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2017.12.14
ベンチャー法務・グローバル情報タイ法務

タイにおける株式の取扱い(1)

弁護士 藤江 大輔/Daisuke Fujie

 

■ はじめに


タイに進出する企業にとって、タイの「株式」というのは最初に直面する問題です。これは、外国人又は外国企業が過半数の株式を保有する企業については、タイの外資規制上、事業に制限を受ける可能性があるためですが、一口に株式といっても、「タイの株と日本の株の取扱いはどう違うのだろう?」という点は曖昧なままでいることが多いように思います。

 

そこで今回は、タイにおける株式について解説します。

 

 

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■ タイの株式


まず日本から見ていきますが、「株式とは何か?」というと、簡単なようで少々その解説が難しいものです。「株式を持つ者(=株主)の権利」を簡単に言い表すとすれば、以下の3つの権利が代表的なものになろうかと思います。

 

1.株主総会での議決権など、会社の経営に参加する権利

2.会社の解散等に際して、残った会社の資産を分配して受け取る権利

3.配当金等の利益分配を受け取る権利

 

タイでも基本的な権利構成はこれと変わりませんので、タイの株式を持っているということは上記1~3の権利を持っているんだなと理解してもらえれば良いと思います。ただし、その中身が少しだけ違います。

 

1については、タイと日本とで比較的大きな違いがあるので注意が必要です。タイの民商法典上、株主総会の決議について、「原則として挙手による投票を行う」という内容の定めと、「挙手による投票の場合は、各株主が1個の議決権を持つ」という内容の定めが置かれています(第1182条、第1190条)。

 

日本では、議決権というのは会社が発行している株式1個につき1議決権を持つのが通常ですので、51%以上の株式を保有している株主は、強い権限を持ちます。しかしタイでは、特に株主が要求しない限り、株主1人に対して1個の議決権が原則であって、持ち株比率でマジョリティを確保していても、その持株比率が意味をなさない場合があり得ます。タイにおいて、日本のルールと同じように持ち株数ベースの議決権で決議しようとすることを原則とするには、会社の定款にその旨を記載しておく必要があります。

 

2に関連した部分でいうと、日本とタイとでは株式の払込みに関する制度が違います。日本の場合、実際にお金を払い込んだ金額分の株式を持つ(全額払込主義)ことになりますが、タイの場合、実際に保有する株式の4分の1の金額を払い込めば、株式を保有することができます(分割払込主義)。

 

株式は持っているけど、実際にお金は払い込んでいないというのは、少々違和感を感じるかも知れませんが、大枠の考え方としては、実際に払い込んだ金額ベースで財産分配を受けることができると理解しておくとよいと思います(なお、私としては、特に日系企業の場合は4分の1の金額に押さえるのではなく、全額を払い込むことをお勧めします)。

 

3については、基本的に日本と同様で、配当を行うには株主総会の決議が必要になります。少しだけ違うのは、タイでは、取締役が「配当するに足りる利益がある」と判断した場合、取締役の判断で、臨時配当ができるとされている点です(第1201条)。

 

 

■ 取扱いの差


やや細かい点のように思われるかも知れませんが、タイでは株主名簿が登記されており、年に一度更新されることになっています(第1139条)。日本では、株主名簿が登記事項にはなっていないので、第三者が株主名簿を確認することは困難です。しかし、タイでは、商務省のデータベースにおいて、登記されている株主名簿を確認することができます。

 

企業から見れば、毎年登記の事務作業が増えて煩雑になるように思うかも知れませんが、タイ企業との取引にあたり、取引先の信用調査などは日本以上に重要になりますし、Startup企業であれば、VC等の投資動向を確認しておきたい場面もあるはずです。そういった場面において、企業に対してどんな資本が入っているのかを確認するのは非常に有用です。

 

タイにおける株式に関しては、株式の譲渡を行ったり、エクイティファイナンスを受ける際にも当然問題になるものです。これに関する留意点などは、引き続き配信する予定です。

 

 

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