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2017.12.7
ベンチャー法務・グローバル情報タイ法務

タイにおける著作権 ~権利は誰が持っている?~

弁護士 藤江 大輔/Daisuke Fujie

 

■ はじめに


GVAは、2016年よりタイオフィスを展開し、タイで挑戦する企業が抱える様々な法律問題をサポートしています。法規制が曖昧だと言われる東南アジアにあって、タイはその中でも比較的安定した法律運用がなされつつあります。

 

今後は、タイにおいて事業を継続的に発展させていくために法務の力は不可欠になってくるでしょう。

我々としても、タイの企業をこれからも応援し続けるとともに、日本で挑戦する企業にとって、タイへのビジネス展開がより身近なものとなるよう貢献していきたいと考えています。

 

さて、今回は、タイの企業活動においてあまり意識されていない「著作権」の所在について解説します。
GVAはIT企業・ベンチャー企業の支援者として、数多くの著作権に関する相談を受け付けてきました。
これらの企業にとっては、著作権は非常に重要であり、プロダクトそのものと言ってもよいかも知れません。

 

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■ 職務上の著作物


今回取り扱うのは、企業内で作成した成果物に関する著作権です。

特にIT ビジネスにおいて顕著ですが、事業活動を行う上で、従業員は様々な成果物を作ります。営業資料、社内ブログ、 プロダクトのソースコードから自社Webサイトに至るまで、これらは全て表現物として著作権の保護の対象になるもので、「著作権を有する者」が成果物を専有します。

 

企業内で作成された成果物の権利は、タイにおいても、かなりの方が「企業が保有している」と考えているように思われます。

そして、恐らくそれは、以下に述べるように、日本における「職務著作」という考え方に由来していると思われます。

 

 

■ 日本における職務著作

 

日本の著作権法第15条は、「職務上作成する著作物の著作者」と題して、以下のように定めています。

 

1. 法人その他使用者(以下この条において「法人等」という。)の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。

 

2. 法人等の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成するプログラムの著作物の著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする。

 

この条文の要旨を大まかに説明すると、「企業内で従業員が作成した成果物に関する著作者は、特別な合意がない限りは、企業が著作者になる」ということを言っています。 権利は、一旦従業員に帰属して、これが会社に譲渡されるというわけではなく、当初から会社が権利者となるという点がちょっとしたポイントです。

 

なお、「業務に従事する者」というのは、原則として、「使用者と作成者との間に雇用関係があることをいう」 と理解しておくと良いと思います。したがって、雇用関係のない外部の者が委託契約により著作物を作成しても、この条項は適用されず、受託者側に権利が帰属します。

 

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■ タイにおける職務著作


これに対してタイの著作権制度はどうかというと、タイにも職務著作に関する規定は存在し、著作権法(B.E.2537)の第9条と第10条に定められています。

 

第9条
雇用の過程において著作者により創作された著作物の著作権は、文書による別段の合意がない限り、著作者に帰属する。但し、雇用者は、雇用の目的に従い、その著作物を公衆に伝達する権利をもつ。

 

第10条
委託に基づき創作された著作物の著作権は、著作者と雇用者が別段の合意をしない限り、雇用者に帰属する。

(※公益社団法人著作権情報センターウェブサイトより引用)

 

この条文をよく読むと、日本と同じではないことに気が付きます。

 

第9条は、「企業内で従業員が作成した成果物に関する著作者は、特別な合意がない限りは、従業員が著作権者になる」ということを言っています。 つまり、日本とルールが全く逆になっています。

 

更に、第10条は、「外部の者が委託契約により著作物を作成した場合、委託者側に著作権が帰属する」ということを言っています(雇用者という言葉が使われていますが、外部委託の場合を意味するものと解されます)ので、このルールも日本と全く逆になっています。

 

 

■ タイ事業で留意しなければならない点


上記のような相違から、タイの企業は、以下のことに留意しなければなりません。

 

まず、雇用契約や就業規則に記載がなければ、従業員が作成した成果物の権利は従業員自身に帰属してしまいます。

 

これは特にIT企業にとっては大きなリスクです。
せっかく自社でエンジニアを雇用してプロダクトを作っても、会社は何の権利も持っておらず、従業員が退職すると、そのままプロダクトごと持って行かれてしまうリスクを抱え込むことを意味するからです。

 

この点はIT企業に限った話ではないため、必ず従業員との権利関係を整理しておくべきでしょう。

 

次に、自社が受託者となって開発業務を行うような場合は、契約書に明記していなければ、その権利は発注者に帰属します。したがって、開発を請け負う場合でも、成果物の権利を自社で保有しておきたいような場合は、必ず契約書にその旨明記しておく必要があります。

 

企業の著作権帰属は、ひいては企業価値そのものを左右します。
投資家から投資を受けるようなStartup企業であればなおさらですが、そうでなくても自社の権利保有状況が、企業にとって重要であることは言うに及びません。

 

是非一度会社の権利関係を見直してみてはいかがでしょうか。

 

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