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2016.10.31
ベンチャー法務

民泊ビジネスとマンション管理規約

弁護士 康 潤碩(カン ユンソ)

■ 「シェアエコ」という潮流

 

2016年10月21日の投稿記事「シェアリングエコノミー型サービスと、それに付随して問題となるプラットフォームについて」にて解説いたしました稼働していない既存のリソースをシェアし新たな価値を生み出す「シェアリングエコノミー」は、ベンチャービジネスのトレンドとなっております。

 

しかし、既存のリソースを利用するというサービスの特質は、既存法規制との抵触や既存業界・領域との対立を生むことがあります。

 

昨今、「Airbnb」に代表されるホームシェアリングビジネス(民泊ビジネス)は、拡大の一途を辿っており、政府が規制改革に関する答申において解禁の方針を打ち出し、2017年の通常国会にホームシェアリング新法が提出される予定と言われております。

 

もっとも、民泊ビジネスの解禁・拡大において避けては通れない法的問題が、マンション管理規約の問題です。そこで今回は、「民泊ビジネスとマンション管理規約」という問題を取り上げてみたいと思います。

 

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■ 多数決による管理規約の改定で、民泊を全面禁止は無効?


現在、いわゆるホストと他のマンション住民との間のトラブルを予防するため、多くの管理組合がこれらに対する対策を迫られております。

 

また、民泊解禁に向けて、マンション管理組合がいかなる対応をとるべきなのか、民泊の活用による資産価値の向上と住民トラブルの予防とのバランスで、頭を悩ませている組合理事も多数存在するかと思います。このような状況の中で、民泊ビジネスを制限するため、組合の多数決によって管理規約に新たな規定を設けようとしている管理組合は多いのではないでしょうか。
 
例えば、以下のような規定の新設が考えられます。

▶区分所有者は、理事会が特に承認をした場合を除き、当該所有者の専有部分を、『シェアハウス』に供してはならない。
▶区分所有者は、その専有部分を、不特定の者による宿泊、滞在に供し、それに対する対価を徴収してはならない。

しかし、ここには大きな「落とし穴」があります。

前述のような区分所有者の権利を制限する規定の追加変更を多数決によって一方的に行うことは、区分所有法上問題となり、その追加変更が無効となる可能性があるのです。管理規約は、「多数決の決議によればいかなることも定められる」というわけではなく、法令上・裁判例上、そこには様々な制限が課されているのです。

 

具体的には、区分所有法第31条第1項は、以下のように規定しております。

「規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によってする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。」


このように、区分所有法は、「一部の区分所有者の権利に特別の影響」を及ぼす管理規約の変更について、個別の区分所有者の「承諾」を要求しているのです。言い換えると、「特別の影響」が及ぶと認められる場合で、かつ、個別の承諾を得ないで行った管理規約の変更は、違法・無効と取り扱われるのです。

 

管理組合としては、このようなリスクについて、十分に注意する必要があります。

 


■ 「特別の影響を及ぼすべきとき」


では、個別の区分所有者の「承諾」が必要か否かの分岐点となる「特別の影響を及ぼすべきとき」とは、いかなる場合をいうのでしょうか。

 

これについては、最高裁判所の判例があります。
最高裁判所は、「特別の影響を及ぼすべきとき」について、「規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいうものと解される」と判示しております。


要するに、規約追加を行う理由(必要性と合理性)と規約追加によって受ける不利益の両方を天秤にかけて判断すると述べているのです。一見単純そうにも見えますが、その判断においては、変更前後の規約の内容や当該マンションの構造・使用状況、管理上の弊害、区分所有者が投じた費用など、精査すべき要素が多岐にわたるため、難しい法的判断を伴うこととなります。

 

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■ 管理規約の適正な運用と民泊ビジネスの拡大のために

 

以上のとおり、マンション管理規約に関する法的問題は、民泊ビジネスを行うホストにとっても、マンション管理組合にとっても、避けることのできないものとなっております。


そして、民泊ビジネスが拡大の一途を辿る今、民泊ビジネスに対し適正なコントロールを及ぼすことのできるマンション管理規約は、民泊ビジネスの適正かつ健全な発展のカギを握るものと考えられます。


もっとも、本稿で述べたように、マンション管理規約の変更が無効と争われる可能性がありますので、管理規約の変更の際には専門家に相談することが重要です。


GVA法律事務所では、民泊ビジネスについても、シェアリングエコノミーの適正かつ健全な発展の一環として、多方面からバックアップをさせて頂ければと思っております。

 


参考出典:

TOMARUYO,2016/7/22,「シェアリングエコノミーの発展と関連法規への対処 ~民泊禁止のマンション管理規約の改定は無効!?という『落とし穴』~」, https://tomaruyo.com/minpaku-services/law/gva/lawaction/gva-2728

 

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