 

■ 株主名簿の意味


次に株主名簿です。株式名簿の法的な意味合いについては、日本とタイとで大きな違いはありません。株主名簿に記載されなければ、自分が株主であることを第三者に対して主張できなくなるというのがルールです。噛み砕いて言えば、株式が譲渡されても、株主名簿に記載されていなければ、オフィシャルに取得できていない状態ということになります。

 

他方で、株主名簿の運用面において、日本と大きく違うのは、タイでは株主名簿が登記事項であり、登記簿と同じように公開されている点です。これによって、誰でも株主名簿を取得し、閲覧することができるようになっています。

 

 

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■ 譲渡制限の有無


上場株式でない限り、日本の株式には、「譲渡制限がある」というのはある種当然の前提になっているように思われます。しかし厳密に言えば、日本の会社法に譲渡制限が定められているわけではなく、それらは会社の定款によって定められています。実際ほとんどの会社の定款には、「当会社の株式を譲渡するには、取締役会の承認を受けなければならない。」というような規定が見られるはずです。そのため、実際の株式譲渡の場面では、定款上必要とされる取締役会や株主総会の承認を経ていることを確認します。

 

タイにおいてもそれは同様です。タイの民商法典上では、株式は原則として自由に譲渡することができる旨定められていますが、それらは付属定款によって制限することが可能です。したがって、実際の株式譲渡の場面では、会社が必要とする取締役会や株主総会の承認を経ていることを必ず確認することをお勧めします。

 

とはいえ、法的には同様であっても、タイでは必ずしも付属定款が定められているわけではありません。付属定款に記載がなければ、株式を自由に譲渡できる状態になっていますので、株式譲渡の場面での煩雑さは少なくなりますが、その反面「誰が株主になっているのか」という株主名簿の確認は十分に行うようにして下さい。

 

今回は、タイの株式について「譲渡」という側面から解説しました。株式は会社のオーナー権そのものであって非常に重要ですが、まだまだ理解しておくべきことは沢山あります。その点は引き続きコラムにてご紹介していく予定です。

 

 

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